『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

千里ニュータウンのガイドツアー

2018年5月2日(火)、大学の研究室からの依頼を受け、ディスカバー千里(千里ニュータウン研究・情報センター)によるガイドツアーを開催しました。参加されたのは建築・防災などを専門とする大学研究室の教員、大学院生、大学生の方々ら12人。

ツアーのコースとして「千里ニュータウンの当初からの特徴的な点と、最近の動きを取り混ぜて紹介して欲しい」という希望があり、次のようなコースを歩きました。ガイドツアーの講師は、ディスカバー千里共同代表のOさんです。

千里ニュータウン情報館

9:30に阪急千里線南千里駅前の千里ニュータウン情報館に集合。千里ニュータウン情報館は、千里ニュータウンに関する地図、模型、パネルなどが展示されており、ディスカバー千里による「大きな本」も1冊展示しています。
最初に千里ニュータウン情報館にて、近隣住区論歩車分離や団地の住棟配置の工夫など、千里ニュータウンの概要を説明。9:45頃、千里ニュータウン情報館を出発しました。

佐竹台

南千里駅前を通り抜け、OPH千里佐竹台(OPH千里佐竹台:204戸、OPH千里佐竹台II:356戸)へ。府公社千里佐竹台団地(790戸)が建て替えられた団地で、建て替えにあたっては佐竹台連合自治会が中心となり、佐竹台の住区全体の住民、大阪府住宅供給公社、吹田市の3社による意見交換の場(ラウンドテーブル)が開催。佐竹台住区全体で団地の建て替えを考えるという先駆的な方式が採用されました。この方式はラウンドテーブル方式(佐竹台方式)と呼ばれています。
ラウンドテーブル方式の採用により、敷地内を開放し周辺住民も通り抜けできる歩道とした、歩道沿いには団地自治会による共同花壇がもうけられた、団地集会所にコミュニティ・カフェ「佐竹台サロン」が開かれた、団地の敷地のセットバックにより隣接する集合住宅側にも歩道をもうけたなど、OPH千里佐竹台には佐竹台住区の住民の声が反映されています。

次に府営吹田佐竹台住宅へ。府営千里佐竹台住宅が建て替えられたものですが、この団地においても建て替えにあたってはラウンドテーブル方式(佐竹台方式)が採用。建て替えでは府営千里佐竹台住宅の敷地の一部が民間に売却されていますが、売却された敷地に建設された分譲マンションには、佐竹台地域交流室「おひさまルーム」がもうけられ、子育て支援の拠点として開放されています。

10:20頃、佐竹台近隣センターへ。千里ニュータウンの中で最初に開設された近隣センターです。

高野台

佐竹台近隣センターを出た後、北に向かって歩きます。府営千里高野台住宅は、住棟が中庭を作るように配置される囲み型配置の団地で、西に面する窓には日除けが設置されています。府営千里高野台住宅は、現在、府営吹田高野台住宅へと建て替えが進められています。

10:35頃、高野台近隣センターへ。佐竹台近隣センターとは少し雰囲気が違い、路地のような雰囲気を持つ近隣センターです。以前、近隣センターにはスーパーマーケットがありましたが、閉店。その場所は現在、高齢者のグループホームとなっています。
高野台の医療センターは長屋形式の建物。後に開発された住区では、医療センターも戸建ての建物と変化していきます。

高野台小学校前を通り抜け、高野台二丁目の戸建て住宅地へ。ここでは歩車分離のために採用されたラドバーン方式を見ることができます。車道を行き止まりとするクルドサック(袋小路)とし、その先を歩行者専用道路で結ぶものですが、特に高野台二丁目では歩行者専用道路が階段になっているのが特徴。車道を等高線に沿わせるように通したことから、こうした特徴が生まれたということです。なおこの背景には、当時は大きな重機がなく、土地を大きく造成するのが難しかったという要因もあります。

津雲台

千里高校前を通り、あやめ橋を渡って、津雲台へ。11:15頃、津雲台近隣センターに到着。津雲台近隣センター前は、千里ニュータウンに3つあるラウンドアバウトのうちの1つがあります。

千里津雲台団地は、千里ニュータウンにおけるUR(公団)の初期の団地で、1964年〜1965年にかけて完成。住棟は平行配置が基本となっていますが、北入り・南入りの住棟をペアにした配置(NSペア)によって隣接する住棟の人々の接触の機会を生み出す、正方形の平面を持つポイントハウスを配置することで視線の広がりを確保する、団地内の歩道を真っ直ぐにしないことで景観の変化を生み出すなどの工夫がなされています。
団地集会所にはかつて、入居者名簿が掲示されており、今でもその名残を見ることができます。団地集会所前にはキッチン用、トイレ用のボンテン(ラバーカップ)が置かれています。

11:40頃、津雲台二丁目のバス停からバスに乗車。東町センター前のバス停で下車しました。

新千里東町

東町センター前のバス停で下車した後、府営新千里東住宅へ。囲み型配置の団地ですが、現在建て替えが進められており、2つの囲みのうち、南側の囲みの一部が残るのみとなっています。風呂場が設置されていなかったため、中庭方面に風呂場と一部屋が増築。また、中庭に駐車場が設置されるなど、中庭のあり方も変化しています。

戸建て形式の医療センターを通り、新千里東町近隣センターへ。ここで「あいあい食堂」と「ひがしまち街角広場」の2つの場所を見学。
2015年11月、社会福祉法人・大阪府社会福祉事業団が運営する「豊寿荘ひがしまち」が空き店舗を活用してオープン。「あいあい食堂」は、「豊寿荘ひがしまち」の1階を利用して、2015年12月から運営されています。
「ひがしまち街角広場」は2001年9月から運営されているコミュニティ・カフェで、17年半以上の運営を担うのは住民ボランティアで、補助金を受けずに運営が継続されてきた場所です。

12:15頃、「ひがしまち街角広場」を出発し、UR新千里東町団地へ。URの団地は、住棟が平行配置された団地が多いですが、UR新千里東町団地では、住棟が緩やかな囲みを作るように配置されています。現在、高層の4棟の建て替えが進められています。中層の住棟は残されることになっており、一部の住戸は「MUJI×URリノベーションプロジェクト」が行われています。

最後に東町公園の長谷池を見学し、12:30頃、千里中央に到着しました。長谷池は、千里ニュータウン開発前からある農業用のため池が公園の池とされたものです。


ディスカバー千里(千里ニュータウン研究・情報センター)はガイドツアー(有料)を開催しています。詳細はこちらをご覧ください。