『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

地域のスーパーマーケットについて:京阪電車・石清水八幡宮駅前のスーパーマーケット閉店を機に考える

京阪電車の石清水八幡宮駅(京都府八幡市)の駅前にあったスーパーマーケットが、2019年9月30日で閉店しました。
身近な買い物の場所として、自転車で、徒歩で買い物に行っていた人も一定数いたと思います。

駅前のバスロータリー脇という好立地にも関わらず、人口減少のためか、高齢化のためか(京都府八幡市の2015年の高齢化率は28.2%で、全国平均の26.7%を上回っている)、あるいは、郊外の大型店の影響か閉店となってしまいました。
ただ、駅前だからこそ、自家用車で買い物に来るのは不便だったという理由もあるかもしれません。

理由はどうであれ、営業を継続するだけの利益を出すことができなかった、つまり、買い物に来る人が少なかったということです。

石清水八幡宮は、2016年2月9日に国宝に指定。観光客への対応として、2019年10月1日には「八幡市」駅が、「石清水八幡宮」駅に改称。また、付近にある背割堤は1.4kmにわたる約220本の桜並木が名所となっており、春には多くの人で賑わいます。2017年3月25日には展望台のある「さくらであい館」も開館しています。

このように、昔に比べると石清水八幡宮駅の周りは観光の色合いが強まったと感じますが、このことは地域の日々の暮らしとは別のレイヤーでの出来事。その背後では、日常的な買い物の場所であるスーパーマーケットが閉店するという状況が生まれています。

大船渡市末崎町のように坂の多い地形でないため、自転車に乗れる人は少し離れたところにあるスーパーマーケットに行くことができますが、高齢化がさらに進めば、買い物をどうするかが大きな課題になってくる。買い物を含め、地域における日常の暮らしをどう成立させていけばいいのか。もちろん、こうした課題を抱えている地域は全国中にあると思います。


サンフランシスコのミッション地区にあるバイ・ライト(Bi_Rite)(住所:9 18th St, San Francisco, CA 94110)というスーパーマーケットのことを思い浮かべました。

地域に密着したスーパーマーケットであり、新鮮な野菜や果物、美味しいデリが販売されています。大型のスーパーマーケットよりも値段は高いのですが、ミッション地区に住む知り合いによれば、このスーパーマーケットがなくなると困るからということで、値段が高くてもここで買うことを意識しているとのこと。

バイ・ライトは次のような目的を掲げて営業されています。

「テーブルの周りに集まった時、何か強力なことが起こります。 私たちはお互いに、テーブルの上の食べ物と、美味しい食べ物を育て、作りあげた生産者と、そして、それを生み出した大地と繋がります。一緒にテーブルを囲むことは、コミュニティを作ることでもあるのです。

食を通じたコミュニティを創造するというミッションのもと、バイライトは各メンバーと有意義な関係を築くために日々努力しています。 あなた、我々のゲスト、生産者とパートナー、我々のスタッフ、そして、この惑星からなるコミュニティが、来たる世代のために繁栄するのをサポートする組織を育てることは、我々の責任だと信じています。これは過度に野心的に聞こえるかもしれません。しかし、愛を伴う先導(Lead with LOVE)、情熱を伴う追求(Pursue with PASSION)、誠実さを伴う行動(Act with INTEGRITY)という理念に従って、我々は課題に挑戦します。持続的で活気のあるフード・コミュニティを築きあげていくための旅にご参加ください。」
*Bi-Rite Family of Businessesの「About Us」のページの記載を翻訳したもの。

地域からお店がなくなってしまうと自分たちが困ることになる。だから、多少値段が高くてもそのお店で買う。こうした振る舞いは、長い目で見れば大きなメリットになる。
しかも、そのお店の理念に共感することができる。地域にそのようなお店を持てることは幸せなことだろうと思います。

地域の人々は、お店から一方的に利益を受ける「お客さん」ではなく、お店の理念に共感し、営業を支える「伴走者」である。この視点は非常に重要だと考えています。

モバイルバージョンを終了