『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

居場所の地域における役割:居場所ハウスの最近の出来事から

各地に開かれている居場所にはどのような役割があるのか。このことについて議論がされる際、介護予防、孤立防止、生きがいなど、居場所を訪れる人にどのような効果がもたらされるかに注目されることは多いと思います。もちろん、これらはいずれも重要なこと。
しかし、居場所には人々の暮らしの場である地域においても大切な役割を担っています。このことを、最近の「居場所ハウス」の出来事からご紹介したいと思います。

市の事業への協力

「居場所ハウス」のある岩手県大船渡市は、藪椿が自生する太平洋岸の北限。大船渡市は、藪椿を地域の資源と捉えた製品の開発などの事業を進めています。その1つが、椿油を使った製品です。
「居場所ハウス」は大船渡市の事業に協力して、今年も椿の種の買取場所という役割を担っています。

(椿の種の買取の幟)

(椿の種)

この後、椿油を作るため、椿の種の殻むきという作業が行われますが、「居場所ハウス」は椿の種の殻むきの協力も行っています。

地域のお祭りへの協力

大船渡市末崎町には神坂熊野神社、中森熊野神社の2か所の熊野神社があり、それぞれ4年に一度の式年大祭が開催されます。今年2023年は、神坂熊野神社の式年大祭の年で、「居場所ハウス」のある平地域は「平組はしご虎舞」を奉納します。

「平組(たいらぐみ)はしご虎舞(とらまい)は、文政年間、将軍家斉の時代に技匠末崎町平の住人、東四郎屋留蔵・川口屋磯五郎の両名が舞振りを付けたのが始まりとされています。3mの縦の小梯子と約20mの横梯子と縦梯子を組み合わせるのが特徴です。ケセンには複数のはしご虎舞がありますが、横梯子が有るのは平組のみです。
梯子舞は、力強い笛と太鼓の囃子に合わせ踊りながら梯子を上下する勇壮な「梯子虎舞」です。熊野神社の大祭には必ず神事として奉納し、また元旦には平地域内の各家を回り、無病息災を祈念して悪魔はらいをする習わしとなっています。」
※黄金の国ケセン「平組はしご虎舞(0700)」のページより。

(平公民館脇に設置された練習用の梯子)

例年、平地域では式年大祭に向けて、屋台に飾る花(紙製の花)作りを、班ごとに公民館に集まって作りまが、今年は新型コロナウイルス感染症が完全に収束したわけでないということで、公民館に集まっての花作りは中止とされました。
平地域のお祭りの実行委員を担当する方から、花の数が充分でないので、「居場所ハウス」で花作りを手伝ってくれないかという依頼を受け、今年は「居場所ハウス」でも花作りに協力することに。スタッフだけでなく、訪れた来訪者も一緒になった花作りを行いました。


このように、地域において役割を担うことも居場所の大切な役割です。そして、居場所はこのような役割を担うからこそ、そこを訪れる人々にとっても介護予防、孤立防止、生きがいなどの効果をもたらすと考えることができるかもしれません。

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