『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

デザインについて

デザインとは個性の表現ではなく、新しいものに変えることでもない。何かをより良くすることである。

人に「どんなデザインが欲しい?」と聞いても、きっとその人は答えられない。でも、いいデザインに出会ったとき、人は「こんなのが欲しかったんだよ」と言う。ということは、人は既に知っている「何か」を求めているということではないか。それならば、新しいものを作るのではなく、その「何か」を探すのがデザイナーの仕事ではないか。

こう話すのは、深澤直人氏。
auの携帯電話「INFOBAR」、無印良品の「壁掛け式CDプレイヤー」、家電・雑貨のブランド「±0」などを手がけるプロダクトデザイナーである。
昨年末、慶應義塾大学で開かれた「デザインシンポジウム2008」で、「見えない関係を形にする」という深澤氏の講演が行なわれた。上に書いたのは、この講演での発言である。

深澤氏は次のようにも書いている。

デザインが生まれる前から既に人間はその場や状況から価値をピックアップし、道具として使ってきた。そのピックアップの連続を「行為」という。・・・・・・。それは無意識でピックアップされるが、その感覚を共有することがデザインやアートが美に昇華される要因となることはある。心ではなく身体が選ぶその場、そのとき、その状況の価値は自分に有用なものでしかない。その選択の究極は「生きる」に繋がっている。したがって自然な行為が営まれるために選ばれるそこにあるものが必然的によいもの、よいデザインということで暗黙に合意されるのである。厄介なのはその行為とものの関係をほとんどの人が意識的に自覚していないという事実である。したがってよいものは自然にその場で選択されるが、それがよいものであったかどうかということは本人には自覚がない場合がほとんどなのである。
デザインとはこの関係を見抜き、そこから関係のエッセンスを抽出し、具体化したあとに、気づかれないようにこっそりと行為の中に置いておくことなのである。
*深澤直人「見えない関係を形にする」・『デザインシンポジウム2008 講演論文集』日本デザイン学会 2008年11月

派手なデザインではなく、今あるものをより良くするような、「気づかれないようにこっそりと行為の中に置いておく」デザイン。考えさせられることの多い言葉だと思う。