『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

社会を回すことと千里グッズの会の活動

近年、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉をしばしば耳にしますが、社会学者の宮台真司氏がこの言葉について次のように指摘されているのを見かけました。
日本では、「ワーク・ライフ・バランスというと、仕事だけでなく趣味にも時間を使えるようにする、みたいな私生活主義的ニュアンス」として受け取られる傾向にあるが、これは誤解であり、「ワーク・ライフ・バランス」の「本質は「経済を回す」ための時間を減らして「社会を回す」ための時間を増やすことにある」と。

これ〔=勤務時間が長い状態〕では家族や地域やNPO等への社会参加の契機が削られ、そのぶん社会成員は互いに切り離されて相互扶助が薄っぺらくなり、人々は社会的に孤立する。つまり、多少経済的につまづいたり離婚したりした程度で、幸せに生きられなくなる。
その意味で、昨今話題の「ワーク・ライフ・バランス」が趣味の時間を増やすことだと誤解されがちだが、本質は「経済を回す」ための時間を減らして「社会を回す」ための時間を増やすことにある。こうした誤解が蔓延するのは日本だけのことだ。
※神保哲生 宮台真司他(2009)『格差社会という不幸』春秋社

「社会を回す」という視点。
この文章を読んで、「千里グッズの会」のメンバーからいただいたメールのことを思い出しました。

「「千里グッズの会」をはじめた当初漠然とイメージしていた地域の資産をもとに、皆の楽しみを増やし、地域の誇りを高め、かつそれで多少なりともお金がまわるような仕組みをつくることを真剣に考えてみたいと改めて思いました。」

「現在の日本においてそれが一番必要かつ挑戦しがいのあることだと思う。」

「千里グッズの会」も「社会を回す」ための重要な「仕事」になり得るし、「仕事」にしなければならないと思います。これから「千里グッズの会」として何ができるのか、何をするべきなのか。活動を通して、考えていきたいと思います。

(更新:2020年7月17日)