千里ニュータウンでは団地の住棟配置に様々な工夫がなされました。団地の住棟を配置する方法は、大きく「平行配置」と「囲み型配置」(コの字型配置)の2つに分けることができます。
平行配置
「平行配置」は、団地と聞いて多くの方が思い描くであろう板状の住棟を同じ向きに並べた住棟配置のことです。東西に細長い住棟を平行に配置することで、全ての住戸を南面させ、日照を確保できるという長所があり、千里ニュータウンでは主に公団の団地(現・UR都市機構の団地)で採用されました。
「平行配置」の団地の住棟では、南側に部屋を確保するため、階段室の入口は北側に設けられます。全ての住棟に北側から入るため、隣り合う住棟の住民が接触する機会が少なくなるという短所があります。
千里ニュータウンの開発主体である大阪府は、公団に対しても「囲み型配置」を求めていました。ところが、当時、公団の団地では平行配置にすることが基本とされていたため、千里ニュータウンだけ特別な住棟配置を採用することはできなかったということです。
そこで、考え出されたのが北入りタイプと南入りタイプの住棟(北側に階段室の入口がある住棟と南側に階段室の入口がある住棟)をペアにする配置です(NSペア)。これによって、「平行配置」でありながら2つの住棟の住民が接触する機会を生み出すことが可能になりました。北入りタイプと南入りタイプの住棟をペアにした配置は、千里ニュータウンで最初に建設された公団の団地である千里津雲台から採用されています。
「平行配置」の団地の住棟では景観が単調になるという短所もあります。そこで、千里ニュータウンの公団の団地では板状の住棟だけでなく、1階部分をピロティにした住棟や平面が正方形のボックス型住棟(ポイント型住棟)を配置するなどの工夫も行われています。
(千里青山台住宅のボックス型住棟)
(千里青山台住宅のピロティをもつ住棟)
囲み型配置
「囲み型配置」は住棟を中庭を作るように配置することで、住民同士の接触の機会、活動場所を確保できる長所があります。千里ニュータウンにおいては、主に府営住宅で採用されましたが、後期に開発された公団(現・UR都市機構)の新千里東町団地や千里竹見台団地では一部に「囲み型配置」が採用されました。「囲み型配置」を採用する場合、一部の住棟が西向きとなるため、府営住宅には窓に緑の日除けが取り付けられています。緑の日除けは「囲み型配置」がされていることの目印だと言うこともできます。
「囲み型配置」を採用した新千里東町団地や千里竹見台団地では、1階部分をピロティにした住棟や、両側から階段室にアクセスできる住棟(通常の住棟はどちらか一方からしか階段室にアクセスできない)を配置することで、住棟で中庭を過度に囲い込わず、緩やかな中庭を作りあげています。
(新千里東町団地のピロティをもつ住棟)
(新千里東町団地の両側から階段室にアクセスできる住棟)
(更新:2022年4月16日)