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千里ニュータウンの府営住宅(B棟)一覧

近年、千里ニュータウンでは再開発により民間の分譲マンションが建設されつつありますが、当初、千里ニュータウンの団地は、府公社団地(A棟)、府営住宅(B棟)、公団団地/UR団地(C棟)、社宅(D棟)の4つに分けられていました。この記事では府営住宅(B棟)について、特に再開発前の様子をご紹介します。

府営住宅は、千里ニュータウンの12住区のうち津雲台と新千里西町を除く10住区に建設されました。10の府営住宅は1961~1968年に建設。建設時期は概ね住区の入居が始まった順番に一致しています。

住区府営住宅(B棟)建設年度戸数→変更
佐竹台(C)千里佐竹台住宅1961〜1963、1990〜1992943→(建替)府営吹田佐竹台住宅、プレミスト南千里
高野台(B)千里高野台住宅1961〜1963、1990〜19922027→(建替)府営吹田高野台住宅、ザ・パークハウス南千里アリーナ
古江台(H)千里古江台住宅1963、19951499→(建替)府営吹田古江台住宅
津雲台(A)×
藤白台(G)千里藤白台住宅19641128→(建替)府営吹田藤白台住宅、ローレルコート北千里藤白台
青山台(F)千里青山台住宅1964485
新千里北町(I)新千里北住宅1965〜661312→(建替)
新千里東町(J)新千里東住宅1965781→(建替)府営豊中新千里東住宅、ジェイグラン千里中央、パークホームズ千里中央ザレジデンス
桃山台(D)千里桃山台住宅19661040→(建替)
竹見台(E)千里竹見台住宅1966385→(建替)府営吹田竹見台住宅
新千里西町(K)×
新千里南町(L)新千里南住宅1967〜681025→(建替)府営豊中新千里南住宅
  • 千里ニュータウン開発時に建設された府営住宅。
  • 表では入居が始まった順に住区を並べている。
  • ( )内のアルファベットは計画時に用いられていた住区の記号を表す。
  • 建設年度と戸数は、千里ニュータウン再生プラン研究会編『千里ニュータウン住宅地再生に向けた提言』(豊中市政研究所 2002年6月)に掲載の「参考資料2 千里ニュータウンにおける公的賃貸住宅の概要」、「参考資料3 千里ニュータウンにおける公的分譲住宅の概要」より。千里佐竹台住宅、千里高野台住宅、千里古江台住宅は1990年代に再開発が行われているが、これは第2種住宅の階建ブロック構造の住棟である(近年再開発されているのは第1種住宅)。第1種住宅と第2種住宅の違いは次のように説明されている。「第1種住宅は国の補助が建設費の2分の1で月収2万円から3万6,000円の所得者を対象とし、第2種住宅は国の補助が3分の2で月収2万円以下のものを対象としている」(大阪府, 1970)。

団地の住棟配置は大きく囲み型配置(コの字型配置)と平行配置(並行配置)に分けることができます。千里ニュータウンの府営住宅では囲み型配置が採用されたという特徴があります。府営住宅で囲み型配置という意欲的な試みがされた経緯は、大阪府の資料において次のように記されています。

「公営住宅は昭和35年度までは厳格に東西軸棟による並行配置を固守してきたが、昭和36年度から始められた千里ニュータウンの建設に際して、企業局で作成したマスタープランの線に沿って囲み型配置の実施に踏み切った。もちろん、各棟、各戸の物理的条件を平等に処理するためには、並行配置が原則であるが、新しい緑につつまれた千里の環境にささえられて意欲的な社会空間づくりが住宅団地にも取入れられたわけである。
千里における公営住宅は、ラドバーン方式を基調とした歩車分離の考え方、動的、静的空間の意味づけ、さらにクルドサックのアプローチを結びあいにした新しい近隣関係の設置、斜面の処理についての対応手段など、試行錯誤をくりかえして丘陵地の新しい団地づくりを進めていった。しかし、この試みはまたいくつかの批判も受けた。南北軸棟建物の問題、囲まれた内庭の取扱い、外部造園施設等の投資不足など、いろいろ未知の問題につき当たったが、しかし千里ならではの大胆なブロックパターンが示された。
囲み型配置では外に向かっては街区形成を、内に向かっては視線プライバシーの拡散等の利点はあるが、南北軸棟の取扱いは慎重に行なう必要がある。まず南北軸棟のプランを作り西面した窓にはホロテントをつけた。さらに企業局、建築部が連携してB、C住区(高野台、佐竹台)の熱環境の調査を建築学会に委託した。そのほか各住区の配置計画は低層の2階建と中層の4、5階建をミックスして配置し変化のある景観づくりを行なった。」(大阪府, 1970)

大阪府の職員として千里ニュータウン開発に関わった山地英雄氏は、囲み型配置(コの字型配置)について次のように説明してます。

「「コの字型」配置は住宅棟の囲みによるコミュニティの構成を企図したものです。佐竹台の自治会にいまも「コの字会」というのがありますがこれはその名残りです。」
*山地英雄『新しき故郷』NGS 2002年

囲み型配置により西側に面した部屋ができてしまいます。そこで西面に日除け(ホロテント)が設置されました。現在目にすることができるのは緑の日除ですが、入居当初は緑以外の日除けもあったということです。

当初、府営住宅の住戸には風呂場が設置されておらず、近隣センターの銭湯の利用が考えられていました。その後、増築により住戸内に風呂場が設置。多くの増築は中庭に向けて行われています。これに伴い、入居当初に比べて中庭の面積が減少することとなりました。

千里ニュータウンの2005年時点の総住戸数は41,722戸。このうち、約25にあたる10,619戸が府営住宅でした。2017年時点の総住戸数は47,378戸。このうち、約22%にあたる10,384戸が府営住宅。
建替えにより府営住宅の戸数は増加していますが、総住戸数に占める府営住宅の割合は低下しています(詳細はこちらをご覧ください)。

府営住宅の建替えは集約して高層化、つまり、高層棟に建替えることで府営住宅の敷地を集約し、残りの敷地を民間に払い下げるて建替えの費用を捻出するという手法が取られています。

千里佐竹台住宅

  • 住区:佐竹台
  • 建設年:1961・1963年(昭和36・38年)
  • 住棟数:48棟
  • 住戸数:543戸
  • 寝室数:2・3・4
  • ストック活用方法:建替

千里ニュータウンの府営住宅の中で最初に入居が始まった住宅。住棟が高低差のある広々とした中庭を囲むように配置されています。
慣れない団地での暮らしをサポートするため、千里佐竹台住宅には11人の管理人(管理員)と呼ばれる人々が住んでいました。後に管理人を中心として、ブロックごとに単位自治会が設立されることになります。山地英雄氏の文章に出てくる「コの字会」も単位自治会の1つ。

2012年には、千里ニュータウンまちびらき50年事業の一環として、千里佐竹台住宅の住戸が入居当初の生活を再現する「佐竹台タイムスリップ館」として開放されました。

千里佐竹台住宅の建替えにおいては、団地の住民だけでなく、佐竹台の住区全体の住民が団地の建替えを考えるラウンドテーブル方式という先駆的な仕組みが採用。千里佐竹台住宅の敷地に建設された民間の分譲マンションの一画には、佐竹台地域交流室「おひさまルーム」がもうけられ、子育て支援の拠点として開放されています。
千里佐竹台住宅の中庭に植えられたメタセコイアは大きく育っていましたが、一部、建替えられた吹田佐竹台住宅内に残されています。

千里高野台住宅

  • 住区:高野台
  • 建設年:1962・1963年(昭和37・38年)
  • 住棟数:93棟
  • 住戸数:1,195戸
  • 寝室数:2・3
  • ストック活用方法:建替

囲み型配置が採用された府営住宅で、中庭は公園のようになっています。いくつかの住棟では中庭がそのまま高野公園に連続しています。直方体の住棟だけでなく、ポイント型住棟も見られます。
千里高野台住宅でも、千里佐竹台住宅のように単位自治会が設立されていました。

千里藤白台住宅

  • 住区:藤白台
  • 建設年:1963・1964年(昭和38・39年)
  • 住棟数:37棟
  • 住戸数:1,128戸
  • 寝室数:2・3
  • ストック活用方法:建替

藤白公園・藤白台小学校の南、藤白台近隣センターの西に位置する府営住宅。高低差のある敷地に、住棟が囲みを作るように配置されています。再開発前の千里藤白台住宅の様子はこちらもご覧ください。

千里古江台住宅

  • 住区:古江台
  • 建設年:1963・1964年(昭和38・39年)
  • 住棟数:47棟
  • 住戸数:1,323戸
  • 寝室数:1・2・3・3L・4
  • ストック活用方法:建替(4丁目)・耐震改修(5丁目)

47棟、1,323戸からなる千里古江台住宅は、千里ニュータウンでは最大の住戸数をもつ府営住宅。住棟は囲み型配置がなされていますが、ポイント型住棟が配置されるなど、変化に富んだ景観となっています。
千里古江台住宅の5丁目部分は建替えず、耐震改修されることとなっています。
再開発前の千里古江台住宅の様子はこちらもご覧ください。

千里青山台住宅

  • 住区:青山台
  • 建設年:1964年(昭和39年)
  • 住棟数:15棟
  • 住戸数:485戸
  • 寝室数:2・3・4
  • ストック活用方法:耐震改修

青山台小学校の北に位置し、15棟、485戸と千里ニュータウン内では比較的小規模な府営住宅。住棟は囲みを作るように配置、一部、ポイント型住棟が配置されています。
千里ニュータウン内の10の府営住宅の中で、唯一、建替えを行わず全棟が耐震改修されることとなっています。

新千里北住宅

  • 住区:新千里北町
  • 建設年:1965・1966年(昭和40・41年)
  • 住棟数:47棟
  • 住戸数:1,312戸
  • 寝室数:2・3
  • ストック活用方法:建替・耐震改修

47棟、1,312戸からなる大規模な府営住宅で、住棟配置は平行配置が採用。現在、一部の住棟の建て替えが始まっています。

団地の集会所裏には延命地蔵尊というお地蔵さんがあります。

新千里東住宅

  • 住区:新千里東町
  • 建設年:1965年(昭和40年)
  • 住棟数:21棟
  • 住戸数:741戸
  • 寝室数:2・3・4
  • ストック活用方法:建替

新千里東町の東側に位置する府営住宅。他の府営住宅では3方を住棟で囲む「コの字型」の中庭であるのに対して、新千里東住宅では4方を住棟によって囲む「ロの字型」の中庭が2つありました。
かつてママさんバレーが盛んで、中庭にはバレーボール・コートもあったとのこと。その後、中庭の方向に向けた1部屋増築が行われたり、中庭に駐車場が設置されたりしたことで中庭の面積は減少しましたが、豊かな空間になっていました。
現在、集会所では住民が気軽に集まるための場所として月に2回、「3・3ひろば」が開かれてます。

新千里東住宅は全面的に建て替えられることになり、府営住宅は高層化して集約。土地の北側は払い下げられ、民間の分譲マンションが建設されました。今後、土地の南側には近隣センターが移転することになっています。

千里竹見台住宅

  • 住区:竹見台
  • 建設年:1966年(昭和41年)
  • 住棟数:11棟
  • 住戸数:385戸
  • ストック活用方法:建替

竹見台近隣センターの西側に位置。11棟、385戸と千里ニュータウン内では最も規模の小さな府営住宅になっています。小規模ですが他の府営住宅と同様、住棟は囲みを作るように配置されています。

千里桃山台住宅

  • 住区:桃山台
  • 建設年:1966年(昭和41年)
  • 住棟数:31棟
  • 住戸数:613戸
  • 寝室数:1・2・3
  • ストック活用方法:建替

31棟、613戸からなる府営住宅で、桃山台近隣センターを挟んで敷地が2つに分かれています。住棟は「コ」の字を連続させた配置となっており、片側に歩行者専用道路、反対側に車道が通っています。そして、歩行者専用道路側に向かって開いた「コ」の字の中庭を公園、車道に向かって開いた「コ」の字の中庭を駐車場にすることが基本とされており、これによって歩車分離を実現。さらに、歩行者専用道路の先には近隣センター、学校、駅、公園などが配置されています。これは、ラドバーン方式を集合住宅に適用したものだと見なすことができます。
大半は直方体の住棟ですが、東側、公団の千里桃山台団地・千里桃山台第二団地の境界付近にはポイント型住棟も配置されています。

新千里南住宅

  • 住区:新千里南町
  • 建設年:1967・1968年(昭和42・43年)
  • 住棟数:41棟
  • 住戸数:1,025戸
  • 寝室数:2・3・4
  • ストック活用方法:建替

新御堂筋に沿った南北に細長い敷地の府営住宅。千里桃山台住宅と同様、「コ」の字を連続させた住棟配置とし、片側に歩行者専用道路、反対側に車道を通すことで歩車分離を実現しており、歩行者専用道路の先に公園や学校などを配置するというラドバーン方式により歩車分離を実現しています。
大半は直方体の住棟ですが、南丘小学校の東側を中心にポイント型住棟が配置されています。


  • 各府営住宅の建設年度、住戸数は『大阪府営住宅ストック活用事業計画』(大阪府 2007年1月)より。
  • 寝室数は大阪府住宅供給公社「府営住宅一覧」のページより。
  • ストック活用方法は、『大坂府営住宅ストック総合活用計画』(大阪府 2016年12月)より。
  • 住棟数は地図で確認している。
  • 配置図で白抜きにしている建物は集会所等を表す。
  • 後に増築された住棟もあるが、配置図では増築は表現していない。

参考資料

(更新:2020年10月20日)