『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

社会的接触の場としてのお店:ヘルシンキ・ハカニエミのマーケットを見て

海外に行った時、お城、教会、博物館・美術館、テーマパークなどの観光地を巡るのも楽しいですが、地元の人たちも買い物をするマーケットを訪れるのも楽しみの一つです。写真に映っているレンガ造りの建物は、フィンランド・ヘルシンキにあるハカニエミ(Hakaniemi)のマーケットホール。映画『かもめ食堂』(2006年公開)にも登場した場所で、現在、フィンランドに留学中の知人も、肉や魚を買いに来るということです。

マーケットでは季節の野菜、果物、洋服、帽子、籠や家具など様々なものが並んでいます。座ってお茶が飲める場所もありました。

フリーマーケットのコーナーもあります。留学中の知人は、フィンランドのフリーマーケットでは、日本人の感覚からすると「こんな古いものを売るのはちょっと恥ずかしい・・・」と思うようなものが売られていることもあると話されていました。
フリーマーケットに並べられたものからは、売り主がこれまでどのように暮らしてきたのかを垣間見ることができるような気がします。もちろん、売り主と会話できるのもフリーマーケットの魅力です。

フリーマーケットは、他者の世界を垣間見たり、他者と会話したりできるという意味で、街において重要な社会的接触のための場所になっていることを改めて実感させられました。


社会的接触のための場所であることは、フリーマーケットに限りません。近年、千里ニュータウンではカフェや本屋などをコミュニティの場所として開くいくつかの試みが行われていますが、これらの試みは、あらゆるお店には社会的接触のための場所という側面をもっていることに気づかさせてくれます。

千里ニュータウンは、街の中心部にお店を配置し、その周りに住宅を配置するという用途純化の考えによって作られています。そのため、住宅地にはほとんどお店がない。しかし、お店は単に買い物をするだけでなく、社会的接触のためにも大切な場所だとすれば、用途純化という考え方を再考する必要がある。ハカニエミのマーケットを訪れ、このようなことを感じました。

(更新:2023年1月10日)