海外の街を歩いて気づくことの1つは、公園の雰囲気が違うということ。公園は、誰もが居ることができる場所。特にお金を払わずとも、肩身の狭い思いをすることなく、堂々として居られる場所です。
所属していた大学の研究室でしばしば議論になったのは、日本に比べると、海外の公園は過ごしている人の属性(性別・年代)が多様で、かつ、行われている活動も多様だということ。ここでいう海外というのは欧米だけでなく、中国や韓国などのアジアの国にも当てはまります。中国の公園では人々は早朝から集まり、体操をしたり、太極拳をしたり、踊りをしたりと多様な活動が行われているのを見かけました。
今まで訪れたことのある公園で興味深かったのはスイス・ジュネーブ(Genève)のバスティオン公園(Parc des Bastions)。宗教改革記念碑もあり多くの観光客が訪れる公園ですが、公園の一画に地面にチェス盤が描かれており、プラスチック製の大きな駒を使ってチェスの対戦が行われている光景を目にすることができます。
公園でチェスをしているのはバスティオン公園だけでなく、例えば、チューリッヒ(Zurich)のリンデンホフの丘(Lindenhof hill)、ルツェルン(Luzern)のフォーゲリゲルトリ公園(Vögeligärtli)でも見かけました。
地面にチェス盤を描き、駒を用意するだけの簡単な仕掛けで、人々が集まる場所になるのだと驚かされました。
公園とは限られた人だけが専用するのではなく、あらゆる人々に開かれた公共の場所。この観点から、チェスは次のような点で多くの人に開かれた活動だと感じました。
- チェスをしているのは、ほとんが高齢の男性だが、それより若い世代の人も参加できる
- チェスは2人集まればできるため、グループに所属しなくてもいい
- スポーツと違い、杖をついた人、車椅子にのった人でも参加できる
- 対戦している本人だけでなく、観光客も含めて周りから眺めている人の楽しめる
という点で、多くの人に開かれた活動になっているように感じました。
話は逸れますが、大船渡市末崎町は、碁石海岸にちなんで囲碁の街であることを売り出していますが、日常的に囲碁に接する機会はない。スイスの公園のチェスのように、末崎町のあちこちの地面に碁盤を描いて、囲碁ができるようにするというのはどうかと思いました。
末崎町を歩くと、いたるところで囲碁の対局をしている人の姿を見ることができる。子どもたちも囲碁で遊ぶことができ、地域の大人たちから囲碁を教えてもらえる。こんな光景が見られる街になれば、日常生活に囲碁が浸透したと言えるのかもしれません。