現在、空港では海外からの(日本人を含む)入国者に対して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の水際対策が強化されています。
- 入国後14日間は指定の待機場所(自宅など)で待機する必要がある。
- 指定の待機場所への移動には公共交通機関(鉄道、バス、タクシー、航空機(国内線)、旅客船など)が利用できない。自家用車での送迎、レンタカー、ハイヤーは利用可能。
- 過去14日以内に『入国拒否対象地域』に滞在歴がある場合は、全員にPCR検査が実施される。
- PCR検査の結果が「陰性」でも指定の待機場所(自宅など)での待機が求められる。
厚生労働省「水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)」のページなどを調べると、おおよそ以上のようなことが把握できました。
しかし、実際に空港でどのような行動が求められるのか、PCR検査の結果判明までどのぐらいの時間がかかるのかなど、知りたい情報の一部は、実際に入国を経験された方のブログから伺えるだけで、不安だった部分もありました。
どのような点を不安に感じるかは実際に入国を経験した人しかわからず、入国を経験した立場の者が情報発信するしかないと思いますので、以下ではその1事例として関西国際空港における水際対策の様子をメモしておきたいと思います。
これから日本に入国される方にとって、少しでも参考になればと考えています。また、その結果として検疫にあたっている職員の方々の負担が少しでも軽減すればと考えています。
以下で紹介するのは2020年7月12日(日)に、ロサンゼルスから関西国際空港への直行便(JL0069便)で入国した時の情報であり、今後、状況が大きく変わる可能性があることをご了承ください。2020年12月末からは「新型コロナウイルス感染症対策質問票」が紙ではなく、「質問票Webとしてウェブサイトで回答する形式に変更されています(こちらの記事ではより水際対策を改善するための個人的提案をメモしています)。
■JL0069便の情報
- ロサンゼルス国際空港(LAX):2020年7月11日(土)14時25分発
- 関西国際空港(KIX):2020年7月12日(日)18時30分着
待機場所と移動するタイミング
どこで14日間待機するか、どのタイミングで待機場所に移動するかは大きく分けて3つのパターンがあります。
- ①空港でPCR検査を受け、結果を待たず自宅に移動する。
- ②空港でPCR検査を受け、「陰性」が判明してから自宅に移動する。
- ③空港でPCR検査を受け、「陰性」が判明してから自身で手配したホテル、民泊(AirBnB)、ウィークリーマンションなどに移動する。
待機場所と移動については、次のように行動することが求められました。
- ①、②、③のどのパターンで行動するかは、遅くとも飛行機を降りる時点では確定しておく必要がある。
- ③の場合、どのホテル、民泊(AirBnB)、ウィークリーマンションなどに待機するかは、「陰性」結果が判明する時点までに確定すればよい。
- いずれの場合も(「陰性」でも)、移動には公共交通機関(鉄道、バス、タクシー、航空機(国内線)、旅客船など)が利用できない。自家用車での送迎、レンタカー、ハイヤーは利用可能
- いずれの場合も(「陰性」でも)、入国の翌日から14日間の待機が必要。※2020年7月12日(日)に入国した場合は、7月26日(日)までの待機が求められる。
- ②③の場合、現時点の関西国際空港では、検査結果は翌日の15時頃に通知。※成田空港では2〜3日かかるという情報もある。
- ②③の場合、結果判明までは指定の待機場所に滞在する必要がある。結果判明までの宿泊費は無料(食事付)。関西国際空港の場合はホテル日航が指定の待機場所になっている。
- ②③の場合、2020年7月12日(日)の関西国際空港では、飛行機が着陸してから指定の待機場所(ホテル日航)の部屋に入るまでに4時間半弱を要した。※入国する日、あるいは、妊娠している、小学生以下の子どもを連れているなど入国者の状況によって所要時間は異なる。
- ②③の場合、原則として「陰性」結果が判明した日のうちに、指定の待機場所(ホテル日航)を退室する必要がある。ただし、その後も自身の費用負担でホテル日航に宿泊することは可能。
- ②③の場合、飛行機を降りた後、「陰性」が判明して指定の待機場所(関西国際空港の場合はホテル日航)を出るまで、食料品の買物を含め自由行動は一切できない。
- ②③の場合、「陰性」が判明するまでの所要時間に応じて、送迎時間や宿泊期間に柔軟に対応してもらえるハイヤー、ホテル、民泊(AirBnB)、ウィークリーマンションもある。
- ②③の場合、「陽性」が判明すれば、その後の行動は検疫序からの指示に従う必要がある。
以下では飛行機に搭乗してから、「陰性」が判明して指定の待機場所(関西国際空港の場合はホテル日航)を出るまでの流れをメモしています。
飛行機(JL0069便)内
離陸後
JL0069便は予定通り、14時25分にロサンゼルス国際空港を出発しました。
離陸後、水平飛行に移ってからしばらくすると、入国に際しての検疫に関する書類が配布。書類では、次のような項目を記入することが求められます。
- 過去14日間に滞在した国
- 過去14日間に感染者との接触(可能性)の有無
- 過去14日間の発熱や咳などの症状の有無
- 現在の健康状態(発熱、咳、倦怠感など)
- 解熱剤、かぜ薬、痛み止めなどの仕様の有無
- 自宅以外に待機する場合の滞在先と滞在期間
- PCR検査の結果を受け取るための電話番号
- LINEアプリ等を活用した健康確認の同意
書類には「虚偽の申告をした方は、検疫法第36条の規定により罰せられることがあります(6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)」とも記載されていました。
※2020年12月末から「新型コロナウイルス感染症対策質問票」が紙の書類ではなく、「質問票Webとしてウェブサイトで回答する形式に変更されてます。飛行機に搭乗する前に「質問票Web」に入力を済ませておく、あるいは、搭乗する前にダウンロードし機内で入力すると、QRコードが発行。QRコードの画面、あるいは、QRコードを印刷したものを日本の空港に到着後、検疫官に提示するということです。なお、スマートフォンやタブレットを持っておらずQRコードを発行できない場合は、日本の空港に設置されたパソコンでの入力も可能ということです。詳細はこちらをご覧ください。
着陸後
JL0069便は予定より若干早く、18時05分頃、関西国際空港に着陸。その後、18時10分には駐機場に到着しました。駐機場に泊まっている飛行機はほとんど見えません。
駐機場に着いた後、キャビンアテンダントから案内があるまで席を立たないようにというアナウンス。
18時15分頃から、検疫所の職員によるアナウンス。
先ほど配布された書類について、PCR検査の結果を受け取るための電話番号は「海外の番号でもよい」、待機期間は(7月12日到着の場合は)「7月26日まで」であることの補足がありました。また、順番にPCR検査を行うまで案内があるまで飛行機内で待機する必要があることも伝えられました。
※上で書いた通り、①②③のどのパターンで行動するかは、この時点で確定している必要があります。自宅以外に待機する場合の具体的な滞在先(具体的なホテル)も決めておくのが好ましいですが、機内で配布された書類には具体的なホテル名を記入することまでは求められておらず、「ホテル」という書き方でも可能でした。
この後、検疫所の職員から、次のような順番で飛行機を降りることが指示されました。
- 18時35分頃:妊娠している人(①②③の全ての場合)、小学生以下の子ども連れで、本日自宅に帰宅する人(①の場合)(グループA)
- 19時00分頃:本日自宅に帰宅する人(①の場合)(グループB)
- 19時05分頃:小学生以下の子ども連れで、本日自宅に帰宅しない人(②③の場合)(グループC)
- 19時15分頃:本日自宅に帰宅しない人(②③の場合)(グループD)
この4グループに分かれて飛行機を降りることが指示されました。おおよその感じでは、それぞれのグループで同じくらいの人数だったように思います。
駐機場に到着してから1時間ほど飛行機内で過ごしましたが、この間、機内のトイレは自由に使ってよいというアナウンス。また、飲物やスナックの提供など、キャビンアテンダントの方は機内で少しでも快適に過ごせるように配慮してくださいました。
関西国際空港内
PCR検査まで
19時15分頃、飛行機を降りました。ボーディングブリッジを進んだ先にテーブルが設置され、JALのスタッフがペットボトルのお茶や水などを配っていました。
3階の通路を進むと、通路に等間隔に椅子が並べられています(100脚くらいの椅子が並んでいたように思います)。椅子に座って待機。
3階の通路では、何名かの検疫所の職員が巡回し、個別に書類の記入内容のチェックや、質問への対応を行います。
職員からは、今日中に自宅に戻れるかという質問。検査がいつ終わるかわからず遅い時間になること、「陰性」結果が判明してから自宅に戻りたいことを伝えると、今日は指定の待機場所に宿泊できるという回答がありました。
この後、3階通路の椅子に座ってPCR検査の順番を待ちます。
20時25分頃、PCR検査が行われている2階に移動。2階の通路にも、等間隔に20脚の椅子が並べられていました。通路の先のテーブルでは、2人の検疫所の職員が、1人あるいは1家族ずつ、書類の内容の最終チェックしていきます。
20時35頃、書類の最終チェックを受けました。ここで次のような説明を受けました。
- 検査結果が判明するのは明日の15時頃である(遅くなるが明日中には結果が判明する)。
- 今日は指定の待機場所としてホテル日航を用意しており、1泊は無料で宿泊できる。
- ホテル日航は、2泊目以降は自身の費用負担で宿泊できる。
- 明日以降の滞在先や、そこまでの移動手段は自身で手配する必要がある。
この後、PCR検査を受けます。
検疫所の職員の話では、今日は多くて400人ほどが入国したが、普段は200〜300人/日ということでした。
2つの部屋があり、同時に2人あるいは2家族の検査が行われているようでした。PCR検査自体は1〜2分。これまで待った時間に比べると、あっけないくらい早く終了しました。
PCR検査後
PCR検査が終わり、20時50分頃、待合エリアへ。待合エリアはロープで2つに分かれており、片側に小学生以下の子ども連れで、本日自宅に帰宅しない人(グループC)、もう片側に本日自宅に帰宅しない人(グループD)が待機しています。それぞれ、20人ほどの人が待っていたようです。早くPCR検査を受けた人(グループA・B)は見かけませんでした。
最初に小学生以下の子ども連れで、本日自宅に帰宅しない人(グループC)が出発。
待合エリアでは「ホテル待機される方への注意事項」という書類が渡されました。片面が日本語、片面が英語で次のような内容が記載されています。
- 検査結果が判明するまでホテルの部屋から出ることができない。
- お弁当は職員と入国者の接触を避けるため、部屋の前の椅子の上に置いて配る。お弁当を配ったらインターホンで知らせるので、3分待ってから扉を開けて受け取る。
- 検査結果は明日の15時頃に判明する。時間が遅くなる場合は事前に連絡する。
- 「陰性」の場合はホテルの部屋の内線で連絡。この場合、17時までに、以降の滞在先や、そこまでの移動手段を確定する必要がある。
- 「陰性」の場合でも公共交通機関は利用できない。
- 「陽性」の場合は検疫所から連絡がある。
ホテルの部屋の番号が書かれた紙片も配られました。検査結果の連絡がホテルの部屋の内線で行われるため、部屋の番号は事前に1人または1家族ずつ割り振られています。
また、PCR検査時に提出した書類(機内で配布された書類の中の1枚)のコピーも、それぞれに配布されました。ホテルの部屋に入るのに必要だということです。
21時05分頃、待合エリアを出発。これ以降、本日自宅に帰宅しない人(グループD)の約20人が一緒に行動します。
パスポートコントロールを通り、預けていたスーツケースをピックアップし、税関を通って、21時20分頃、空港のターミナルビルを出ました。
関西国際空港から指定の待機場所(ホテル日航)への移動
空港のターミナルビルを出た後、検疫所の職員の指示に従いホテル行きのバス乗り場へ。数分でバス乗り場に到着。
21時25分頃、スーツケースをトランクに預けて、ホテル行きのバスに乗車。
バスは座席がビニールで覆われ、窓にはカーテン。運転席と客席の間もカーテンで仕切られています。座席をシートで覆うのは新型コロナウイルスが付着しにくいようにするため、運転席と客席の間を仕切るのは運転手と入国者の接触を避けるためという感染防止であることはわかりますが、窓にカーテンをかけることだけは、今回、唯一理解できなかった点です。
21時40分頃、ホテル日航に到着。メインの玄関ではなく、裏口の到着したようです。ただし、前のバスに乗っていた人(グループC)の下車がまだ終わっていないようでバスの中で待機。
しばらくして、1人あるいは1家族ずつ降りるように指示がありました。滞在する部屋が6階と7階の人がいるようで、最初に7階の人から順番に降りていきます。
バスの中で待機する時間は思ったより長く、22時15分にようやく下車できました。この時点でも、バスにはまだ5〜6人が残っていました。
指定の待機場所(ホテル日航)内
22時15分、バスを下車。トランクに預けていたスーツケースは既に通路に並べられています。
入口に立っている職員から、前の人がEVホールにいる場合は、EVホールに入らず、通路で待機するように指示されます。感染防止のため、1人あるいは1家族ずつEVに乗るため時間がかかっていることがわかりました。
スーツケースをピックアップした後、EVホールへ。EVホールに置かれたテーブルには、2人の検疫所の職員。待合エリアで渡された書類(機内で配布された書類の中の1枚)のコピーを検疫所の職員に渡します。また、ホテルの部屋番号が記された紙片を見せました。
EVで6階へ。6階のEVホールにも何名かの職員があり、改めて部屋の番号を伝えます。22:25頃、指定された部屋に入りました。飛行機が着陸してから4時間半弱が経過していたことになります。
部屋のテーブルには、何枚かの書類が置かれていました。「対処に関する手引き」と書かれた書類には、空港内で聞いた内容と重複する内容もありましたが、次のようなことがことが記されていました。
- 「陰性」の場合、原則、検査結果が判明した日に退所する必要がある。
- 「陰性」でも、公共交通機関の利用はできないこと。入国した次の日から起算して14日間は自宅またはホテル等で待機する必要があること。
- 「陰性」で退所する場合でも、退室時に咳や発熱(37.5℃以上)などの体調不良があれば事務局職員に伝えること。
- 「陽性」の場合、検疫所から直接連絡があること。検疫所から具体的な指示があるまで部屋の中で過ごすこと。
裏面は「退所後の移動手段と待機場所についてのアンケート」で、指定の待機場所(ホテル日航)からの移動手段(自家用車での迎え、レンタカー、その他)、14日後までの滞在場所(自宅、ホテル名、その他)を記入して、部屋に置いていくこととされています。
※このアンケートでは、迎えが到着する見込時間、具体的なホテル名や滞在先を記入することが求められます。
「当施設での一時待機の手引き」と書かれた書類には室内で過ごす上での注意事項として、例えば、次のような内容が書かれていました。
- 咳や発熱など体調が悪い場合は速やかに内線で事務局まで連絡する
- 外出はできない(コンビニへの買物や喫煙のための外出もできない)
- 3食の食事はお弁当で提供する。お弁当を部屋の前の椅子に置いたことはインターホンで知らせるので、インターホンが鳴って数分後にドアを開けて受け取る
- 室内では禁酒・禁煙
- ゴミは食事後の弁当がらと一緒に部屋の前に出す
22:45頃、夕食のお弁当を届けたことを知らせるインターホンが鳴りました。
翌日、朝食、昼食の2度、お弁当が届きました。お弁当を受け取る時に扉を開けると、通路には警備員が待機していることが見えました。
15時数分前、部屋の内線が鳴り、PCR検査の結果が「陰性」だったことが伝えられました。部屋は16時までに退室して欲しいこと、退室後も迎えが到着するまではホテル1階のロビーで過ごせることも伝えられました。
しばらくして、部屋のインターホンが鳴り、PCR検査の結果が「陰性」であったことの関西空港検疫所長名で発行された印鑑入りの証明書が届けられました。
「陰性」であったため荷物をまとめて退室。廊下で待機している検疫所の職員に、先ほど受け取った「陰性」の証明書を提示した後、EVホールへ。
EVを1階で降りて、廊下を進み、衝立を抜けるとホテルのロビーへ。ホテルの従業員に迎えの到着まで待ちたいと伝えると、ロビーの空いている席で待ってくださいとのこと。ロビーでは、他にも迎えの到着を待っている人が何人か過ごしていました。
ホテル日航には、客室が南北2つのウイングに分かれて配置されています。昨夜はわかりませんでしたが、PCR検査の結果が判明していない入国者と一般のホテル利用者が接触することのないよう、入国者のための指定の待機場所が北ウイング、通常のホテルの客室が南ウイングと、ウイングによって用途が分離されており、さらに、北ウイングの入口には衝立がされています。
以上が関西国際空港に到着し、指定の待機場所(ホテル日航)を退室するまでの流れです。これから入国される方々が、空港での水際対策の流れを把握するための参考になれば幸いです。
なお、退室するまでの間にJALのキャビンアテンダントの方々、検疫所の職員の方々、ホテルのスタッフの方々に対応していただきましたが、みな丁寧に対応してくださったことを申し添えておきます。
(更新:2021年1月5日)