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千里ニュータウンの人口・高齢化率(2024年春)

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ニュータウン・スケッチは、吹田市・豊中市の住民基本台帳による人口・世帯数のデータを用いて、千里ニュータウンの人口や高齢者などの情報を集計した情報を継続して公開してきました。2024年春のデータが公開されていますので、千里ニュータウンの最新の人口・世帯数を集計しました。
この記事では次の4つに分けて集計しています。

  • ①千里ニュータウンとして開発された12住区(吹田市域8住区+豊中市域4住区)
  • ②吹田市域8住区:佐竹台、高野台、津雲台、藤白台、古江台、高野台、竹見台、桃山台
  • ③豊中市域4住区:新千里北町、新千里東町、新千里西町、新千里南町
  • ④上新田

データは、明記していないものは、吹田市・豊中市の住民基本台帳のデータを用いています(吹田市は3月31日、豊中市は4月1日時点のデータ)。

人口

上新田を含めた千里ニュータウンにおける近年の集合住宅の建替えラッシュにより人口は継続して増加してきました。
2019年に①千里ニュータウンとして開発された12住区の人口が10万人を超え、その後も人口は増加し続けていましたが、2024年には102,773人と前年より824人減少しています。
②吹田市域8住区、③豊中市域4住、③上新田に分類すると、②吹田市域8住区の人口は一貫して増加し続けてきましたが、2024年は前年より減少。③豊中市域4住区の人口は2021年を境に減少が続いていました。これに対して、③上新田の2024年の人口は、前年より増加しています。

世帯数

集合住宅の建替えにより世帯数は継続して増加していましたが、2024年には①千里ニュータウンとして開発された12住区の世帯数が48,033世帯と前年より471世帯減少しています。
②吹田市域8住区の世帯数、③豊中市域4住区の世帯数も、いずれも2024年は前年より減少。それに対して、④上新田の世帯数は、2024年に9,147世帯と最大を更新しています。

一世帯当たりの人員

①千里ニュータウンとして開発された12住区の一世帯当たりの人員は減少傾向にありますが、2024年は前年より増加しています。
④上新田の一世帯当たりの人員は2.3人と、①千里ニュータウンとして開発された12住区よりも多いものの、減少が続いており、2009年の約2.45人から2024年の2.27人へと、この15年で約0.18人と大きく減少しています。

高齢化率

長期の高齢化率の推移

まち開き当初は若い世代が多かったため、①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率は全国平均を下回っていましたが、1990年代後半に高齢化率は逆転。ただし、近年は集合住宅の建て替えラッシュにより若い世代が入居しているため、②吹田市域8住区、③豊中市域4住区の高齢化率はいずれも約30%と横ばいとなっており、2015年から2020年にかけてやや低下しています。
2020年の日本の高齢化率は28.6%であり、①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率より1.5%ほど小さくなっています。④上新田の高齢化率は上昇し続けているものの、約20%と全国平均を大きく下回っています。

※長期の高齢化率の推移は国勢調査のデータで、具体的には次の資料に掲載されているデータである。

  • 『千里ニュータウンの資料集(人口推移等)』(吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議, 2022年10月1日)に掲載のデータ
  • 上新田は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計。※上新田は、2020年国勢調査では「地域階層レベル:3」(1丁目~4丁目の合計)と「地域階層レベル:2」に分けて掲載されているため、両者をあわせて集計
  • 日本の高齢化率は「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」(総務省統計局, 2021年11月30日)に掲載のデータ

近年の高齢化率の推移

①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率は、近年低下していましたが、2024年は約29.0%となり、前年よりわずかに上昇しています。
④上新田の高齢化率は、①千里ニュータウンとして開発された12住区に比べると小さいものの、上昇が続いており、2024年には約20.7%になっています。

前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳~)を分けると、①千里ニュータウンとして開発された12住区では、2012年以降、後期高齢者の方が前期高齢者よりも大きな割合となっています。その後も、後期高齢者の割合は上昇傾向、前期高齢者の割合は低下傾向にあります。

年少人口(15歳未満の人口)割合

長期の年少人口(15歳未満の人口)割合の推移

まち開き当初は若い世代が多かったため、①千里ニュータウンとして開発された12住区の年少人口割合は30%を超えていましたが、その後急激に低下。1990年以降は全国平均を下回るようになりました。ただし、近年は集合住宅の建て替えラッシュにより若い世代が入居しているため、2015年には再び全国平均を上回るようになっており、2020年には14.9%となっています。

※長期の年少人口割合の推移は国勢調査のデータで、具体的には次の資料に掲載されているデータである。

  • 『千里ニュータウンの資料集(人口推移等)』(吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議, 2022年10月1日)に掲載のデータ
  • 上新田は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計。※上新田は、2020年国勢調査では「地域階層レベル:3」(1丁目~4丁目の合計)と「地域階層レベル:2」に分けて掲載されているため、両者をあわせて集計
  • 日本の年少人口割合は「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」(総務省統計局, 2021年11月30日)に掲載のデータ

近年の年少人口(15歳未満の人口)割合の推移

①千里ニュータウンとして開発された12住区の年少人口は、近年上昇しており、2024年には約15.0%となっています。

住民の年齢構成

①千里ニュータウンとして開発された12住区について、2010年と2020年の住民の年齢構成のグラフを比べると、2010年では「60~74歳」を中心とする世代(ニュータウン第一世代)が最も大きな山、「35~44歳」を中心とする世代が次に大きな山となっていたのに対して、2020年は「45~49歳」を中心とする世代が最も大きな山になるという変化が見られます。近年の集合住宅の建て替えラッシュの結果がここにも現れています。②吹田市域8住区、③豊中市域4住区にも、同じ傾向が見られます。

一方、④上新田の住民の年齢構成は、若い世代が大きな山になっています。最も大きな山は2010年では「35~39歳」を中心とする世代、2015年では「40~44歳」を中心とする世代、2020年では「45~49歳」を中心とする世代というように、時間の経過とともにグラフの山は右側に移動しています。
こうした変化により、2020年時点では②吹田市域8住区、③豊中市域4住区、④上新田のいずれにおいても「45~49歳」の人口が最も多くなっています。

まとめ

以上の結果から次のように考えることができます。

近年の集合住宅の建替えラッシュにより人口は増加し続けており、2019年には①千里ニュータウンとして開発された12住区の人口が10万人を突破しました。ただし、2024年には102,773人と前年より824人減少しています。建替えラッシュがこれほど行われてきたにも関わらず、人口が減少したというのは意外に感じました。
住区ごとの人口をみると、2023年から2024にかけて人口が増加しているのは佐竹台、古江台、新千里南町の3住区と、上新田のみ。他の全ての住区は人口が減少しています。
世帯数が減少しているため、人口が減少しているのは、集合住宅の再開発に伴う一時的な移転の影響も考えることができるため、人口、世帯数の推移は来年以降も注目してみていきたいと思います。
千里ニュータウンとして開発された12住区のうち、2024年時点で最も人口が多いのは古江台の11,161人、最も人口が少ないのは高野台の5,434人と、約2倍の開きがあります。それに対して、千里ニュータウンとして開発されなかった上新田の2024年時点の人口は20,807人で、最も人口の多い古江台と比べても約2倍の開きがあります。このように、住区の人口に大きな開きが生まれており、人口に占める上新田の割合が大きくなっていることも、現在の千里ニュータウンの特徴です。

集合住宅の建替えラッシュにより、千里ニュータウンでは若い世代を見かける機会が多くなりました。建物も新しくなり、一見すると千里ニュータウンが若返ったように見えますが、2020年の国際調査時点の高齢化率は日本の平均を上回っています。また、上新田を含めて、後期高齢者の割合は上昇し続けており、千里ニュータウンが高齢者にとっての暮らしの場所でもあることに変わりはありません。

千里ニュータウンとして開発された12住区の年齢構成は、2020年時点で「45~49歳」を中心とする世代、「70~74歳」を中心とする世代、「5~9歳」を中心とする世代と、世代のグラフでは3つの山ができています。ニュータウンとして開発されなかった上新田と比べると、年齢構成には偏りが見られます。これは、半世紀前のまち開き時にも、近年の建替えラッシュでも、同じ世代の人々が一斉に入居したことの結果。近年入居しているのは分譲マンションの購入者が多く、(賃貸に比べて)長期にわたり住み続けることを考えると、今から20~30年後にはまた高齢化が急速に進むことが予想されます。千里ニュータウンは、住宅不足を解消するという当時の切実な課題に対応して開発されました。しかし、大規模な街を短期間に開発するということは、このような住民の年齢構成の偏りを生んでしまうということでもあります。近年の再開発も、同時多発的に行われているため、再開発を経ても年齢構成の偏りは解消されていないとも言えます。