『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

千里ニュータウンの要員住宅・併存住宅

千里ニュータウンには「千里ニュータウン内に職場を持つ人達に賃貸する住宅」(『財団法人千里開発センター10年のあゆみ』千里開発センター 1972年)が建設されました。要員住宅、併存住宅と呼ばれる住宅で、千里開発センター(後の千里センター)が賃貸事業を行なっていた要員住宅・併存住宅等は計8カ所、230戸ありました。

「住宅賃貸事業
千里開発センターが建設し、または企業局が建設した住宅を買い受けて賃貸している住宅には、緊急要員住宅もある。
要員住宅としては、郵便局、電電公社、ガス会社、診療所等に勤務する者等を対象として世帯者用16戸1棟、単身者用20戸1棟を建設し、昭和39年6月完成とともに賃貸事業を開始した。
企業局から買い受けた住宅には、併存住宅がある。近隣センターにおける店舗経営者またはその従業員用である。1階を公衆浴場または店舗とし、2皆以上を住宅としたもので、企業局が建設して自ら分譲募集したが、当初は価格、支払方法等の点で応募者が少なく、その後千里開発センターが買い受けて賃貸を行ってきた。」
※『千里の道:大阪府千里センターのあゆみ 1962-2005』大阪府千里センター・大阪府タウン管理財団千里事業本部 2006年

以下では、要員住宅の1つである新千里東町近隣センターの要員住宅をご紹介したいと思います。

新千里東町近隣センターの要員住宅

東町近隣センターは、要員住宅を含む建物がコの字型に配置されています。
コの字の内側からみた要員住宅。5階建ての建物で、1階には東町会館、郵便局、トイレがあります。2〜5階が要員住宅で、廊下にそって各階5戸が並んでいます。

エントランス部分。要員住宅は既に閉鎖されているため中に入ることができませんが、2012年11月10日(土)におおさかカンヴァスのイベントとして開催した「「大きな本」新千里東町ツアー」では、特別に要員住宅を開放していただくことができました。

この日のツアーでは、府営新千里東住宅にお住まいのIさんから、バスオールなどについての話を伺いました。Iさんからは、玄関の扉についても次のような話を伺いました。
玄関の扉には覗き窓があるけれど、普通のガラスだと外から中の人が丸見えになる。そのため、Iさんがお住まいの府営新千里東住宅にも覗き窓用のミラーガラスを500円とか1,000円とかで売りに来る人がいたとのこと。要員住宅の405号の玄関の扉にも、ミラーガラスが取り付けられています。

住民が残していったダイニングの照明器具。

要員住宅は洋式のトイレ。
現在のトイレと違うのは、水を流すタンクとは別に、手洗いの蛇口が設けられているところ。府営新千里東住宅のトイレもこれと同じタイプのようです。
50年程前は洋式のトイレは珍しく、入居してきたのはそれまで洋式のトイレなんか使ったことがなかった人ばかり。図面に座り方が書かれていたけれど、最初はみな洋式の便器の座り方がわからなかったとのこと。

新千里東町近隣センターの要員住宅は、長い間使われていないため、あちこちに痛んだ箇所が見られましたが、この建物ができた50年程間の時点では、かなりモダンな建物だったと思います。大阪大学の学生によるまちづくりのワークショップ形式の講義では、この要員住宅を改修して、お年寄りの住まい&若者の下宿にして、お年寄りのための配食サービスの設備も設けるというような提案が何度かなされたことがありますが、その提案はまだ実現していません。

(更新:2022年4月19日)