『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

文化資産の保護

日本学術会議の話題をもう1つ。
言語・文学委員会による「東日本大震災に対応する第三次緊急提言のための審議資料」には、アーカイブに関して次のような提言がなされています。

3.文化資産の保護
(1)分散アーカイビング
日本文化・日本語文化資産の電子化されたアーカイブは、既に多数あり、今後も大いに生産されるべきである。しかし、そのアーカイビングの多くは、現在は当該機関自体で行われており、当該機関が被災すると、原本とアーカイブの両方が一気に滅失する危険がある。・・・・・・。大学の研究業績のレポジトリ化、美術館などのオンライン展示は盛んだが、これも当該大学の図書館・美術館のシステム内での保存が少なくないようで、万一の被災時の原本と同時の被災・滅失が懸念される。・・・・・・

(2)文化資産アーカイブの自由の確保
ケルン(ドイツ)市の歴史文書館Historiches Archivは、2009年3月3日に倒壊して多くの資産が失われたが、全世界の研究者がマイクロフィルム等を持ち寄って記録の再生を図っている。電子的アーカイブは、分散アーカイブの様な自立的な保全措置だけでなく、こうした個人の蓄積からも再生可能である。
そろそろ、日本文化・日本語に関する電子的アーカイブの「不許複製」方針を転換し、少なくとも税金(科研費等含む)によって作成された電子的アーカイブは、(翻刻などに伴う著作者人格権は保持しつつ)原則として公開・複製自由とするという社会的な合意、法的な措置が検討されてもよいのではないか。・・・・・・
*「東日本大震災に対応する第三次緊急提言のための審議資料」日本学術会議言語・文学委員会 2011年4月5日

千里グッズの会でも、2012年の千里ニュータウンまち開き50周年を目指して、千里ニュータウンの歴史を収集・編集・発信するというプロジェクト「ディスカバー千里」を、豊中市の協働事業市民提案制度を活用してスタートさせました。まだ始まったばかりのプロジェクトですが、いずれ千里グッズの会でも検討する必要のある内容です。