『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

地域住民が千里ニュータウンの公共施設に開いた「ひろば」

2010年4月6日、千里ニュータウンの中央地区にある豊中市千里文化センター・コラボにカフェがオープンした。
カフェは、市民実行委員会が運営する「コラボひろば」の一貫として開かれたもので、火曜日から土曜日までの週5日、コーヒーと紅茶、ジュースが提供されている。

  • オープン:2010年4月6日
  • 運営日時:火曜~土曜 10:00~16:30
  • 運営場所:千里文化センター・コラボ2階
  • 運営者:千里文化センターコラボひろば、及び、屋上庭園事業実行委員会
  • メニュー:コーヒー(クッキー付き):200円、・紅茶(クッキー付き):200円、オレンジジュース:100円、カルピス:100円

「コラボひろば」の運営内容


千里文化センター・コラボは、千里公民館、千里図書館、千里老人福祉センター、千里保健センター、新千里出張所の5つの機関が入居する複合施設であり、千里中央地区の再開発に伴い2008年2月12日に開館した。
愛称である「コラボ」は、協力・協同を意味する英語、コラボレーションからとられている。

「コラボ」には、計画段階から「豊中市新千里図書館・公民館創造会議」のメンバーとして地域住民が関わっており*注1)、この会議において次の重要な2つの点が提案された。1つ目の提案は、多目的スペースをもうけることである。旧・千里文化センターの前には、誰もが自由に使える広場があった。再開発の計画案に代わりとなる広場が盛り込まれていなかったことを危惧した地域住民らは、建築の専門家のアドバイスを受け、「コラボ」内に広場をもうけることを提案した。この提案により、メインの入口がある「コラボ」2階に約100m2の多目的スペースが実現した。このスペースが「コラボひろば」である。
2つ目の提案は、5つの機関が入居する「コラボ」の運営を柔軟に行うために、「コラボ」全体の運営に責任をもつセンター長をおくことである。この提案を受け、2007年9月に決議された「豊中市千里文化センター条例」の第4条に、「センターにセンター長その他必要な職員を置く」と明記されることとなった。

千里文化センター・コラボ

旧・千里文化センター

旧・千里文化センター前の広場

「創造会議」は中間報告において、新千里文化センターの機能と役割について次のように提言している。

「新しい千里文化センターは、市の5施設の単なる複合施設ではなく、豊中東部地域を中心にした北摂地域の生涯学習と文化創造の拠点、千里のまちづくりと地域活性化の拠点として、総合的な役割を果たす必要がある。このような観点から、2階入り口に、市民と5施設の多様な活動をつないでいく機能を持つ多目的スペースを配置すると共に、管理運営面においても、千里文化センター長の設置、各施設の休館日の相互利用など、縦割りの弊害を排し、サービス機能を一体化して運営することが期待される」*文1)。

地域住民は自由に使える広場、運営全体に責任をもつセンター長に、「つなげる」役割を託したといえる。実際に「コラボ」は非常に柔軟な場所になっている。
現在、公募により選ばれた18人が「千里文化センターコラボひろば及び屋上庭園事業実行委員会」のメンバーとして、「コラボひろば」と屋上の運営のあり方について検討している。「コラボひろば」では、具体的に次のような活動が計画されている*注2)。

  1. カフェ・スペース
    飲物を提供して、ゆったりと過ごせる場所にするとともに、「コラボ」や地域の案内、住まいの相談等を行う。
  2. 作品展示
    作品の展示スペースの運営や、展示に必要な情報の提供を行う。
  3. 地域情報の蓄積・発信
    千里ニュータウンや市民活動に関する情報を発信する。また、千里ニュータウンの歴史を記録・語り継ぐ活動を行う。
  4. 語りの場の提供
    様々なテーマでゲストの話を聴いたり、住民同士が語り合える場所を提供する。
  5. 親子・子ども対象のイベント
    親子対象のコンサート、実験教室、子どもカフェ等のイベントを行う。

このリストからは、従来の公共施設の枠組みでは括ることのできない、非常に多彩な活動が計画されていることがわかる。いずれも、「コラボひろば」にやって来た人々に対して、地域に関わるためのきっかけを提供することを目指す活動である。
居心地の良い場所を誰かに提供してもらうのではなく、自らが当事者となり地域を良いものにしようと働きかけていくこと。自らにとっての豊かな生活環境は、そのような働きかけを通してしか築かれない。現在求められているのは、人々が地域と関わるきっかけを見つける手助けをしてくれる、言わば地域への入口になる場所だといえる。もちろん、様々な人々が地域に関わるためには、多彩なきっかけがある方が望ましい。だからこそ、地域への入口となる場所はその間口を広げるために、従来の枠組みには縛られない柔軟な場所であることが求められる。


  • 注1)創造会議のメンバーは公募委員6名、図書館・公民館関係団体4名、千里ニュータウン関係団体2名、図書館・公民館等職員3名から構成され、2005年9月23日から2007年11月26日までの間に、計23回のワークショップ形式の会議が開かれた。さらに、「図書館部会」「公民館部会」「多目的スペース部会」の3部会ももうけられ、3部会で計26回の会議が開かれている(文献1, 2)。
  • 注2)「コラボひろば」に展示のパネルをもとに作成した。

参考文献

  • 文1)『平成17年度(2005年度)豊中市新千里図書館・公民館創造会議 中間報告書』 豊中市新千里図書館・公民館創造会議, 2006.05
  • 文2)『豊中市新千里図書館・公民館創造会議 最終提言』豊中市新千里図書館・公民館創造会議, 2007.12

  • この記事は日本建築学会編『まちの居場所:まちの居場所をみつける/つくる』(東洋書店 2010年)の「地域住民が公共施設に開いた「ひろば」」に一部加筆したものです。
  • 現在(2017年9月末時点)では、「コラボひろば」は「コラボ交流カフェ」と呼ばれています。