スペイン・バスク地方にあるビルバオ(Bilbao)を訪れて印象残っているのは、多様な世代の人々がバルやカフェテリアで飲食していたこと。
バルやカフェテリアは、ゆっくりテーブルに座って食事をする場所でなく、簡単に食事をすませる場所で、実際に通りかかると、屋外のテーブルに座って、あるいは、立ったままで、食事をせずビールやワインなどの飲物だけを飲んでいる人が多かったように思います*1)。
以下ではビルバオで見かけたカフェテリアやバルの様子をご紹介します。何時頃の様子かも書いていますが、スペインの食生活は日本と異なり、次のような時間に1日に5回食事をすると言われています。
- 朝食:8~9時頃、軽く済ませることが多い
- 朝食と昼食の間の軽食:10~11時頃
- 昼食:2時頃から。1日の中でメインの食事
- 昼食と夕食の間の軽食:16~17時頃
- 夕食:21時頃から
目次
カスコ・ビエホ(Casco Viejo):ビルバオ旧市街
ヌエバ広場(Plaza Barria)
ヌエバ広場(Plaza Barria)は、約700年の歴史をもつカスコ・ビエホ(Casco Viejo)と呼ばれる旧市街にあります。正方形の広場を囲むように列柱が立ち並んでおり、列柱の内側にはバルやレストランが並んでいます。列柱の内側にはテーブルが出されています。
■平日の13時頃
この時間は、食事をしているというより、ビール、ワイン、コーヒーなどの飲物だけを飲んでいる人が多いように感じました。カウンター席に座っている人、表に立ってビールやワインなどを飲んでいる人も見かけました。
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■平日の19~20時頃
13~14時頃に比べると、人が増えています。この時間帯は夕食前の時間帯で、広場に出されたテーブルに座っている人を含め、大半の人が食事をせずビール、ワインなどの飲物だけを飲んでいました。
印象に残っているのは、高齢の人が、女性も含めてお酒を飲んでいること、ベビーカーを押した若い世代が集まってお酒を飲んでいること、その周りで子どもたちが遊んでいること。日本ではあまり見かけない光景のように思います。
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■金曜日の21時頃
多くの人が過ごしており、広場に出されたテーブルはほぼ満席。バルの前で立っている人も多く、店から人が溢れているような印象を受けました。
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■土曜日の17時頃
この時間帯、多くの人が過ごしていました。大半の人が食事をせずビール、ワインなどの飲物だけを飲んでいます。
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写真はありませんが、土曜日の22時頃に訪れた時には、列柱の内側の空間は人をかき分けて歩かないといけないぐらい非常に多くの人が過ごしていました。
カスコ・ビエホ(Casco Viejo)の通り/
ビルバオの旧市街は細い通りが迷路のように走っており、通りにもバル、カフェテリア、レストランがあります。
■平日の14時頃
この時間帯、通りに出されたテーブルに座っている人の大半が、食事をせずビール、ワイン、コーヒーなどの飲物だけを飲んでいました。
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■金曜日の21時頃
非常に多くの人が通りでお酒を飲んでいます。人をかき分けないと前に進めない通りもありました。通りで過ごしているのは、比較的若い世代の人が多いように感じました。
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■土曜日の17時頃
多くの人が通りに出されたテーブルでビールやワインを飲んでいます。テーブルに座り切れず、立ったままで、あるいは、壁際に座っている人も多数見かけました。
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アバンド(Abando):ビルバオ中心部
Ledesma Musikariaren Kalea
アバンド(Abando)はビルバオ中心部。地下鉄(Metro)とトラムのアバンド(Abando)駅の北側に、Ledesma Musikariaren Kaleaという歩行者天国になっている通りがあります。両側にバル、カフェ、レストランが並んでいます。
■平日の16時頃
通りに出されたテーブルに座っている人がちらほら見かけますが、この時間帯は、まだそれほど混雑しているわけではありません。
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■金曜の19時頃
は非常に多くの人が過ごしており、通りに出されたテーブルはほぼ満席。席に座れず立っている人や壁際に座っている人もいます。その一方、この時間帯はレストラン内のテーブルに座っている人はほとんど見かけませんでした。
ビルバオ中心部ということで、過ごしている人の多くが仕事から帰る途中の人なのかもしれません。大半の人が食事を注文せず、ビールやワインなどの飲物だけを飲んでいました。
旧市街のヌエバ広場(Plaza Barria)でも同じことを感じましたが、この通りでも高齢の人が、女性も含めてお酒を飲んでいること、ベビーカーを押した若い世代が集まってお酒を飲んでいること、その周りで子どもたちが遊んでいることが印象に残っています。
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■土曜の14〜15時頃
非常に多くの人が過ごしており、大半の人が食事は注文せず、ビールやワインなどの飲物だけを飲んでいました。
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アバンド(Abando)の通り
アバンド(Abando)では、Ledesma Musikariaren Kalea以外にも、歩道に出されたバル、カフェテリア、レストランのテーブルを多数見かけました。
■平日の11~12時頃
歩道に出されたテーブルでコーヒーなどを飲んでいる人を見かけました。
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■平日の19時頃
歩道に出されたテーブルでコーヒー、ビール、ワインなどを飲んでいる人を見かけますが、大半の人は食事をせず、飲物だけを飲んでいます。
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最初に書いた通り、日本とスペインでは食事をとる時間が異なるため単純な比較はできませんが、19~20時頃でも、ベビーカーを押した若い人や高齢の人を含め、多様な世代の人々がバルやカフェテリアで過ごしていたことが印象に残っています。バルやカフェテリアは1階にあって広場や通りに開かれていること、必ずしもテーブルに座らなくてもいいこと、食事抜きに飲物だけ注文できること、それゆえ、値段もそれほど高くないこと(ビールやワインなどの飲物は1杯が約2~3ユーロ)など気軽な場所であることも、多様な世代の人がちょっと立ち寄れることを可能にしているのかもしれません。バルやカフェテリアは、子育て中であっても、高齢になっても、どのような世代であってもちょっと立ち寄れる場所になっていること。このような場所は、レイ・オルデンバーグ(2013)のいうサードプレイス、つまり、「インフォーマルな公共生活の中核的環境(コア・セッティング)」と言っていいのではないかと考えています。
バルやカフェテリアでは年齢や性別を問わず喫煙している人が多いこと、また、バルやカフェテリアに限らず全体的な話ですが、スペインの食事は美味しいものの塩分が多いことも印象に残っています。アルコール、喫煙、塩分には健康に悪いというイメージがありますが、実は、スペインは平均寿命、健康寿命が長い国でもあります*2)。人々にとってサードプレイスとしてのバルやカフェテリアが「ストレスの「棚上げ」」などのコミュニティ構築機能を担っていることがこの背景にあるのではないか。1回訪れただけの印象に過ぎませんが、バルやカフェテリアで楽しそうに過ごしている人々を見てこのようなことを感じました。
カフェやバルに出入りしていることの結果として、知らず知らずのうちに健康な状態が実現されている。もしそうだとすれば、非常に羨ましいことであり、非常に豊かな暮らしと言えるかもしれません。
■注
■参考文献
- レイ・オルデンバーグ(忠平美幸訳)(2013)『サードプレイス:コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』みすず書房