『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

人々が行き交い、たたずむ橋:南三陸町志津川の「中橋」

先日、南三陸町(宮城県本吉郡)のBRT志津川駅を訪れる機会がありました。東日本大震災による津波で大きな被害を受けたエリアで、復興により八幡川の西岸は南三陸町震災復興祈念公園として整備されています。祈念公園の祈りの丘には、震災で犠牲になられた方の名簿を安置する石碑(名簿安置の碑)。また、旧防災対策庁舎が震災遺構として保存されています。八幡川の東岸には、建築家・隈研吾の設計による3.11メモリアル、さんさん商店街があります。

写真は祈りの丘から東を向いて撮影したもの。右手前が震災遺構の旧防災対策庁舎。左奥が3.11メモリアル、右奥がさんさん商店街。

(祈りの丘から東を望む)

(祈りの丘から南を望む、中央の建物は震災遺構のブライダルパレス高野会館)

(祈りの丘から北を望む、被災したJR志津川駅のホームが残されている)

(3.11メモリアル)

(さんさん商店街)


八幡川西岸の祈念公園と、東岸の3.11メモリアル、さんさん商店街をつなぐ位置には、隈研吾の設計による中橋が架けられています。中橋の東の山には上山八幡宮があり、橋は神社への参道にもなっています。神社では、神聖な世界と日常がしばしば太鼓橋で区切られる。レンズ型をしている中橋は、太鼓橋のアーチを反転させたデザインを採用しており、神聖な世界と日常を結ぶ場所でもあるということです*1)。中橋は、レンズ型のトラスの上部、下部の両方を歩くことができます。

中橋を横から見ると、レンズ型のトラスの上部の手すりが細いこと、背景が空であることから、行き交ったり、佇んだりしている人々が浮かび上がって見えたことが魅力的で、印象に残っています。


■注

  • 1)隈研吾建築都市設計事務所「中橋」のページより。