『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

熊本の古町

熊本城と熊本駅の間に古町というエリアがあります。西側・北側の坪井川、東側の白川に囲まれた扇形のエリアで、熊本市電の駅では慶徳校前駅から祇園橋駅にかけてのエリアになります。

古町は、加藤清正が熊本城の築城とともに造った城下町。区画は、1辺が約120mの正方形で、それぞれの区画の中心にはお寺が配置されるという、珍しい街になっています。

「古町地区は、火事による延焼防止および有事の際の軍事拠点として碁盤目状の中心に寺を配した”一町一寺”の町割の中に、坪井川の荷揚げ場を有する問屋が軒を連ね、物流の拠点として発展しました。」
※熊本市観光ガイド「新町古町」のページより。

先日、古町を歩く機会がありました。少し歩いただけの印象に過ぎませんが、マンションやホテルが建設されたり、駐車場になったりしている土地もありました。古い建物をリノベーションした魅力的なカフェ、レストランなども見かけました。この意味で、古町の風景は現在にあわせて変化しているということかもしれませんが、区画の中心にお寺があることはやはり印象に残りました。

お寺などの宗教施設は、容易に再開発されることはない。結果として、宗教施設は街の風景を継承する役割も担っている。

これは、千里ニュータウンとは対照的です。千里ニュータウンは、大阪府が開発した日本で最初の大規模ニュータウンですが、政教分離として宗教施設が計画されることはありませんでした*1)。
近年、千里ニュータウンは、集合住宅を中心とする再開発により風景が大きく変わっていますが、その一因として、宗教施設が千里ニュータウンにはないからではないか。古町を歩いて、このようなことも思いました。

なお、古町から坪井川を越えた北側には新町というエリアがあります。新町も、古町と同じように、加藤清正によって造られた城下町ですが、新町は南北に細長い長方形の区画になっています。

「新町地区は、熊本城の正面にあたり、5つの城門に囲まれた城内町で、短冊形の町割の中には、御家中の武家屋敷と町人町とが混在する、全国でも珍しい町でした。」
※熊本市観光ガイド「新町古町」のページより。


■注

  • 1)ただし、千里ニュータウンにも宗教的な場所は存在する。千里ニュータウンの宗教的な場所については、こちらの記事を参照。