地域の場所(まちの居場所)に関する研究をしていると、研究の成果をどのように地域へ還元するのか? ということをよく考えます。
研究は今すぐ有用なこと(有用と思われる)だけを目指して行うものではありませんし、今、有用でなないことが、将来意味をもってくる可能性もあります。その意味で研究は長期的な視点をもって行われるべきものです。だから、研究の成果を地域に還元するということは、研究にとっては副次的なことなのかもしれません。
地域の場所に関わっていると、視察、取材、あるいは、調査のためにやってくる人が多いことに気づきます。視察、取材、調査は一過性のものであることが多く、その成果がなかなか蓄積されたり、共有されたりしていないと感じます。
(たとえそれが研究にとって副次的なことであっても)地域の場所に対して、取材や調査により情報やデータを一方的に持ち帰ること以上の関わりが求められている気がします。そして、もし、相手から「私たちに何を還元してくれるのですか?」と問われたのなら、研究者はそれに対して何らかの答えを用意しておくべきではないかと思います。
研究の成果をどのように地域へ還元するのか?
ついつい、このような順序で考えてしまいます。まず研究をして、その成果を還元するという順序で。でも、もしかするとこの順序に捕らわれる必要はないのかもしれません。つまり、地域で必要とされている実践をまず行い、その実践のプロセスや結果を研究という形にまとめるというように。
恐らく、これがアクション・リサーチと呼ばれるものですが、こう考えるとアクション・リサーチとは研究手法の1つというよりは、研究者が対象(地域の場所)とどのようなスタンスで関わるのかという身の置き方と考えた方がよさそうです。
そして、地域で必要とされている実践の1つとして、インタビューやアンケートというような、通常研究で行うものと見なされるような調査的な活動がある。この時、これらの調査的な活動は既に地域における実践に埋め込まれているため、その成果をどう還元するかなどという問い自体が出てこないのだと思います。
ただ、日々の実践に追われていると、なかなか記録を整理できないということがあります。そんな時、外部の視点をもって実践の記録を整理したり、編集したりするのも大切な活動。そして、こうした情報の整理・編集は研究者が得意とする分野。地域の場所の研究をする時、研究論文を書くのと同時に、何かその場所に残せるメディアを編集したり、ウェブサイトの立上げや更新のお手伝いをしたり。それぞれの研究者が少しずつこうした活動を行えば、研究者に対する見る目も変わると思いますし、調査公害などという言葉も言われなくなるのではないかと思います。
情報を中央(だと見なされているところ?)に一方的に持ち帰るのではなく、それぞれの場所に情報を蓄積したり、その情報を共有できるかたちにしたりすることのサポートを行うこと。今、地域の場所で求められているのは、こうしたことかもしれません。