『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

まちの居場所(コミュニティ・カフェ)の運営資金

大船渡の「居場所ハウス」では、先日、NPO法人の理事会を開催しました。理事会では、運営資金のこと、補助金のことも議題となりました。
「居場所ハウス」に限らず、地域の場所(まちの居場所/コミュニティ・カフェ)にとって運営資金をどう確保するか、いかに補助金に頼らずやっていくかは大きな課題です。

運営資金という意味で、「居場所ハウス」と大阪府千里ニュータウンの「ひがしまち街角広場」とは対照的な考えで運営されています。

ひがしまち街角広場

2001年9月30日に、千里ニュータウン新千里東町に開かれた「ひがしまち街角広場」は商店街(近隣センター)の空き店舗を活用して運営されているカフェスペースです。元代表の女性は「ひがしまち街角広場」が生まれた背景を次のように話されています。

「ニュータウンの中には、みんなが何となくふらっと集まって喋れる、ゆっくり過ごせる場所はありませんでした。そういう場所が欲しいなと思ってたんですけど、なかなかそういう場所を確保することができなかったんです。」

ニュータウンには公民館、図書館などの各種施設が整っており、また、様々な店舗があります。けれども、ニュータウンには人々が「何となくふらっと集まって喋れる、ゆっくり過ごせる場所」だけがなかった。「ひがしまち街角広場」はそのような場所になることを目指して開かれた場所です。

  • 運営日:月〜土(日曜と第4土曜日は定休)
  • 運営時間:11時〜16時
  • 面積:倉庫部分もあわせて約70㎡(オープン当初は約30㎡)
  • メニュー:コーヒー、紅茶などの飲み物だけ。食べ物は提供していない
  • 運営:住民がボランティアで運営

「ひがしまち街角広場」は食べ物も提供せず、プログラムもほとんど行わない代わりに、大きな設備や備品を所有せず、ボランティアで、お金をかけずに(軽装備で)運営されています。各種施設や商店がある中で、「何となくふらっと集まって喋れる、ゆっくり過ごせる場所」だけがないという地域の状況だからこその運営スタイルだと言えます。
「ひがしまち街角広場」が10年以上にわたって運営され続けているということは、軽装備であり続けるという運営スタイルが有効だということの表れだと思います。

なお、「ひがしまち街角広場」は豊中市の社会実験としてスタートしました。社会実験期間中の半年間は豊中市からの助成を受けて運営していましたが、その後は補助金を受けずに自主運営されています。元代表の女性は、運営資金が無くなるということは、「ひがしまち街角広場」が地域で必要とされていないということだから、その時は補助金に頼らず閉店するという話で、自主運営を始めたと話されていました。

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居場所ハウス

2013年6月13日に、東日本大震災の被災地である大船渡市末崎町に開かれた「居場所ハウス」は古民家を移築・再生して開かれた場所です。「居場所ハウス」はカフェスペースの運営を基本としていますが、生け花教室が行われたり、歌声喫茶が開かれたりしています。そして、2014年10月25日からは毎月朝市を、2015年5月3日からは屋外に増築したキッチンスペースを用いて昼食の提供もスタートさせました。

  • 運営日:月火水金土日(木曜は定休)
  • 運営時間:10時〜16時
  • 面積:約115㎡(敷地は約960㎡)
  • メニュー:コーヒー、ハーブティなどの飲み物。うどん、そばなどの昼食
  • 運営:週3日はパートで、週3日はボランティアで運営

「居場所ハウス」の周辺には商店や飲食店がほとんどありません。変わりに活用できる空間(土地)はたくさんあります。「居場所ハウス」ではそうした地域の状況を考慮し、商店や買い物がなくて困っている人々の暮らしを少しでもサポートするため朝市を開催したり、昼食を提供したりしています。農園や朝市、キッチンスペースなど必要な設備・備品をそろえ、パートも雇用することによって、様々なかたちで地域の人々の暮らしをサポートしていくこと、そして、こうした活動を通して運営資金を獲得するという運営スタイルです。

「居場所ハウス」は古民家の移築・再生等のためにアメリカの企業・ハネウェル社からの寄付を受けました。オープン後の運営も、現在は補助金を受けて運営しています。しかし、先日の理事会でも話し合われましたが、毎年獲得できるか否かがわからない補助金に頼るのは不安定だから、補助金に頼らず運営していきたいという点ではみなの意見は一致しています。自立した運営を実現するためにも、今は(補助金を用いた)投資の時期だということです。

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軽装備な場所として運営されている「ひがしまち街角広場」と、様々な活動を通して運営資金を獲得しようとしている「居場所ハウス」。両者は対照的ですが、これはどちらが良いというわけではありません。いずれも、地域の状況に応じた運営スタイルです。