『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

フィリピンレイテ島のカナンガ再訪

今年の1月、大船渡「居場所ハウス」のKさん、Sさんらと一緒に、フィリピン・レイテ島のカナンガにあるマサラヤオ地区(Barangay Masarayao)を訪問しました。
この訪問はワシントンDCの非営利組織「Ibasho」代表の清田さんの呼びかけで、津波と台風という被災地の高齢者を中心とする住民同士が情報交換、交流、相互支援の関係を築くために行われたものです。

マサラヤオ地区は2013年の台風30号(フィリピン名はヨランダ)で大きな被害を受けた地区で、「ヘルプエイジ/コセ」(HelpAge/COSE)が復興住宅のプロジェクトを行っています*1)。

今年1月に訪問した際、建設会社に勤めていた経歴をもつKさんは、住宅の建設現場を見て、風によるねじれを防ぐため水平方向のブレースを取り付けた方がいい、長持ちさせるため壁にはペンキを塗った方いいなどの提案を行い、建設中だった高齢の男性の家に水平ブレースを取り付ける作業を行いました(詳細はこちらをご覧ください)。

それから約9ヶ月が経過。今回、「居場所ハウス」のKさんらとフィリピン・レイテ島を訪問する機会がありましたので、マサラヤオ地区を訪問しました。
高齢の男性の家は既に完成。壁は緑色に塗られ、表には竹で柵が作られていました。家におられた男性に声をかけたところ、こちらのことを覚えてくださっていたようで、完成した住宅の中を見学させていただきました。
今年1月に訪問した時には、見本を作れば、それを参考にできるからということで、住宅内の1ヵ所にだけ水平ブレースを取り付けて帰りました。今回、完成した住宅の中に入ると、残りの部分にもきちんと水平ブレースが取り付けられていました。
それを見たKさんは、「ちゃんと守ってくれるというのが本当に嬉しいよ。来た甲斐あった」、「役に立ったっていうことぐらい、嬉しいことないよね」と涙ぐんでおられました。

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住宅を見せていただいた後、表に出て少し立ち話。「普段でも泣いたことないんだけど、こんな嬉しいことない、俺。こう役に立つっていうことをね、やってあげたっていうことは一生の思い出だ。来てよかった」とKさん。「この前来た時は1時間もいなかったけど、同じ気持ちです」と男性。Kさんは自分の故郷の友人に会いに来たようなものだと話されていました。

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非常に大きな被害をもたらした2013年の台風30号からの復興において、住宅に水平ブレースを取り付けるというのは非常にささやかなことかもしれません。けれども、大金がなくても、高度な技術がなくても、木が一本あれば取り付けることができる水平ブレースは、その簡易さの故に現地で広まっていく可能性があるとも言えます。
もちろん、復興において外部から知識や技術を押しつけるというのも避けるべきことだと思います。当事者がやろうと思えばできるし、やりたくなければやらないという緩やかなかたちの知識や技術の伝達が大切だと思います。
マサラヤオ地区では、この男性の家の他にも何件か「ヘルプエイジ/コセ」(HelpAge/COSE)による復興住宅の建設プロジェクトが行われました。他の家でも水平ブレースが取り付けられているかどうかは確認できなかったのですが… 他の人も真似をして、自分の家に水平ブレースを取り付けるということが行われていればと思います。


  • *1)「ヘルプエイジ/コセ」(HelpAge/COSE):国際NGO「ヘルプエイジ・インターナショナル」(HelpAge International)と、そのローカルパートナーの「コセ」(COSE=Coalition of Services of the Elderly, Inc.)によるジョイント・プログラム