『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

Ibashoフィリピンによる農園作り

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写真はフィリピン・オルモック市のバゴング・ブハイで活動するIbashoフィリピン(Ibasho Philippines)の農園で、2015年10月に訪問した際に撮影したものです。
バゴング・ブハイは2013年台風30号(台風ヨランダ)の被害を受けた地域であり、ワシントンDCの非営利組織「Ibasho」の呼びかけで、高齢者の力をいかした地域の復興プロジェクト「Ibashoフィリピン」が進められています。

Ibashoフィリピンは以下のような経緯でスタートし、プロジェクトが進められてきました。

  • 2014年4月:現地で被災地支援を行う国際NGO「ヘルプエイジ・インターナショナル(HelpAge International)」と、そのローカルパートナーの「コセ(COSE=Coalition of Services of the Elderly, Inc.)」の受け入れで、被災地5地区を訪問。5地区の中でIbashoプロジェクトに意欲的であり、実際にプロジェクトを行う体制が整っている地区として、バゴング・ブハイのメンバーとプロジェクトを進めることとなる。
  • 2014年11月:バゴング・ブハイの小学校の被災状況の視察、高齢者協会(Senior Citizens Association)メンバーや学校関係者との意見交換を行う。
  • 2015年1月:大船渡「居場所ハウス」の理事2人と訪問。地域で高齢者が有用な存在と見なされておらず役割や生きがいの喪失感を抱いているという状況に対して、高齢者が主体となり地域の課題を解決していくプロジェクトの立上げに向けたワークショップを開催。ワークショップでは最初から拠点を建設するのでなく、自分たちでできることから徐々に始めること、具体的な活動としてリサイクル活動、農園での野菜作り、栄養プログラムの3つを行うことについて認識を共有。このワークショップを受け、高齢者協会のメンバーがペットボトルのリサイクル活動を自主的にスタート。
  • 2015年2月:ワシントンDCの非営利組織「Ibasho」が雇用したコーディネーターが現地に滞在し、プロジェクトが進められる。
  • 2015年3月:Ibashoフィリピンの高齢のメンバー2人と、コーディネーターが「居場所ハウス」を訪問し、活動情報の視察と意見交換を行う。仙台で開催された第3回国連防災世界会議の一環として「地域に高齢者の力を」(英語タイトルは:Elders Leading the Way to Inclusive Community Resilience)と題するシンポジウムにパネリストとして参加し、災害時に柔軟に対応できる地域、あらゆる世代を包摂する地域を実現する上での居場所の重要性と、そこに高齢者が主体的に関わることの意味についてディスカッション。
  • 2015年5月:空き地を借りることができたため、農園作りをスタート

Ibashoフィリピンの農園は地区の中心部であるホール(バランガイ・ホール)から徒歩で5分弱。地主の住宅の敷地内にあり、門を入ったところにあります。
農園は三方を壁に囲まれており、道路側には大きなバナナの木が何本かあります。バナナの木の奥は近くに住むメンバーの家からひいたという水道の蛇口
農園は土地を耕すところからメンバーで少しずつ、手作りで作られてきた場所です。2015年10月に訪問した時はオクラ、ウリが大きく育ち、収穫の時期を迎えていました。他にも唐辛子、トマト、ネギ、ショウガ、芋など様々な野菜が植えられていました。収穫した野菜はメンバーが購入し、それを活動資金に充てているとのことです。
バナナの木と反対側には種苗のために作られた東屋があり、「Ibashoガーデン/バゴング・ブハイの高齢者による、高齢者のための農園プロジェクト/高齢者は地域のリーダー」(IBASHO GARDEN / A Gardening Project for the Elders, by the Elders of Barangay Bagong Buhay / “OUR ELDERS ARE OUR LEADERS IN THE COMMUNITY”)と書かれた幕が貼られています。東屋の隣にはテーブルと椅子も置かれています。
この東屋の周りでは、メンバーが集まり話をしたり、食事をしたり、農園の作業の合間に休憩したりしている光景を見かけました。隣にはグアバの木があり、フィリピンの暑い日射しを遮ってくれる心地より木陰を作ってくれています。この時期、ちょうどグアバの実がなる時期のようで、穫ったばかりの実を食べさせていただきました。

Ibashoフィリピンでは、いずれ拠点となる場所を確保することが考えられています。農園はあくまでもプロジェクトの一環として行われているものですが、農園の東屋に集まっているメンバーを見ていると、この東屋も十分に拠点となる場所(日本で言うまちの居場所)となっていると感じました。これも具体的な場所がもつ力だと思います。

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(更新:2019年2月21日)