昨年、Ibashoフィリピンが活動するオルモック市のバゴング・ブハイ(Barangay Bagong Buhay)にてアンケート調査を行いました。
調査の目的はバゴング・ブハイにおける高齢者の暮らし、及び、2013年台風30号(台風ヨランダ)の影響の実態を把握することと、今後、Ibashoフィリピンの活動を進めていくにあたって、その意味や効果を把握するためのベースラインの情報を得ることです。
調査はIbashoフィリピンのメンバーの方にも協力いただいて実施したものであるため、Ibashoフィリピンのメンバーにも結果をお返ししておきたいと考えていました。
そこで今回の訪問時には、調査結果の概要についての資料を作成し持参しました。写真はIbashoフィリピンのメンバーが調査結果を見てくださっている様子です。結果について話をしたり感想を言ったりしながら、1項目ずつ丁寧に結果を見てくださいました。調査は地区の高齢者を対象として実施しましたが、若い世代にも調査したらいいかもしれないと提案もしてくださいました。
この様子を見ていて、地域の人と研究をする者との関係について次のようなことを感じました。
1点目は調査を依頼する/されるという関係の逆転について。通常、調査は研究者が地域の人に依頼して実施するもの。調査者である研究者と、調査対象者である地域の人の立場は明確に別れています。しかし、地域の方から若い世代にも調査したらいいかもしれないと提案してくださったように、自分たちの地域において意味あることであれば、地域の人の側から調査の提案があるということ。
2点目は誰が調査結果を利用するのかについて。通常は、対象とする地域から離れた中立的な存在(だと仮定されている)研究者が、統計など様々な手法を使って分析することになります。分析から一般的な法則を見出して、それを各地に「応用」していく。
しかし、この日の様子を見ていて、調査は地域の人と研究者とが関わりをもつためのメディアであり、調査結果は調査対象とした地域を良いものにしていく方法を、地域の人と研究者が一緒に考えていくためのツールにもなるのだと思いました。
この意見に対しては、そうであれば調査結果は対象とする1つの地域にしか及ばないのではないかという反論があるかもしれません。しかし、それぞれの地域で条件が異なるとすれば、一般的な法則を広く各地に「応用」していくというスタンスにも再考が求められるような気もします。
もちろん、従来の調査のあり方を否定するわけではありませんが、そうではない調査の可能性もあると思いますし、両者は両立できると思います。それは、今回の調査が学術的な論文にもなり、地域を良いものにしていく方法を考えるためのツールにもなるということです。