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千里ニュータウンの人口・高齢化率(2020年国勢調査)

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  • 人口・高齢化率などの統計データの見つけ方はこちらをご覧ください。

2020年国勢調査の「小地域集計」の結果が、2022年2月10日に公開されました。この結果をもとに、千里ニュータウンの人口、高齢化率などの推移を集計しました。

この記事では次の4つに分けて集計しています。

  • ①千里ニュータウンとして開発された12住区(吹田市域8住区+豊中市域4住区)
  • ②吹田市域8住区:佐竹台、高野台、津雲台、藤白台、古江台、高野台、竹見台、桃山台
  • ③豊中市域4住区:新千里北町、新千里東町、新千里西町、新千里南町
  • ④上新田

この記事で紹介しているデータは国勢調査の結果に基づくもので、具体的には次の資料に掲載されているデータを用いています。

  • 2015年までは『千里ニュータウンの資料集(人口推移等)』(吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議, 2017年10月1日)に掲載のデータ
  • 2020年は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計
  • 上新田は、2015年までの人口、世帯数は『豊中市統計書』に掲載のデータ、2020年の人口、世帯数、及び、全ての年の高齢化率、住民の年齢構成は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計。※上新田は、2020年国勢調査では「地域階層レベル:3」(1丁目〜4丁目の合計)と「地域階層レベル:2」に分けて掲載されているため、両者をあわせて集計
  • 日本の高齢化率は総務省統計局「1.高齢者の人口」に掲載のデータ

人口

千里ニュータウンは吹田市域8住区、豊中市域4住区の12住区で構成されています。計画人口、計画住戸数は、当初は人口15万人、戸数3万戸でしたが、実施段階では人口12万人、戸数3万7300戸に変更され、さらに建設末期の1971年5月時点では12万人、戸数4万戸に変更されました*1)。

千里ニュータウンのまち開きは1962年。吹田市域の佐竹台から入居が始まりました。①千里ニュータウンとして開発された12住区の人口の推移をみると、1975年という早い段階でピークの約13万人を迎えたことがわかります。この後、人口は徐々に減少し、2010年には8万9,220人になります。ピーク時の1975年から約4万人が減少したことになります。
その後、集合住宅の高層化を中心とする再開発によって人口は増加に転じ、2020年には再び10万人を超えました。
このような人口の変化は、②吹田市域8住区、③豊中市域4住区のいずれにも共通してみられます。

これに対して、④上新田の人口は増加し続けており、2020年には2万人を超えました。2万人という人口は、千里ニュータウンとして開発された住区の約2.5倍に相当し、上新田の人口のボリュームが大きくなっています。

世帯数

①千里ニュータウンとして開発された12住区の世帯数は、2010年までは4万世帯を超えることはありませんでした*2)。しかし、2015年以降は再開発により増加し、2020年には4万3,715世帯にまで増加しています。②吹田市域8住区、③豊中市域4住区のいずれも、2015年以降に世帯数が増加しています(※再開発による世帯の変化はこちらの記事も参照)。

これに対して、④上新田の世帯数は増加し続けており、2020年には8千世帯を超えました。8千世帯という世帯数は、千里ニュータウンとして開発された住区の2倍以上に相当し、世帯数という意味でも上新田のボリュームが大きくなっています。

一世帯当たりの人員

①千里ニュータウンとして開発された12住区の一世帯当たりの人員は、1970年時点では約3.6人でした。その後、近年の再開発にも関わらず減少し続け、2020年には約2.3人になっています。
一世帯当たりの人員は、②吹田市域8住区も減少し続けていますが、③豊中市域4住区では2010年以降、わずかに増加しています。

④上新田の一世帯当たりの人員は、1990年以降は減少し続けています。

高齢化率

日本全国の高齢化率は上昇し続けており、2020年には28.0%になりました。
①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率は、まち開き当初の住民の中心は若い世代だったため、全国平均を下回っていました。ところが、高齢化率は急激に上昇して、1990年代後半には全国平均を上回り、2010年には30.3%にまで上昇しました。
その後、再開発によって高齢化率の上昇のペースは弱まり、さらに、2015年から2020年にかけて0.5%低下しました。高齢化率が低下に転じたことは、②吹田市域8住区、③豊中市域4住区のいずれにもあてはまります。

ただし、注意が必要なのは高齢化率が低下したことは、高齢者数が減少したことを意味するわけではないことです。2010年〜2020年の高齢者数は次の通りであり、2020年には高齢者数が3万人を超えています。
・2010年:27,031人(89,220人の30.3%)
・2015年:29,636人(96,996人の30.6%)
・2020年:30,103人(100,135人の30.1%)

④上新田の高齢化率は上昇が続いていますが、それでも2020年時点で約20%と、全国平均を大きく下回っています。

住民の年齢構成

①千里ニュータウンとして開発された12住区について、2000年と2020年の住民の年齢構成のグラフを比べると、2000年時点では「60〜64歳」を中心とする世代の割合が最も大きく、「25〜29歳」を中心とする世代の割合が次に大きくなっていました。これに対して、再開発が進んだ2020年時点では「45〜49歳」を中心とする世代の割合が最も大きく、次に「70〜74歳」を中心とする世代、次に「5〜9歳」を中心とする世代と山が3つみられるようになりました。
このように、住民の年齢構成は年月の経過に伴い変化していますが、①千里ニュータウンとして開発された12住区の住民の年齢構成のグラフは、④上新田のグラフと比べた場合、いくつかの大きな山がみられるという特徴があります。

次に2000年、2010年、2020年の3つの年齢構成のグラフをみると、2000年時点では①千里ニュータウンとして開発された12住区と④上新田のグラフの形は大きく異なっていたのに対して、2010年、2020年と時間が経過するにつれて、両者のグラフの形が近づいていることがわかります。2020年時点では①千里ニュータウンとして開発された12住区と④上新田のいずれにおいても「45〜49歳」を中心とする世代の割合が最も大きいこと、「5〜9歳」を中心とする世代の割合も大きくなっていることが共通しており、近年再開発が急激に進む①千里ニュータウンとして開発された12住区と、一貫して開発が進められてきた④上新田の街のかたちが似てきたと言えるかもしれません。
しかし、①千里ニュータウンとして開発された12住区は、④上新田に比べると、75歳以上の世代(後期高齢者)の割合が大きいという違いがみられます。①千里ニュータウンとして開発された12住区の再開発が進み高齢化率が低下に転じたとは言え、高齢者数が減ったわけでないことはこのグラフにも現れています。


国勢調査の結果から、千里ニュータウンの人口、高齢化率などの推移をみてきました。重複する点もありますが、以上から次のことに気づかされます。

1点目は、近年の再開発の影響について。
集合住宅の高層化を中心とする近年の再開発が人口、世帯数に大きな影響を与えており、2020年時点で千里ニュータウンの人口は再び10万人を超えました。また、世帯数も約4万3千人と最大を更新しています。

2点目は、高齢化率と高齢者数について。
千里ニュータウンの高齢化率はまち開き以降に急激に上昇し、1990年代後半には日本全国の高齢化率を超えるようになりました。ところが、近年の再開発の結果として2015年から2020年にかけて、高齢化率はやや低下しました。高齢化率が低下したことは、近年、千里ニュータウンを歩くと子どもたちの姿を多く見かけるようになったことからも実感します。日本全国の高齢化率が上昇し続けているのに比べると、高齢化率が低下しているのは特異な地域だと言えるかもしれません。
ただし、高齢化率が低下したことは、高齢者数が減少したことを意味するわけではなく、高齢者数は増加し続けています。つまり、千里ニュータウンの高齢化率が低下に転じたことは、高齢者が地域でどう暮らすかという課題が解消されたわけでないことは忘れてはならないということです。

3点目は、上新田について。
上新田は千里ニュータウンの中央に位置しながら、ニュータウン開発前から存在した集落で、ニュータウンとしては開発されませんでした。計画という観点からは「計画除外地」という表現が使われることもあります。
千里ニュータウンがまち開きした頃、上新田の人口は少なかったのですが、その後、開発が行われ、2020年には人口が2万人を超えるようになりました。2万人という人口は、千里ニュータウンとして開発された住区の約2.5倍に相当し、上新田の人口のボリュームが大きくなっていることがわかります。

4点目は、住民の年齢構成について。
千里ニュータウンの住民の年齢構成は、大きな偏りがみられます。これは、まち開きの時に同じ世代が一斉に入居した結果です。近年、再開発が行われましたが、再開発の中心は集合住宅の高層化による戸数増加であり、新たな住戸に入居する(分譲マンションを購入する)世代が似ていることから、再開発が進められている2020年時点でも年齢構成の偏りは解消されてはいません。上に書いた通り、千里ニュータウンでは高齢化率が低下に転じましたが、住民の年齢構成の偏りが解消されていないため、数十年後には再び高齢化率が急激に上昇することが予想されます。
なお、住民の年齢構成に関して興味深いのは、近年再開発が急激に進む千里ニュータウンとして開発された住区と、一貫して開発が進められてきた上新田の年齢構成が、後期高齢者の割合を除けば似通ってきたことです。この傾向がいずれ進めば、数十年後には千里ニュータウンとして開発された住区と上新田との年齢構成の違いがみられなくなるかもしれません。


■注

  • 1)山地英雄『新しき故郷:千里ニュータウンの40年』NGS, 2002
  • 2)戸数と世帯数は同じではないが、2010年までは、4万戸という計画住戸数(建設末期の1971年5月時点の計画住戸数)が有効だったと考えることもできる。

(更新:2022年3月4日)