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千里ニュータウンの人口・高齢化率(2022年春)

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ニュータウン・スケッチでは、毎年、吹田市・豊中市の住民基本台帳による人口・世帯数のデータを用いて、千里ニュータウンの人口や高齢者などの情報を集計してきました。2022年春のデータが公開されていますので、千里ニュータウンの最新の人口・世帯数を集計しました。
この記事では次の4つに分けて集計しています。

  • ①千里ニュータウンとして開発された12住区(吹田市域8住区+豊中市域4住区)
  • ②吹田市域8住区:佐竹台、高野台、津雲台、藤白台、古江台、高野台、竹見台、桃山台
  • ③豊中市域4住区:新千里北町、新千里東町、新千里西町、新千里南町
  • ④上新田

データは、明記していないものは、吹田市・豊中市の住民基本台帳のデータを用いています(吹田市は3月31日、豊中市は4月1日時点のデータ)。

人口

上新田を含めた千里ニュータウンにおける近年の集合住宅の建替えラッシュにより人口は継続して増加してきました。2019年に①千里ニュータウンとして開発された12住区の人口が10万人を超えましたが、2022年ではさらに人口は増加し、103,455人となっています。
2022年の②吹田市域8住区の人口は66,883人、③豊中市域4住区の人口は36,572人となっています。一方、④上新田の人口は20,916人と前年よりわずかに減少しています。

世帯数

集合住宅の建替えにより世帯数は継続して増加しており、2022年には①千里ニュータウンとして開発された12住区の世帯数が48,093世帯となっています。②吹田市域8住区の世帯数は31,230世帯、③豊中市域4住区の世帯数は16,863世帯、④上新田の世帯数は9,041世帯と、いずれも近年の最大世帯数を更新しています。

一世帯当たりの人員

①千里ニュータウンとして開発された12住区の近年の一世帯当たりの人員は横ばいとなっており、2.15~2.2人の間を推移しています。④上新田の一世帯当たりの人員は2.3人と、①千里ニュータウンとして開発された12住区よりも多いものの、減少が続いており、10年前(2012年)の約2.4人からは0.1人の減少となっています。

高齢化率

長期の高齢化率の推移

まち開き当初は若い世代が多かったため、①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率は全国平均を下回っていましたが、1990年代後半に高齢化率は逆転。ただし、近年は集合住宅の建て替えラッシュにより若い世代が入居しているため、②吹田市域8住区、③豊中市域4住区の高齢化率はいずれも約30%と横ばいとなっており、2015年から2020年にかけてやや低下しています。
2020年の日本の高齢化率は28.0%であり、①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率は全国平均より3%ほど大きくなっています。④上新田の高齢化率は上昇し続けているものの、全国平均を下回っています。

※長期の高齢化率の推移は国勢調査のデータで、具体的には次の資料に掲載されているデータである。

  • 2015年までの高齢化率は『千里ニュータウンの資料集(人口推移等)』(吹田市・豊中市千里ニュータウン連絡会議, 2017年10月1日)に掲載のデータ
  • 2020年の高齢化率は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計
  • 上新田の高齢化率は国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計。※上新田は、2020年国勢調査では「地域階層レベル:3」(1丁目~4丁目の合計)と「地域階層レベル:2」に分けて掲載されているため、両者をあわせて集計
  • 日本の高齢化率は総務省統計局「1.高齢者の人口」に掲載のデータ

近年の高齢化率の推移

①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率はほぼ30%と横ばいですが、2019年以降は低下傾向にあり、2022年には約29.1%となりました。④上新田の高齢化率は、①千里ニュータウンとして開発された12住区に比べると小さいものの、継続して上昇しており、2022年時点で約20.0%になっています。

前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳~)を分けると、①千里ニュータウンとして開発された12住区では、2012年以降、後期高齢者の方が前期高齢者よりも大きな割合となっています。後期高齢者の割合は10年前は急激に上昇していましたが、近年は上昇が緩やかになり、2022年は前年より若干低下しています。一方、前期高齢者の割合は低下し続けています。④上新田は前期高齢者の割合も、後期高齢者の割合も小さいものの、後期高齢者の割合は急激に上昇し、2022年には約9.8%にま上昇しています。

住民の年齢構成

①千里ニュータウンとして開発された12住区について、2010年と2020年の住民の年齢構成のグラフを比べると、2010年では「60~74歳」を中心とする世代(ニュータウン第一世代)が最も大きな山、「35~44歳」を中心とする世代が次に大きな山となっていたのに対して、2020年は「45~49歳」を中心とする世代が最も大きな山になるという変化が見られます。近年の集合住宅の建て替えラッシュの結果がここにも現れています。②吹田市域8住区、③豊中市域4住区にも、同じ傾向が見られます。

一方、④上新田の住民の年齢構成は、若い世代が大きな山になっています。最も大きな山は2010年では「35~39歳」を中心とする世代、2015年では「40~44歳」を中心とする世代、2020年では「45~49歳」を中心とする世代というように、時間の経過とともにグラフの山は右側に移動しています。
こうした変化により、2020年時点では②吹田市域8住区、③豊中市域4住区、④上新田のいずれにおいても「45~49歳」の人口が最も多くなっています。

まとめ

以上の結果から次のように考えることができます。

近年の集合住宅の建替えラッシュにより人口は増加し続けており、2019年には①千里ニュータウンとして開発された12住区の人口が10万人を突破。2022年にはさらに人口が増加しています。人口が減少している地域が多い中、人口が増加している千里ニュータウンは恵まれていると言えるかもしれませんが、次の点は見落とせません。

1点目は、高齢者について。
集合住宅の建替えラッシュにより、千里ニュータウンでは若い世代を見かける機会が多くなりました。建物も新しくなり、一見すると千里ニュータウンが若返ったように見えます。
ただし、高齢化率は日本の平均を上回っており、千里ニュータウンが高齢者にとっての暮らしの場所でもあることに変わりはありません。

2点目は、年齢構成の偏りについて。
千里ニュータウンとして開発された12住区の年齢構成は、2020年時点で「45~49歳」を中心とする世代、「70~74歳」を中心とする世代、「5~9歳」を中心とする世代と、世代のグラフでは3つの山ができていますが、ニュータウンとして開発されなかった上新田と比べると、年齢構成には偏りが見られます。これは、半世紀前のまち開き時にも、近年の建替えラッシュでも、同じ世代の人々が一斉に入居したことの結果。近年入居しているのは分譲マンションの購入者が多く、(賃貸に比べて)長期にわたり住み続けることを考えると、今から20~30年後にはまた高齢化が急速に進むことが予想されます。
近年の再開発は、中層の住棟を高層の住棟に建て替えるという方法で進められてきました。しかし、高層の住棟をさらに高層化することは困難であることから、次の再開発に同じ方法を使うことはできない。20~30年後には、高齢化が急速に進み、かつ、同じ方法での再開発も難しいという状況になると思われます。
千里ニュータウンは、色々な地域から集まってきた人々によって作りあげられた街です。現在の価値観から見れば男女の不平等ということになるかもしれませんが、ニュータウン第一世代では専業主婦である女性が地域を守り、作りあげてきた。この蓄積が、例えばコミュニティ・カフェの「ひがしまち街角広場」につながっており、高齢者の暮らしをサポートする拠点となっています。それに対して現在の若い世代は共働きであり、かつ、ベッドタウンである千里ニュータウンにはほとんど職場がないため、男性も女性も昼間地域を留守にする傾向がある。近年では新千里北町のつつじマルシェのように、仕事を持っている若い女性を中心とする住民が主催する興味深い活動が生まれているものの、多くの若い世代は男性も女性も昼間地域を留守にする傾向があることには変わりません。さらに、近年では定年延長もあり、より長い期間働く人が増えています。何歳になっても働けることは好ましいことですが、それでは、誰が地域を担っていくのか。これは大きな課題ですが、根本的には千里ニュータウンでどう働くか、言い換えれば、千里ニュータウンがベッドタウンからどう変わっていくかを考えていくことが必要になると思います。
ただし、この状況は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機としてテレワークが普及すれば変わっていく可能性があります。アフターコロナにおいて、千里ニュータウンがこれまで通りベッドタウンであり続けるのか、あるいは、テレワークの普及により職住近接の街という性格を強めるのかは、引き続き注目したい点です。

3点目は、千里ニュータウン開発時に採用した近隣住区論をどう現状にあわせるかについて。これは、上新田との関わりと学校に現れています。
上新田は千里ニュータウンの中央に位置しながら、千里ニュータウン開発前から存在した集落の中心部であり、千里ニュータウンとしては開発されませんでした(計画という観点からは「計画除外地」という表現が使われることもあります)。人口推移のグラフからは、上新田の人口が、ニュータウンとして開発された住区の約2.5倍になっていることがわかります。
近隣住区論に基づいて計画された千里ニュータウンでは、1住区に1小学校、2住区に1中学校が基本とされたことに現れているように、小学校、中学校が大きな意味を持っています。豊中市域では、新千里北町・東町の2住区の子どもは第八中学校に、新千里西町・南町の2住区の子どもは第九中学校に通学する計画が立てられました。この計画には上新田は入っていませんが、当初は上新田の人口も少なかったため、大きな影響はないと想定されていたと思われます。しかし、現在では上新田の人口は増加しており、上新田の子どもは第九中学校に通学することになっています。そのため、第八中学校の生徒数が273人に対して、第九中学校の生徒数は992人(※2021年5月1日現在の生徒数。『令和3年豊中市統計書』より)と生徒数は約3.5倍もの開きが生じており、千里ニュータウン内の隣り合う中学校であるにも関わらず教育環境が大きく異なっています。また、近年の千里ニュータウンでは公立の中学校でなく私立の中学校に進学する子どもも多くなっています。先に、現代の若い世代は共働きであるため男性も女性も地域を留守にする傾向があると書きましたが、私立の学校に通う子どもたちも昼間地域を留守にしていると捉えることも可能です。こうした状況において、小学校、中学校は近隣住区論においてどのような場所であるのかを再考することも求められていると考えています。