現在、空港では海外からの(日本人を含む)入国者に対して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の水際対策の強化として、PCR検査の実施、14日間の待機場所と空港からの移動手段のチェック、指定の待機場所への送迎などの措置がとられています。
先日、関西国際空港から入国したことで、空港でどのような水際対策が行われているかを実際に経験しました。検疫所の職員の方々は丁寧に対応してくださったのですが、実際に水際対策を経験するといくつか気づいたことがあります。
以下は、「このようにすれば水際対策が少しでも改善できるのではないか?」という個人的な提案をまとめたものです。公衆衛生や検査自体ではなく、他者との物理的な接触、人の移動など空間に関わる内容の提案となっています。
的外れの提案だとしても、丁寧に対応してくださった検疫所の職員の方々や入国者の負担の軽減、感染リスクの軽減を実現するために、入国を実際に経験した者ができることだと思い、個人的提案としてメモしておくことにしました。
空港における水際対策を改善するための個人的提案
デジタル化により物理的接触を減らす
新型コロナウイルス感染症の感染防止としてフィジカル・ディスタンシング(ソーシャル・ディスタンシング)という表現が用いられているように、他者との物理的な接触を減らすことは、感染防止として有効です。
空港における水際対策では、次のような紙の書類が配布され、記入や内容のチェックが行われました。
- 機内で配布される「検疫に関する書類」(現在の健康状態、14日間の滞在場所、滞在場所への移動手段などを記入)
- PCR検査の結果が判明するまでに滞在するホテルの部屋番号を記入した紙片
- PCR検査が「陰性」であったことを示す印鑑入りの証明書
紙の書類は記入しやすい、ネットがなくてもどこでも記入できるというメリットはありますが、記入された内容を確認したり、渡したりするためには検疫所の職員と入国者が物理的に接触しなければならず、感染のリスクとなります。
そこで検疫に関する書類についてはデジタルを基本とし、デジタル機器の扱いに慣れていない人/使えない人には紙の書類を用意するという対応をするのはどうかと思います。飛行機に乗った後に、現在の健康状態、14日間の滞在場所、滞在場所への移動手段などを記入する「検疫に関する書類」が配布されることに起因して紙ベースになっているとすれば、次のような対応ができそうです。
つまり、入国のために必要な情報を集約したポータルサイトを開設。入国予定者はこのポータルサイトでアカウントを作成した上で、飛行機に搭乗する前に「検疫に関する書類」に記入する内容を入力しておく。デジタル化しておけば、検疫所の職員は離れた場所にいても内容のチェックができますし、通話やチャットなどで質問することもできます。
そして、空港におけるPCR検査の検体の番号、結果が判明するまでに滞在するホテルの部屋番号、PCR検査の結果など必要な情報を(QRコードなども活用して)全てこのアカウントに紐付けていく。そうすればホテルの部屋番号、PCR検査の結果もスマートフォンの画面で表示することも可能となり、紙の書類のやり取りが不要になります。これによって、検疫所の職員と入国者との物理的接触はかなり軽減されると思います。
個人情報を保護するために、ポータルサイトのアカウントはマイナンバーとは紐付けず、帰国後14日が経過するとデータが自動的に消去される仕組みにした方がよいと思います。また、パスポートやビザによる入国審査は別途行われるため、このアカウントは新型コロナウイルス感染症の水際対策に特化した内容になっていればよいと思います。
※2020年12月末から「新型コロナウイルス感染症対策質問票」が紙の書類ではなく、「質問票Webとしてウェブサイトで回答する形式に変更されてます。飛行機に搭乗する前に「質問票Web」に入力を済ませておく、あるいは、搭乗する前にダウンロードし機内で入力すると、QRコードが発行。QRコードの画面、あるいは、QRコードを印刷したものを日本の空港に到着後、検疫官に提示するということです。なお、スマートフォンやタブレットを持っておらずQRコードを発行できない場合は、日本の空港に設置されたパソコンでの入力も可能ということです。詳細はこちらを参照。
人溜りを作らないことで物理的接触を減らす
関西国際空港では、空港に到着してから、PCR検査を受け、指定の待機場所に移動するまでに次のような流れで行動しました。
- ①飛行機で空港に到着【集団】
- ②「検疫に関する書類」のチェック【個別】
- ③PCR検査【個別】
- ④バスによる指定の待機場所(ホテル)への移動【集団】
- ⑤バスを下車し、指定の待機場所(ホテル)の部屋への移動【個別】
①が集団行動であるのは当然ですが、その後、②③⑤は1人あるいは1家族ごとの個別対応がなされました。しかし、その間の④が集団行動であったため、待合エリアとバスで次のような人の溜まりが生じていました。
- 待合エリア:先にPCR検査を終えても、20人ほどがPCR検査を終えるのを待つ必要がある(③と④の間に約30分)
- バス内:前の人が定の待機場所(ホテル)の部屋に移動するのを待つ必要がある(④と5の間に約1時間)
もしも④の部分、つまり、空港から指定の待機場所(ホテル)への移動がバスによる集団行動でなければ、②〜⑤を通しての個別行動となり、上にあげた人の溜まりが解消され、物理的接触の軽減になると思います。
具体的な対応として、バスでなく、より小型のサイズの車両の利用が考えられます。車両は運転席と客席の間をアクリル版などで仕切ったり、消毒を徹底したりするなど感染防止対策を徹底します。
結果判明までは指定場所で待機
現在、入国者がどこで14日間待機するか、どのタイミングで待機場所に移動するかは大きく分けて3つのパターンがあります。
- ①空港でPCR検査を受け、結果を待たず自宅に移動する。
- ②空港でPCR検査を受け、「陰性」が判明してから自宅に移動する。
- ③空港でPCR検査を受け、「陰性」が判明してから自身で手配したホテル、民泊(AirBnB)、ウィークリーマンションなどに移動する。
この場合、②と③の感染防止対策を厳重にしても、PCR検査の結果が判明する前に自宅に移動する人がいれば片手落ちではないかと思います。このことは個人的提案というほど大袈裟なことでなく、容易に気づくことで、実際、関西国際空港でもこのことを話している人がいました。
①の人も感染防止を徹底して行動されていると思いますし、「陽性」だった場合の検疫所によるフォローも徹底されているとは思いますが、検査結果が判明するまでは、指定の待機場所(ホテル)で待機することを原則にすべきではないかと思います。
ホテルを指定の待機場所として借り上げるためには費用もかかりますが、こうした措置にこそ、「Go To Travelキャンペーン」の予算を充てれないものかと考えています。
地方出身者への支援
入国した人は、帰国から14日間は自宅、あるいは、自身で手配したホテルなどでの待機が求められますが、自宅やホテルなどへの移動は、鉄道、バス、タクシー、航空機(国内線)、旅客船を含む公共交通機関の利用が不可とされています。国際線が発着する空港の近くに住んでいる人(大都市の人)は送迎してもらったり、レンタカーを運転したり、ハイヤーを利用することが容易かもしれませんが、地方の人にとってこれは大きなハードル。この大きなハードルにより、帰国を躊躇しているという声も聞きます。
(京都に実家のある者が言うのは躊躇されますが)地方創生が言われる中で、大都市の人のことしか考えていない政策だと言われてもやむを得ません。政策の立案者は大都市の人(東京の人)ばかりで、地方のことを考えていないという意見もあります。
これに対して名案はありませんが、例えば次のようなことを考えることができます。
- 14日間、自身で手配したホテルなどに待機する場合、宿泊費は「Go To Travelキャンペーン」の予算を使って補助する。
- PCR検査で「陰性」だった人が地方に移動するのをサポートするため、(一般の人が乗らない)特別便を地方の空港に飛ばす。特別便の運行にも「Go To Travelキャンペーン」の費用を充てる。
他にもあるかもしれませんが、「Go To Travelキャンペーン」の予算を上手く活用できないものかと思います。
来週から始まる「Go To Travelキャンペーン」には、感染拡大につながると多くの批判が寄せられています。元々、「Go To Travelキャンペーン」は新型コロナウイルス感染症により打撃を受けた業界を支援するために行われるものですが、ホテルを指定の待機場所として借り上げる、14日間の待機場所の宿泊費とする、地方空港への特別機を運行するなどの措置によって、結果としてホテルや航空会社にお金が回っていくとすれば、「Go To Travelキャンペーン」の本来の趣旨から逸れた使途ではありません。
(更新:2021年1月5日)