『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

ワシントンDCによる新型コロナウイルス感染症に対応するためのガイダンス:物理的な距離と社会的な接触の確保

アメリカのワシントンDCでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応として、2020年3月30日に外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が発令されました(4月1日午前0時1分から発効)。

それから約2ヶ月後の5月29日に外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)が解除され、「Stay at Home Light」(軽い自宅待機)へと移行しました。これにより少しずつ社会を再開していく動きが進んでいきますが、DC政府は市民向けのためのガイダンス「コロナウイルス2019(新型コロナウイルス感染症):市民のための一般的なガイダンス」(Coronavirus 2019 (COVID-19): General Guidance for the Public)を公表しています。

一方、日本でも厚生労働省が「新しい生活様式」を公表しています。
DC政府のガイダンスと厚生労働省の「新しい生活様式」を同列で比較するのは適切ではなく、また、両者の優劣を論じるものでもありませんが、両者を比べることでDC政府のガイダンスの特徴が浮かびあがってくるように感じます。

物理的な距離の確保

DC政府のガイダンスと「新しい生活様式」には、感染防止のために居合わせた他者との距離を確保すること、マスクを着用すること、人混みを避けること、通信販売や配達サービスを利用することなどが記載されており、フィジカル・ディスタンシング(Physical Distancing)として物理的な距離を確保することが書かれていることは共通しています。

社会的な接触の確保

感染防止の視点は両者に共通していますが、DC政府のガイダンスには、「新しい生活様式」には見られない次のような内容が記載されています。

  • 情報、医療サービス、サポート、リソースへのアクセスが必要な場合に備えて、自身や家族が連絡できる地域の組織のリストを作成しておく。
  • 不在中に子どもやペットの世話をしてくれる人を含め、緊急時の連絡先リストを作成しておく。
  • 自分を含め、家族の心の健康(emotional health)に気をつける。電話やEメールで他の人と連絡を取り合う。
  • DCのHomeland Security and Emergency Management Agency(HSEMA)からの最新情報を受け取るため、

  • https://hsema.dc.gov/」のAlertDCにサインアップ(メールアドレスを登録)する。
  • 病気で、リスクが高い場合は、医療供給者(healthcare provider)に相談する。

※DC政府による「Coronavirus 2019 (COVID-19): General Guidance for the Public」(Last Updated: May 25, 2020)の翻訳

地域の組織や子どもやペットの世話をしてくれる人のリストを作成すること、心の健康を保つため電話やEメールで連絡を取り合うこと、行政からの最新情報を受け取ること、医療供給者に相談することは、社会的な接触(ソーシャル・コンタクト)を維持する視点だと捉えることができます。


新型コロナウイルス感染症の感染防止のためには、なるべく外出しないこと、外出時には居合わせた他者と距離をとることというように、物理的な距離を確保することが大切だとされています。もちろん感染防止は重要ですが、これだと社会的な接触(ソーシャル・コンタクト)が失われ、他者との社会的な距離(ソーシャル・ディスタンス)が大きくなってしまう。
こうした状況に対して、DC政府のガイダンスには社会的な接触(ソーシャル・コンタクト)を確保するという視点が見られる。つまり、DC政府のガイダンスは、物理的な距離を確保すること(フィジカル・ディスタンシング)と社会的な接触(ソーシャル・コンタクト)を確保することの両方の視点を持つという特徴があることがわかります。

以下ではDC政府のガイダンスの内容をご紹介したいと思います。

コロナウイルス2019(新型コロナウイルス感染症):市民のための一般的なガイダンス


以下はDCの一般市民が、他の個人、家族、コミュニティを守るために従うべき推奨事項です。定期的に「https://coronavirus.dc.gov/」を確認し、最新の情報を入手してください。

家庭の行動計画を作成する

  • 情報、医療サービス、サポート、リソースへのアクセスが必要な場合に備えて、自身や家族が連絡できる地域の組織のリストを作成しておく。高齢者や慢性的な健康状態にある人など、リスクが高い可能性がある家族のことを考えておく。高齢者や慢性的な健康状態にある人のためのガイダンスは「https://coronavirus.dc.gov/」で入手できる。
  • 不在中に子どもやペットの世話をしてくれる人を含め、緊急時の連絡先リストを作成しておく。
  • 家の中で、可能な限り病気の家族を他の家族から隔離するための部屋やエリアを決めておく。
  • 医療供給者(healthcare provider)に連絡して、手元に置いておく余分の必要な薬の入手について問い合わせる。通信販売や薬局の配達サービスの利用を検討する。
  • 発熱などの症状に対応できる市販薬や医療品(ティッシュなど)を用意しておく。ほとんどの人は、自宅で新型コロナウイルス感染症から回復することができる。
  • 十分な日用品や食料品を用意し、自分や家族の誰かが病気になった時に自宅待機する必要がある場合に備える。買物の時は、必要な物だけ購入し、買いだめしないようにする。
  • 自分を含め、家族の心の健康(emotional health)に気をつける。電話やEメールで他の人と連絡を取り合う。
  • https://coronavirus.dc.gov/」をチェックし、DCの市民のためのリソースを見つける。
  • DCのHomeland Security and Emergency Management Agency(HSEMA)からの最新情報を受け取るため、「https://hsema.dc.gov/」のAlertDCにサインアップ(メールアドレスを登録)する。

新型コロナウイルス感染症の拡散を止める

  • 家を出る時やパブリックスペースに入る時は、布製のフェイスカバーを着用する。
  • 布製のフェイスカバーを着用できない場合は、咳やくしゃみをティッシュペーパーで覆い、ティッシュはゴミ箱に捨て、手を洗う。
  • 洗っていない手で目、鼻、口に触れない。
  • 石鹸と水で頻繁に手を洗う、または、アルコール度数が60%以上で市販の(自分で作らないこと)ハンドサニタイザー(手指消毒剤)を利用する。
  • ソーシャル・ディスタンシングの実践を続ける。布製のフェイスカバー着用に加えて、他の人と6フィートの距離を確保し、大勢の人混みや集まりに近づかないようにすることで、新型コロナウイルス感染症の拡散を抑制することができる。
  • 頻繁に触る物や表面を、少なくとも1日に1回は清掃、消毒する。消毒する前に、石鹸と水で目に見える汚れを落とす。詳細は「https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prepare/cleaning-disinfection.html」を参照。

自分の健康状態のチェック

  • 新型コロナウイルス感染症の症状に注意する。症状には咳、息切れ、呼吸困難、発熱、悪寒、倦怠感、筋肉や体の痛み、頭痛、喉の痛み、経験したことのない味覚や嗅覚の喪失、鼻づまりや鼻水、吐き気、嘔吐、下痢などがある。

症状が出た場合

  • 病気で、リスクが高い場合は、医療供給者(healthcare provider)に相談する。事前に連絡し、医療供給者(healthcare provider)に症状を伝える。
  • 個室に滞在したり、別のバスルームを利用したりすることで、他の人との接触を可能な限り少なくする(少なくとも6フィートの距離を確保する)。身の回りの物を共有しない。
  • 出勤しない。可能であれば、病気休暇、または、テレワークを行う。
  • 公共交通機関、ライドシェア(※訳者注:UberやLyft)、タクシーを利用しない。
  • 呼吸困難、息切れ、持続的な胸部の痛みや圧迫感、経験したことのない意識障害や起き上がれない状態、唇や顔の青ざめなどの緊急事態が発生した場合は911に電話する。

上記のガイドラインは、状況の変化に応じて更新され続ける。最新の情報は「https://coronavirus.dc.gov/」を定期的に参照。

(翻訳ここまで)