『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

ミルトン・キーンズ:拡大し続けるイギリス最大のニュータウン

先日ご案内した通り、10月8日、東京都北区の赤羽台団地で人間・環境学会(MERA)の第94回研究会「団地・ニュータウンの記憶を引き継ぐこころみ」が開かれます。

この研究会では「欧米の計画住宅地のアーカイブ」と題して、アメリカのグリーンベルトと、イギリスのミルトン・キーンズという2つの町のアーカイブ・プロジェクトについて紹介させていただきます。グリーンベルトについては何度かご紹介してきましたが、ミルトン・キーンズについては紹介したことがありませんので、ミルトン・キーンズについてご紹介したいと思います。


ミルトン・キーンズはイギリスで開発された33のニュータウンの1つ。ミルトン・キーンズのエリアがニュータウンに指定されたのは1967年。千里より5歳若いニュータウンです。
ミルトン・キーンズは、イギリスのニュータウンの中では後期の最大規模のもので、計画人口は25万人。開発面積は8,900ha。千里ニュータウンは計画人口が15万人、開発面積が1,160ha。千里ニュータウンの人口密度が約130人/haであるのに対して、ミルトン・キーンズは約28人/haとかなりゆったりとしています。
千里ニュータウンは大阪から12kmと都市に近接していますが、ミルトン・キーンズはロンドンから80kmも離れており、自立した都市。「ニューシティ(New City)」と呼ばれることもあります。

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丘の上から撮影した写真をみると、千里ニュータウンに比べてゆったりとした人口密度であることがわかります。

こちらはミルトン・キーンズの人口の推移。千里ニュータウンの人口はまちびらきから15年弱で最大に達し、その後は減少傾向にありますが(近年の建替えで再び増加傾向がみられます)、それに対して、ミルトン・キーンズの場合、1967年にニュータウンとして指定されてからずっと人口が増え続けています。計画的に住戸が供給され続けており、今後も供給され続けることが予定されている、ということです。

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*『Milton Keynes Population Bulletin 2010/2011』をもとに作成。2009年まではTable 1: Past Population Growth、2010年以降はTable 8: Future Population Growthに掲載されている人口。グラフ中の「City」がニュータウンとして指定されたエリアの人口。

このように継続して住戸が供給され続けているミルトン・キーンズの人口ピラミッドは次のようになります。

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*ミルトン・キーンズは2001 Censusを、千里ニュータウンは2000年国勢調査の結果をもとに作成。

いずれも10年前のデータですが、ミルトン・キーンズと千里ニュータウンの違いはグラフを見ると明らか。ミルトン・キーンズは若い世代の割合が多いことと、千里ニュータウンのように人口ピラミッドに山・谷が明確でないことが特徴です。


話は少し逸れてしまいますが、統計資料について。ミルトン・キーンズの人口のグラフを作成するためにネットで検索しましたが、簡単にデータを見つけることができました。
千里ニュータウンの人口もネットで調べることはできますが、千里ニュータウンのグラフを作ろうとすると、吹田市と豊中市の両市のホームページを調べて、該当する住区の人口を抜き出し、それを合わせるという加工が必要なため、実はミルトン・キーンズの人口のグラフを作る方が簡単だったりします…
言語の問題はおいておくとしても、海外の方がちょっと千里ニュータウンの人口を調べてみようかと思ったとしてもハードルは高いと思います。以前も同じようなことを書きましたが、千里ニュータウンというまとまりに焦点をあてることに意味があるとすれば、やはり、千里ニュータウンというまとまりで統計資料を収集し、公開するような仕組みが必要ではないかと感じます。

(更新:2015年5月31日)