千里中央の商業施設のセルシーが、2019年5月31日をもって商業施設としての営業を終了することが発表されました。
セルシーは1972年にオープンした商業施設で、スーパーマーケット、飲食店、衣料品に加えて、プールもありました。屋外のセルシー広場は新人歌手の登竜門としてその名が知られており、これまでにライブ、コンサートをしたアーティストには川中美幸(1990年)、岩崎宏美(1983年)、ビリーバンバン(1989年)、松浦亜弥(1999年)、AKB48(2006年)、きゃりーぱみゅぱみゅ(2012年)など錚々たる顔ぶれが並んでいます。セルシーは単なる商業施設ではなく、重要なレジャー施設でもありました。
中央の広場を囲むように段々にテラスを配置した形態も、当時は先進的だったと思われます。
セルシーは2016年の年末から、賃貸契約が更新されないことで、賃貸契約の切れたテナントの退去により、次々に空き店舗になるという状態になっていました。
「大阪府豊中市の千里ニュータウンの中心部にあり、1972年にできた大型商業施設「セルシー」の半数近い店舗が、年末で閉店する。所有者側は賃貸契約を更新しない姿勢を示しており、来春以降さらに立ち退く店が増える可能性がある。所有者側から事情説明はなく、関係者は困惑している。
・・・(中略)・・・
店舗の半数強が年末までの定期契約で、契約が切れれば空き店舗になる。他の店舗は正当な理由がないと契約を破棄できない普通契約だが、所有者側は解約を迫る構えで、今後、各店と管理会社が交渉に入る見通しという。管理会社の阪急阪神ビルマネジメントの担当者は「現時点で取り壊しなどは決まっていない。当社は委託を受けている立場で、今後の計画は知らない」と説明。信託の受益者になっている合同会社が所在する会計事務所の担当者は「取材には応じられない」としている。
*吉村治彦「ローマ風建築のSC、揺れる年末 退店続々、困惑広がる」・『朝日新聞』2016年12月20日
こうした状態で営業が続けられていましたが、2018年6月18日(月)に発生した大阪府北部地震の影響で、セルシーは営業が見合わされることに。その後、6月20〜21日にかけて実施された応急危険度判定の結果をふまえ、安全が確認された部分では一部店舗の営業が再開。一方、天井の落下、壁の剥落、ひび割れなどの被害が見られる部分は立入禁止とされました。立入禁止となったのはセルシー広場、「2階貫通道路」(千里中央から新千里東町の長谷南橋へ抜ける通路)、4〜6階のフロアです。
その後、セルシーは耐震強度が十分でないことから取り壊され、隣接する千里阪急と一帯で再開発されることが発表されています。そして今回、商業施設としての営業を終了するという発表がなされました。
セルシー内に掲示された案内には次のように記載されています。
商業施設の閉館のご案内
(閉館後も営業継続予定の店舗がございます。下記をご覧ください。)
平素は商業施設セルシーをご利用頂きまして誠にありがとうございます。商業施設セルシー(以下「弊施設」といいます。)は1972(昭和47)年に開業し今日までの47年間商業施設として営業してまいりました。
しかしながら、建物の老朽化も進み、耐震改修促進法等の求める耐震性能を満たしていないことや、昨年6月の大阪北部地震による建物影響があったため、セルシー広場や上層階の一部を閉鎖しておりました。
そのようなことから、この度、弊施設は、2019年5月31日をもちまして、閉館することといたしました。
永きにわたりご愛顧いただきましたことを感謝申しあげるとともに、閉館につきご理解のほど宜しくお願い申しあげます。これにより、弊施設内の自由通路等も6月1日以降は通り抜けができなくなります。
ご不便とご面倒を お掛けしますが、何卒、ご理解とご了承を賜りますよう宜しくお願い申しあげます。
また、千里中央駅・長谷南橋等、各方面への迂回路は、別掲のほか、セルシーHPや幣施設内の掲示文にも掲載しております。
今後、テナントの退去等により閉鎖する通路が、追加、変更することがございますので、最新の状況をご確認頂くようお願いします。また、隣接する千里阪急と弊施設との一体開発検討につきましては、現在も検討中であり、今後も取り組んでまいる所存ですので、引き続き、ご理解・ご協力のほど、宜しくお願い申しあげます。
先日のセルシーの様子です。
現在、人工地盤になっている2階のデッキ部分(ただし、「2階貫通道路」を除く)、1階のセルシー広場周辺には入ることができますが、3階以上へは立入禁止となっています。
地下1階〜2階の建物内は立入可能なエリアもありますが、ほとんどの店舗が既に営業を終了したためガランとしています。
そして、商業施設としての営業が終了する2019年6月1日からは、立入可能なエリアが大幅に制限されることが案内されています。
ただし、居酒屋、パチンコ屋、学習塾などいくつかのテナントは2019年6月1日以降も営業を継続するとのことです。
まだ運営を続けている店舗があるということは、オーナー側の意向とテナント側の意向が合致していないことの表れかもしれません。
セルシーは民間の施設である以上、オーナーの意向が優先されるのは当然かもしれません。ただし、千里ニュータウンとしてどのような街にしたいのか? そのためにどのような施設が必要なのか? を考える主体が存在しないこと、そのような議論をして街を作っていく場がないことが、(セルシーだけに限らず)今の千里ニュータウンが抱える根本的な問題のような気がします。
商業施設としての営業が終了した翌日、2019年6月1日にセルシーを通りかかりました。事前に案内されていた通り、自由通路等への立入もできなくなっていました。
思い出の場所を眺めておられたのか、セルシーの方をじっと眺めている方、写真を撮影している方を何人か見かけたのが印象に残っています。
(更新:2019年6月2日)