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千里ニュータウンの高齢化率と高齢者数(2020年春)

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千里ニュータウンの近年の高齢化率はほぼ30%と横ばいとなっています。高齢者を前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳~)を分けると、前期高齢者の割合は低下し、後期高齢者の割合は上昇する傾向が見られます。

ただし、割合にすることで見えなくなることがありますので、千里ニュータウンの高齢化率と高齢者数についてもう少し詳細に見ていきたいと思います。

以下は吹田市と豊中市の住民基本台帳のデータ(吹田市は3月31日、豊中市は4月1日時点のデータ)に基づくもので、次の4つに分けて集計しています。

  1. 千里ニュータウンとして開発された12住区(吹田市域8住区+豊中市域4住区)
  2. 吹田市域8住区:佐竹台、高野台、津雲台、藤白台、古江台、高野台、竹見台、桃山台
  3. 豊中市域4住区:新千里北町、新千里東町、新千里西町、新千里南町
  4. 上新田

千里ニュータウンの高齢化率と高齢者数の推移

上に書いた通り、千里ニュータウンの近年の高齢化率はほぼ30%と横ばいになっています。ただし、このことは高齢者数が一定であることを意味しません。
近年、千里ニュータウンは集合住宅の建て替えラッシュにより人口が増加し、2019年には①千里ニュータウンとして開発された12住区の人口が10万人を超えました。それに伴い、高齢者数も増加。2010年から2020年までの10年間で高齢者数は次のように変化しています。

  • 前期高齢者数:14,616人(2010年)→11,898人(2020年):0.81倍
  • 後期高齢者数:12,342人(2010年)→18,347人(2020年):1.49倍
  • 高齢者数:26,958人(2010年)→30,245人(2020年):1.12倍

前期高齢者数が減少しているのに対して、後期高齢者数は約1.5倍になっていることがわかります。②吹田市域8住区、③豊中市域4住区だけを取り出しても同じ状況が見られます。

一方、④上新田は高齢化率が上昇し、さらに、総人口も増加しており、2010年から2020年までの10年間で高齢者数は次のように変化しています。

  • 前期高齢者数:1,542人(2010年)→2,210人(2020年):1.43倍
  • 後期高齢者数:917人(2010年)→1,844人(2020年):2.01倍
  • 高齢者数:2,459人(2010年)→4,054人(2020年):1.65倍

前期高齢者数は約1.4倍、後期高齢者数は約2倍といずれも大きく増加していることがわかります。

住区ごとの高齢化率と高齢者数の推移

①千里ニュータウンとして開発された12住区の高齢化率は約30%ですが、住区によって高齢化率は異なることがわかります。
高齢化率が約39%の高野台、約36%の青山台、約35%の竹見台と高齢化率が大きい住区もあれば、約23%の津雲台、約25%の新千里西町、約28%の藤白台と高齢化率が小さい住区もあり、高野台と津雲台とでは約16%もの開きがあることがわかります。

一方、高齢者数のグラフからはまた別の姿が浮かび上がってきます。新千里南町、古江台、新千里東町というように約3,000人もの高齢者が住む住区があるのと同時に、高齢化率が小さい上新田にも約4,000人の高齢者が住んでいることもわかります。
前期高齢者はまだ元気な人が多い反面、後期高齢者になると介護などのサポートが必要になる人が増え始めると言われることがありますが、ここにあげた新千里南町、古江台、新千里東町、上新田は約2,000人の後期高齢者がお住まいであることもわかります。


今から20年ほど前、千里ニュータウンに対してオールドタウンという言い方がなされていました。

「千里ニュータウンは昭和30年代に始まった大阪都市圏への人口集中に伴う住宅需要に対応するために、昭和35〜45年の約10年間に、大阪都心から北へ約15kmの吹田市・豊中市にまたがる千里丘陵(1,160ha)に建設された計画人口15万人のわが国最初の大規模ニュータウンです。道路・公園などの都市基盤の整った街を計画的に実現したことにより、わが国のその後の都市開発のモデルになりました。しかし、まちびらき(昭和37年)から約40年が経過し、人口の減少と高齢化、住宅・施設の老朽化、近隣商業地区の低迷などの問題を抱え、「今やニュータウンはオールドタウンである」と言われるように、様々な課題への対応が必要になっています。」
※山本茂 宮本京子「千里ニュ-タウンにおける取り組みと展望:「歩いて暮らせる街づくり」から」・『地域開発』Vol.444 2001年9月

集合住宅の建て替えを始めとする再開発により見た目が新しくなったためか、高齢化の傾向に歯止めがかかったためか、近年ではオールドタウンという表現は見かけないようになりました。

けれどもここで見たように、高齢者数、その中でも、介護などのサポートが必要になる人が増え始めると言われる後期高齢者の人数が増加し続けています。
高齢化率という指標が重要であることに違いありませんが、街に暮らしているのは、割合として抽象化できない、一人ひとりの高齢者。高齢者が各住区に2,000〜3,000人、後期高齢者が1,000〜2,000人もお住まいであることは忘れてはならない視点です。

このような人数に対応するための場所や施設が、各住区の近隣センターや、千里中央・南千里・北千里の地区センターにどのくらい存在するのか、対応するために近隣センターや地区センターはどうあればよいのかと考えることも重要な作業です。