『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

UR新千里西町団地の多様な住棟

団地というと、同じ形をした板状の(豆腐のような)住棟が建ち並んでいて、均質で、殺風景な光景を思い浮かべる方もいると思います。もちろん、実際にそのような団地もありますが、全ての団地がそのようなものではありません。
例えば、「MUJI☓UR団地リノベーションプロジェクト」が行われているUR新千里西町団地では、均質な景観を生み出さないための様々な工夫がなされています。

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新千里西町団地の地図かわわかるように、様々なタイプの住棟が配置されています。

いくつかのタイプの住棟をご紹介します。

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メインのアプローチである緩やかな坂道を登った正面にあるC21棟。1階が通路・広場のような空間になっている「ピロティ型」の住棟です。

団地の中央付近には「ボックス型」住棟が配置されています。1つのフロアに2住戸が入っています。団地の景観に変化をつけるためのアクセントになっています。

東西に細長い板状の住棟では、陽当たりのよい南側は部屋にされることが多く、この場合、階段室は北側にもうけられることになります(「北入りタイプ」の住棟)。しかし、「北入りタイプ」の住棟が平行に配置されると、全ての人々がそれぞれの住棟の北側から階段室にアプローチすることになるため、隣り合う住棟の人と顔を合わせる機会が減る。そこで、新千里西町団地では南側から階段室にアプローチする「南入りタイプ」の平面をもつ住棟が採用されています。「北入りタイプ」と「南入りタイプ」の住棟をペアにして配置する(南側の住棟を「北入りタイプ」、北側の住棟を「南入りタイプ」とする)ことで、隣り合う住棟の人が同じ通路から階段室にアプローチすることになります。
※「北入りタイプ」の住棟と「南入りタイプ」の住棟のペア配置(NSペア)についてはこちらをご覧ください。

階段室が南側にあると、陽の当たる南側の空間の一部を部屋にできないというデメリットがありますが、あえて「南入りタイプ」の住棟を採用することで、隣り合う住棟の人々が顔を合わせるための機会を作ることが考えられています。

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写真右側に写っているのが「南入りタイプ」、左側に写っているのが「北入りタイプ」の住棟で、いずれの住棟にも写真中央の歩道からアクセスするようになっています。

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「南入りタイプ」の住棟の階段室。

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「北入りタイプ」の住棟の階段室。

両者を見比べると、住棟の表情が異なることがわかります。一見すると画一的に思えてしまう団地ですが、様々な工夫がなされています。

もちろん、住棟の配置を工夫しただけで、居住者同士の関係が良好なものになるとは言い切れませんが、団地の景観は均質で、殺風景だと一蹴してしまう前に、こうした工夫がなされたことをきちんと記録し、その効果を検証する必要があります。