先日の記事でご紹介したダンス・インスタレーション「ホームタウン・ヒーローズ／故郷の英雄たち」は、アライト・ダンス・シアター（alight dance theater）とグリーンベルト・ミュージアム（Greenbelt Museum）による共同プロジェクトによる共同プロジェクト。グリーンベルトの75周年記念の1つとして行われたプロジェクトです。
「誰がこのプロジェクトを支援しているか？」という観点から、「ホームタウン・ヒーローズ」についてみたいと思います。
パンフレットには「ホームタウン・ヒーローズ」のサポーターとして次のように記載されています。
This project made possible by the gracious support of
the Greenbelt Community Foundation
Prince George’s Arts & humanities Council
Maryland Milestones
the City of Greenbelt
the Greenbelt Museum
the Greenbelt Recreation Departmentas well as through the individual cotributions
of ouf Kickstarter.com backers:
グリーンベルトは、メリーランド州、プリンス・ジョージ郡に位置する町です。
上に記載されている団体のうち、メリーランド・マイルストーンズ（Maryland Milestones）は州内、プリンス・ジョージ芸術・人文科学評議会（Prince George’s Arts & humanities Council）は郡内で行われているプロジェクトを支援する団体。
グリーンベルト市（City of Greenbelt）、市のレクリエーション部門（Greenbelt Recreation Department）、市が建物を所有し、キュレーターの雇用すると同時に、ボランティア・グループが運営に携わるグリーンベルト・ミュージアム（Greenbelt Museum）、そして、グリーンベルト・コミュニティ財団（Greenbelt Community Foundation）は市内の団体。
このように「ホームタウン・ヒーローズ」は州レベル、郡レベル、市レベルというように、異なるレベルの範囲を対象とする団体から支援を受けていることがわかります。
いずれも興味深い活動をしている団体ばかりですが、このうち、グリーンベルト・コミュニティ財団（Greenbelt Community Foundation）のことをご紹介したいと思います。
グリーンベルト・コミュニティ財団は、グリーンベルトにおける生活の質を維持し、改良し、そして、豊かなものにすることを目的として、2006年に立ち上げられ、市からか独立した団体として運営されています。そのために、住民や企業などから寄付を募り、それによって、グリーンベルトの理念を尊重する芸術、教育、環境保護、コミュニティ強化のプロジェクトを金銭的に支援するという活動が行われています。
ウェブサイトには、2006年の立ち上げ以来$170,000（＝14,450,000円。ただし、$1＝85円で計算）もの寄付が、グリーンベルトの市民、企業主、行政組織から寄せられたとのこと。また、地域新聞の2012年3月15日号には、立ち上げ以来$190,416（＝16,185,360円）もの寄付が寄せられ、このうち61％が個人から、23％が企業組織からの寄付だったと書かれています。両者では少し金額は違いますが、いずれにしても、1500万近くの寄付が寄せられたとのこと。
こうして寄せられた寄付は、申請したグループの中から年に2回選定が行われ、選ばれたグループには、プロジェクトに応じて$500から$5,000（42,500円から425,000円）の範囲の支援がなされます。
支援を受ける資格があるのは、非営利活動法人（Non-profit Corporation）、非営利協同組合（Not-for-profit Cooperative）で、これまでに支援を受けたプロジェクトとしては、例えば、グリーンベルト・ミュージアム、ニューディール・カフェ、ファーマーズ・マーケット、アート・センター、エレノア・ルーズベルト高校などが主催するプロジェクトに対して、あるいは、ショッピングセンターに無料の無線LANを設置するプロジェクトに対して支援がなされました。
グリーンベルトには、町の中で色々な活動が、次々に誕生していることに驚かされます。新たなことにチャレンジしようとするプロジェクトを金銭的にサポートするという、このグリーンベルト・コミュニティ財団も、このことに大きく寄与していることは間違いないと思います。
そして、グリーンベルトには、ここで紹介したグリーンベルト・コミュニティ財団と同じような役割を果たしている団体や基金がたくさんあります。
それに加えて、団体を通さず、個々人が直接支援する仕組みも採用されています。
「ホームタウン・ヒーローズ」のパンフレットには次のような記載がありました。
as well as through the individual cotributions
of ouf Kickstarter.com backers:
ここに書かれているKickstarter.com（キックスターター）というのは、資金調達のためのプラットフォームです。
Kickstarterではプロジェクトを発表して一般個人の協賛者を募り、資金を集めることができる。アイデアグッズの商品化や、マンガの英語翻訳など、多種多様なプロジェクトについて出資者が募られている。映像・出版・写真・服飾など、幅広いジャンルが扱われる。
＊「IT用語辞典バイナリ」より
Kickstarterでは、投資した資金に対して、金銭で返すのではなく、何かを購入するというかたちで返すというかたちになっているのが特徴で、例えば、「ホームタウン・ヒーローズ」の場合、$10以上の支援で、ポスターと、FacebookやTwitter等へ宛てたメッセージの送付、$15以上の支援で、キャストの写真とポスター、FacebookやTwitter等へ宛てたメッセージの送付、･･････、$100以上で、6月3日に開催されるレセプションへの参加チケット2枚、コースター4枚、Tシャツ、キャストの写真、ポスター、プログラムの謝辞欄への名前の掲載、FacebookやTwitter等へ宛てたメッセージの送付、･･････ というように、金額によって異なるお返しがなされます。
Kickstarterの日本語版サービスは提供されていないようですが、個々人が、自身が応援したいプロジェクトにウェブを介して直接寄付をするためのプラットフォームのことを耳にする機会が最近増えてきました。ソーシャルファンディング、クラウドファンディングという表現を耳にすることもあります。色々なプラットフォームが登場していますが、今春公開されたGrow!も興味深いです。あらかじめ、100ポイントで1ドルのポイントを購入しておき、ウェブサイトに設置された「Grow!」ボタンを押すと、1回のクリックで100ポイントが設置者に送金されるという仕組み。まるでチップを渡すように、小額から気軽に支援ができるということで、ソーシャル・チッピング・プラットフォーム（Social Tipping Platform）とも呼ばれています。
一人ひとりからは小額でも、ウェブの力を借りることで広い範囲の人々から支援を受けることができる。新たなお金（とそれを契機とする人々の関係）が生まれています。
（更新：2015年8月31日）
