『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

グリーンベルト・ミュージアム:ニュータウンの歴史を伝える場所

アメリカ・ワシントンDCの郊外にあるグリーンベルト(Greenbelt)は、ニューディール政策によって作られた街です。

1937年に第1期の住宅(885戸のBlock HouseとBrick House)への入居が、1941年には第2期の住宅(1,000戸のFlame House)への入居が始まりました。
現在、第1期、第2期にまちびらきが行われたエリア周辺にも住宅が開発され、新たに開発された地域も含めてグリーンベルト市を構成していますが、第1期、第2期として入居が行われたエリアはオールド・グリーンベルト(Old Greenbelt)と呼ばれており、1997年にアメリカ合衆国国定歴史建造物(National Historic Landmark)に指定。既に80年以上の歴史をもつ街となっています。

グリーンベルトには街の暮らしの歴史を伝えるグリーンベルト・ミュージアム(Greenbelt Museum)があります。

グリーンベルト・ミュージアムは住民が地域新聞『Greenbelt News Review』に思いを投稿したことがきっかけとなり、まちびらき50周年として1987年にオープン。住民の思いがきっかけとなり、市も巻き込んでミュージアムとして実現したプロセスは、非常に興味深いです。

グリーンベルト・ミュージアムが開かれているのは第1期のブロック造の住戸。住戸は市が所有し、市の職員であるキュレーターと、ボランティア団体(FOGM=Friends of Greenbelt Museum)によって運営されています。

50周年記念として、1987年10 月10日にオープンしたことを示す銘板

  • 開館日時:毎週日曜 13:00~17:00
  • 入館料:$5(学生と65歳以上の高齢者は$3、6歳以下とFOGMメンバーは無料)

グリーンベルト・ミュージアムを訪れると、最初にガレージを利用した部屋で受付を済ませた後、グリーンベルトを紹介する10分ほどのビデオを見ます。この部屋には絵葉書、マグカップ、トートバッグ、本などグリーンベルトにまつわるグッズも販売されています。

ビデオを見た後、1936~1952年にかけての中流家庭の住宅の家具や電化製品などがしつらえられ、当時の生活の様子が再現された住戸内へ。住戸内は、ボランティアの方が案内してくださいます。

玄関には牛乳瓶を入れる箱。玄関脇には、ガーデニングなどの道具が入れられた倉庫があります。

玄関を入った左手がリビング。ダイニング・テーブル、ソファ、タンスなどの家具がしつらえられています。
リビングには、グリーンベルトの歴史にまつわる資料が置かれています。協同組合によって、1937年の創刊から毎週欠かさず発行され続けてきた地域新聞(創刊時は『Cooperator』、現在は『Greenbelt News Review』)も置かれています。

グリーンベルトの住宅は2階建ての連続住宅ですが、それぞれの住戸は駐車場のあるコート(Court)を囲むようにまとまりを持って配置することが基本とされています。コートはコミュニティのまとまりの単位になっていて、それぞれのコートには、コートの住民のまとめ役になるコート・リエゾン(Court Liaison)という役割の人がいます。

それぞれの住戸は、コート側のサービス・サイド(Service Side)と、反対側のガーデン・サイド(Garden Side)の両側から出入りできるように配置されています。
サービス・サイド側には玄関があります。上で紹介した駐車場のあるコートに面しており、車がアクセスする側。ガーデン・サイド側には裏庭があり、裏庭の向こうを遊歩道が通っています。
こうした住宅配置によって、人と車の動線を分ける「歩車分離」が考えられていると同時に、両側からの採光や身近な自然環境という、豊かな住環境が実現されています。

両側からアクセスできるように住戸が配置されていることは、グリーンベルト・ミュージアムのリビングの両側に窓が付いていることにも現れています。

ミュージアムのサービス・サイド側

ミュージアムのガーデン・サイド側

玄関を入った右手がキッチン。冷蔵庫、ミキサーなどの電化製品、二槽式のシンク、調理器具、食器、料理本などが展示されています。電気洗濯機はなく、洗濯板と、手でハンドルを回すことで脱水する道具が置かれていました。

2階に上がります。階段を上がった左手がバスルーム。現在と違い、バスタブにはシャワーが付いていません。

階段を上がった右手が子ども部屋。子ども用のベッド、テーブル、タンスなどがしつらえられ、人形、玩具などが置かれています。テーブルの上にはタイプライターも置かれていました。
案内してくださった女性からは、二段ベッドにしている住戸もあったと伺いました。また、子どもの人数や成長にあわせて、グリーンベルト内の他の住戸に引っ越す家族もいたと伺いました。

階段を上がった右手の一番奥が主寝室。部屋の中央には大きなベッドが置かれています。
ベッドルームの一画にはミシン台。案内してくださった女性の話によると、当時、専業主婦であった女性にとって、ミシンは大切な道具だったとのこと。


この日案内してくださった女性はグリーンベルト(オールド・グリーンベルト)にお住まいの方で、歩いて暮らせることがグリーンベルトの良いところだと話されていました。

ニューディール政策では、メリーランド州のグリーンベルト、オハイオ州のグリーンヒルズ、ウィスコンシン州のグリーンデイルの3つの「グリーン・タウン」(Green Town)が開発されました。現在、3つの街で、住宅/住宅地を協同組合で管理しているのはグリーンベルトだけ。女性はこのことを誇りとされているような感じを受けましたが、同時に、「プレッシャー」でもあると話されていました。