『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

松島新都市(New Songdo City):韓国の計画都市

松島新都市(New Songdo City)

2012年9月、松島新都市を訪問しました。松島新都市は仁川国際空港の南東にあり、現在開発が進んでいるエリア。グリッド型の道路が通っており、高層の集合住宅、オフィスなどの建物が建ち並んでいます。ファサードに凹凸がある建物、壁が垂直でない建物など、特徴的なかたちの建物です。
セントラルパーク、ヘドチ公園といった大きな公園が計画。セントラルパークの中央にある水路は海水を利用して作られたもので、ボートを漕いでいる人を見かけました。

セントラル・パークの北側にはCanal Walk(カナル・ウォーク)というショッピング・センターが開店予定。南からSpring、Summer、Autumn、Winterの4つの街区にまたがる細長いショッピング・センターとして計画されています。
訪れた時は、一番南のSpringの街区の建物が完成したばかりで、まだ内装工事が行われている店舗も多かったです。中央に運河のある広場があり、所々にベンチやアート作品が置かれています。広場の両側に3〜4階建の建物が建っています。建物の1〜2階が店舗、3階以上が住宅だとのこと。外の通りに面しても店舗があり、カフェやコンビニの外におかれたテーブル・ベンチでは、座ってお茶を飲んだり、食事をしたり、話をしたりしている人がいる。ヨーロッパ風のような雰囲気のする光景でした。
今後、Canal Walkが全館開店すれば、賑やかな雰囲気になると思われます。

真っ直ぐに走った道路、芝生の広場、水路といった広々とした空間があり、そこに建ち並ぶ様々な形態・ファサードの建物。まだまだ開発は進んでおり、現在の日本でこのような規模の開発がなされている場所はないのではないかと感じました。

*2016年4月、松島新都市に「現代プレミアムアウトレット松島店」もオープンしています。

仁川経済自由区域(IFEZ=Incehon Free Economic Zone)

松島新都市は仁川経済自由区域(IFEZ=Incehon Free Economic Zone)を構成する1つとなっています。

仁川経済自由区域は、「グローバル・ビジネスの新たな都市モデル」として、2003年8月に韓国で初めて指定された経済自由区域で、開発面積は169.5㎢、基盤施設造成費は33兆3千6百億ウォン(約314億ドル)、計画人口は640,800人の都市です。
仁川経済自由区域は、松島(Songdo/ソンド)、永宗(Yeongjong/ヨンゾン)、青羅(Chongna/チョンラ)の3地区を核として開発が進められています*1)。
3地区の概要は以下の通りです*2)。

松島(Songdo)

  • 開発の方向性:国際ビジネス、IT、BT、R&D等
  • 面積:53.3㎢
  • 計画人口:253,000人
  • 投資実績:21件、合計332億31百万ドル(2007年12月基準)
  • 施工会社:仁川広域市、仁川都市公社、NSICなど
  • 主な開発:松島ランドマークシティ(仁川タワー)、国際業務団地、仁川新港物流団地、延世大松島国際化複合団地、国際旅客ターミナル

永宗(Yeongjong)

  • 開発の方向性:航空、物流、文化、観光、レジャー等
  • 面積:98.4㎢
  • 計画人口:169,000人
  • 投資実績:9件、合計23億6百万ドル(2007年12月基準)
  • 施工会社:韓国土地公社、仁川都市公社、仁川空港公社など
  • 主な開発:仁川国際空港、ミダンシティ、龍遊・舞衣複合都市

青羅(Chongna)

  • 開発の方向性:金融、レジャー、スポーツ、先端アイテム、自動車部品等
  • 面積:17.7㎢
  • 計画人口:90,000人
  • 施工会社:仁川広域市、韓国土地公社、韓国農村公社など
  • 主な開発:シティタワー、国際業務タウン、花卉団地/新世界郊外型ショッピング団地

計画住宅地である千里ニュータウンとは単純には比較できませんが、千里ニュータウンの開発面積が11.6㎢、計画人口が150,000人であるのと比較すると、仁川経済自由区域は面積で15.4倍、計画人口で4.3倍の規模になっています。なお、3地区それぞれの様子は、次に紹介する展示館「コンパクト・スマートシティ」(Compact Smart City)で紹介されています。

コンパクト・スマートシティ(Compact Smart City)

  • 住所:24-7 Songdo-dong, Yeonsu-gu, Incheon
  • アクセス:地下鉄「Central Park」駅下車、徒歩すぐ
  • 開館日時:10時〜18時(休館日:月曜)

仁川1号線・セントラルパーク駅の上にある展示館で、仁川の過去、現在、未来についての展示がなされています(観覧無料)。建物は2009年に仁川世界都市祝典の主要施設として建設されたもの。

コンパクト・スマートシティについて、パンフレットでは「都市計画をもとに仁川広域市の過去と現在、未来をひとところに集めて表現する展示・観覧施設」とされ、「POTENTIAL 仁川の再発見/HISTORY 仁川市の再照明/FUTURE 仁川の未来展望/WORLD グローバル都市仁川」の4つのテーマで仁川を紹介すると説明されています。展示は3フロアからなり、それぞれ次のような内容の展示がなされています*3)。

1階

  • ①5D映像館
    円形空間に水、風、レーザーなどの特殊演出を活用した立体映像/テーマ:未来都市仁川に向かって発つ楽しい時間旅行
  • ②古代および近代展示館
    先史時代から挑戦時代まで仁川の海路を中心に繰り広げられた開拓と挑戦の歴史を紹介/韓国近代史を導いてきた仁川の代表的施設をセット模型で再現
  • ③企画展示館I
    韓国都市政策の主要内容をグラフィックパネルと映像で紹介し、体験映像で未来都市ビジョンを演出

2階

  • ④仁川模型館
    大型映像と模型が一つに連動して仁川のステータスを強調する空間感を演出 誇らしい仁川の今日と明日を展望
  • ⑤体験展示室
    都市学習と仁川の文化コードが体験できる参加型展示室
  • ⑥企画展示館II
    韓国が作っていくU-City政策の主要内容を映像とグラフィックで紹介し、主要サービスを体験してみるコーナー

3階

  • ⑦IFEZ模型館
    IFEZの出発と役割を紹介/成長する松島、青羅、永宗の未来都市模型
  • ⑧4D立体映像館
    最高の投資環境を備えたIFEZの広報映像/テーマ:Heartbeat of the World, IFEZ

いずれの展示も興味深かったですが、特に2階、3階の大きな模型には圧倒されました。千里ニュータウンにもこれほど充実した展示館があればと羨ましい気がしました。

トライボール/トリボール(Tri-Bowl)

  • 住所:24-6 Songdo-dong, Yeonsu-gu, Incheon
  • アクセス:地下鉄「Central Park」駅下車、徒歩すぐ
  • 開館時間:7:30〜14:15(休館日:日曜)

コンパクト・スマートシティのすぐ北西にある建物で、3つの逆円錐形の特徴的な形態をしています。仁川文化財団が運営している複合文化施設で、コンパクト・スマートシティと同様、2009年に仁川世界都市祝典の主要施設として建設されたもの。

トライボール/トリボール(Tri-Bowl)の名称は「「3つを意味するトリプル(triple)と、器を意味するボウル(bowl)の合成語」であり、「「空(空港)」、「海(港)」、「陸(広域交通網)」の3つが調和を成した仁川を象徴すると同時に、「松島」、「青蘿(チョンナ)」、「永宗(ヨンジョン)」の3つの仁川経済自由区域も象徴」するとされています*4)。


  • *1)パンフレット『We Build Success: Incehon Free Economic Zone(Japanese)』より。
  • *2)パンフレット『We Build Success: Incehon Free Economic Zone(Japanese)』、パンフレット『Compact Smart City(コンパクト・スマートシティ):The Time Layers of the City of Incehon(未来に向かう仁川都市探検)』Incheon Compact Smart Cityより。
  • *3)パンフレット『Compact Smart City(コンパクト・スマートシティ):The Time Layers of the City of Incehon(未来に向かう仁川都市探検)』Incheon Compact Smart Cityより。
  • *4)「韓国観光公社公式サイト」より。

(更新:2018年11月1日)