アメリカ・ワシントンDC郊外のグリーンベルトは、ルーズベルト大統領のニューディール政策によって開発されたニュータウンとしてその名が知られていますが、協同組合(Cooperative)の街としても名が知られています。
現在、グリーンベルトで活動している協同組合は7つ。この中の1つ、グリーンベルト・ホームズ(GHI=Greenbelt Homes Inc.)はグリーンベルト中心部の1,600戸の住宅・住宅地を管理する協同組合で、この他、カフェ、地域新聞、スーパーマーケット、信用金庫、キャンプ場、そして、保育園が協同組合として運営されています。
グリーンベルトのまち開きは1937年。その5年後の、1942年にグリーンベルト保育園(Greenbelt Nursery School)が開設され、現在まで70年に渡って協同組合として運営され続けています。
グリーンベルト保育園は、市の中心部にあるコミュニティ・センター内にあります(*オープン当初からコミュニティ・センターにあったかどうかは未確認です)。
コミュニティ・センターの正面。1937年に竣工したアールデコ様式の建築です。
グリーンベルト保育園が運営されているのは西側のウイング部分。
2011年から2012年にかけての年度では、2〜4歳の70〜80人ほどの子どもが通い、スタッフは9人。子ども8〜9人にスタッフ1人という割合です。
日本においては、平成24年現在、国が保育士の配置基準を、0歳児で概ね3人に保育士1人、1〜2歳児で概ね6人に保育士1人、3歳児で概ね20人に保育士1人、4〜5歳児で概ね30人に保育士1人と定めていますので、この配置基準に比べるとグリーンベルト保育園は子どもに対するスタッフの割合が多目と言えるかもしれません。しかし、グリーンベルト保育園では9人のスタッフだけが保育や運営に携わっているわけではありません。
協同組合とは「共通する目的のために個人あるいは中小企業者等が集まり、組合員となって事業体を設立して共同で所有し、民主的な管理運営を行なっていく非営利の相互扶助組織」(Wikipediaの「協同組合」のページより)のこと。
グリーンベルト保育園では、子どもを入園させた親が組合員となり、協同組合では組合員が「共同で所有し、民主的な管理運営を行なっていく」という説明の通り、グリーンベルト保育園では、親が管理運営、ファイナンス、クラスルームのアシスト、広報、資金調達、メンテナンス、ハウスキーピングなど、保育園のあらゆる場面に関わっています。
そもそもが、子どもの保育をスタッフにお任せするのではなく、子どもの保育を行なうため、自分たちがスタッフを雇って保育園を運営するということなので、親の関わりが非常に強い。
これが、協同組合の特徴で、カフェにおいても、地域の人が、カフェを運営するためにシェフを雇うということが行なわれています。
生活環境を豊かなものにしていく作業を専門家にお任せにするのではなく、地域の人自らが専門家を雇って生活環境を豊かなものにしていくという意志。グリーンベルトからはこのことを強く感じます。
(更新:2020年3月9日)