『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

地域に高齢者の力を(第3回国連防災世界会議パブリックフォーラム)

2015年3月18日(水)、東北大学河内北キャンパスにて第3回国連防災世界会議のパブリックフォーラム「地域に高齢者の力を」(Elders Leading the Way to Inclusive Community )が開催され、「居場所ハウス」のメンバー4人と、フィリピン・オルモック市の居場所プロジェクトのメンバー2人もパネリストとして参加しました。


日時:2015年3月18日(水) 13:00〜15:00
場所:東北大学川内北キャンパスB104
主催:世界銀行防災グローバル・ファシリティ(World Bank, GFDRR)+ワシントンDCの非営利組織「Ibasho」

【パブリックフォーラムの内容】
①挨拶:マーガレット・アーノルド(世界銀行防災グローバル・ファシリティ)

②講演:清田英巳(Ibasho)「Ibashoについて」

③ドキュメンタリー映画上映

④講演:戸田公明(大船渡市長)「岩手県大船渡市の復興の状況」

⑤ディスカッション
○司会:マーガレット・アーノルド(世界銀行防災グローバル・ファシリティ)
○パネリスト:
・戸田公明(大船渡市長)
・清田英巳(Ibasho)
・○○○○(居場所ハウス理事・館長)
・○○○○(居場所ハウス理事)
・○○○○(居場所ハウス)
・○○○○(居場所ハウス)
・○○○○(オルモック居場所プロジェクト)
・○○○○(オルモック居場所プロジェクト)

⑥質疑応答

⑦まとめ:マーガレット・アーノルド(世界銀行防災グローバル・ファシリティ)

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パブリックフォーラムでは、災害に強い地域、災害に柔軟に対応できる地域は、高齢者を災害弱者として排除するのではなく、高齢者を含めたあらゆる世代の人々を包摂してこそ実現されるのではないか? このような考えのもと、そのような地域はどうすれば実現するのか? そこで高齢者はどのような役割を担い得るのか? について、「居場所ハウス」での活動やフィリピン・オルモックとの交流を通じて得たこと、感じることをディスカッションしました。

専門家だけでなく、地域で実践している方々がパンリストとして参加し、発言していただけたという意味で、貴重な機会だったと思います。
「居場所ハウス」から参加された方は、次のように発言されました。

「居場所ハウス」に来る人たちが少しでも綺麗な花を見て、気持ちが和むことができますようにって願いを込めて、花の手入れをしています。私も花が大好きなので、「「居場所ハウス」の花が綺麗ねって言われると誇りに思っております。おばあちゃんたちと地元に伝わるひっつみ汁とか鍋焼きとか、大船渡名物とかね、すぐ作ってくださいって言われると、「はい」って喜んで、お手伝いをすることで生きがいを感じております。・・・・・・。みんなで「居場所ハウス」を盛りあげていきたいって思った時に、自分から笑顔で、積極的に、小さなことからお手伝いして協力してやる。そういう気持ちが生まれました。潤いもできました。それには、自分自身の生活のリズムを作り、自分の力で楽しんで生きるという変化が私には起きました。

今「居場所ハウス」に来て、ほんとに自分にできることがみなさんに喜んでいただけることが、最高の喜びでございます。私も元々建築の方をやりましたので、「居場所ハウス」で物を作る時は、私が中心になってやっております。今後も、異世代交流の「居場所ハウス」でございますから、それに相応しいものをこれからは喜んで作っていきたい。・・・・・・これからも雑草のように踏まれても踏まれても、みなさんに喜んでいただけるように努力したいと思います。

ここには、自分の得意なこと、好きなことを通して「居場所ハウス」に関わることが、地域の人が喜んでもらえることにつながっていること。このことを実感できることの喜び、充実感が語られています。
ある方は、これまでデジタル公民館まっさきと共に行ってきたキッズデーの話をされました。

キッズデーは「居場所ハウス」を拠点として活動し、伝承文化を伝えることを大事にしております。古い時代、厳しい環境の中から生まれたであろう伝統行事の1つ1つには五穀豊穣や家族の安全を願う、そういう願い、祈り、感謝の心が込められていると思います。そういう行事の由来、時代の背景、そういったものを子どもたちに伝えられたらいいなと思います。・・・・・・。キッズデーをなぜ、「居場所ハウス」を拠点として行っているかですが、「居場所ハウス」には高齢の方たちが大勢集まって参ります。高齢の方たちと一緒にキッズデーを行うわけでして、伝統文化について近隣の高齢の方たちからお話を伺うということで、世代を越えてみんなで一緒に聞くということで学んでおります。

5月の子どもの日には「子どもの人格を重んじ、子どもの幸せをはかり、それと共に母に感謝する」という意味が込められているが、最近では最後の「母に感謝する」という側面が薄れてきているので、キッズデーでは「学びの場でありますので、そういうこともきちんと子どもたちに伝えていけたらと思います」とのこと。

フィリピン・オルモック市でも、居場所作りのプロジェクトが始まろうとしています。オルモック市でのプロジェクトに対して次のような発言がありました。

先ほども試行錯誤と言いましたけども、やっぱり急がないで徐々にやるということ。疲れて途中で中断しないように。繰り返しますが、徐々に徐々に、少しずつ頑張って練習していければいいのかなと思いますので。私たちも頑張りますので、頑張ってください。

試行錯誤しながら、徐々にやっていくこと。もちろん、これは今後の「居場所ハウス」にも当てはまります。パネルディスカッションでは、今後「居場所ハウス」が地域で果たす役割として、周囲の災害公営住宅に入居してくる人々の暮らしのサポート、災害時に避難所として役割を果たせる場所にすることという話がありました。前者については、昨年10月から毎月朝市を開催していますが、現在、昼食を提供するためのキッチンを増設しています。買い物できる場所、食事ができる場所として、「居場所ハウス」が地域の人々の暮らしをサポートできるようになればと思います。また、後者について、「居場所ハウス」にはカマド、薪ストーブがあるため電気がなくても調理したり、暖をとることができますし、最近、「居場所ハウス」内に防災無線を設置しましたが、今後は、非常物資もある程度備蓄していきたいという話がありました。

「居場所ハウス」の活動に参加されている方々の生の声を聞くことができたため、「居場所ハウス」のような場所が地域にあることの意味は十分に共有されたと思います。

もちろん、「居場所ハウス」を運営する上では様々な課題があることも事実です(これは「居場所ハウス」だけでなく、他のスペースでも同様だと思います)。また、これも「居場所ハウス」だけに限りませんが、「居場所ハウス」のような地域住民による草の根の活動と、行政とがどういう関係を築いていけばよいのか(草の根の活動が行政に依存するのでもなく、草の根の活動が行政の下請けになるのでもない連携のあり方)も大きな課題です。これらの点について、意見交換する時間があれば、パブリックフォーラムはより充実したものになったのではないかと考えています。

もちろん、これが最後ではありませんので、今後も情報発信、情報交換できる機会を作っていきたいと思います。