『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

新千里北町のユニークな車止め調査

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新千里北町と新千里東町の一部には、リスやゾウ、ウサギなど動物型の車止め、丸、三角、四角の窓が開いた四角い幾何学型の車止めが見られます。

以前、新千里北町にお住まいの方にインタビューしたところ、「小学生の頃なんかは「象の前、カバの前に集合な」って言ってましたね」、「カバは、家の前の公園に2体いたんです。・・・・・・。そこでいつも待ち合わせをしたりとか、別れる時もそこで喋って。喋る時もカバさんの上に乗りながらとか」という話がなされ、特に子どもたちにとっては大切なものだったことが伺えます。また、公団の第二団地の建替えでは、建替え後のマンションの中庭に動物型の車止めが残されており、このことからも車止めが大切にされていることがわかります。

特徴的な車止めが新千里北町と新千里東町の一部にだけ設置された経緯は不明ですが、ディスカバー千里のメンバーで、新千里北町の車止めには次のような理由があるのではないかという話をしています。


千里ニュータウンでは、車道と歩道とを分ける歩車分離の考え方が取り入れられています。千里ニュータウンで初期に開発された吹田市側の住区では歩車分離のためにクルドサック(cul-de-sac)が採用されました。クルドサックとはフランス語で袋小路の意味。住宅地から通過交通を排除するために行き止まり道路をもうけ、さらに、行き止まりの先端部分を歩行者路のネットワークで結ぶことで歩車分離を実現するという手法です。

一方、千里ニュータウンで後期に開発された豊中市側の住区ではクルドサックは見られなくなります。クルドサックが用いられなくなった背景には、千里ニュータウンの道路はアメリカのように広くなかったためクルドサックの見通しが悪く通り抜けようとする車が誤ってクルドサック内に侵入するという状況があったということです。また、ゴミの収集も大変だったという状況もあったとのこと。

そこで豊中市側の住区では道路計画の見直しが行われ、クルドサックではなくループ状の道路が計画されました。ループ状の道路とは、通過道路からコの字型に住宅地内にアクセスするというもの。そして、ループ状の道路の間には歩行者専用道路がもうけられました。この時、車が誤って歩行者用道路に進入しないように、歩行者専用道路の進入口には車止めが設置されたのではないかと。さらに、なぜ新千里北町にだけ車止めが設置されたのかというと、新千里東町には戸建住宅がなく、さらに、後に開発された新千里西町や新千里南町では、車止めがなくても車が歩行者専用道路に進入しないような道路計画がなされている。だから、新千里北町にだけ特徴的な車止めが設置されたのではないか。ディスカバー千里のメンバーの話です。


ディスカバー千里のメンバーでこのような話をしていますが、それでも、なぜ動物型と幾何学型の車止めがあるのか? これらは何らかのルールに基づいて設置されたのか? などはまだわかりません。今後、実際に千里ニュータウンの開発に携わった方に話を聞いて、確認できればと考えています。

これまで千里ニュータウン開発について多くが語られてきましたが、新千里北町に見られる特徴的な車止めについて語られることはなかったと思います。しかし、この特徴的な車止めは良好な住環境を実現する上でキーとなる工夫である可能性があり、ディスカバー千里ではこの車止めに注目しています。

集合住宅の建替えや道路工事により既に撤去されたり、鉄パイプの車止めに置き換えられたものもありますが、現時点で車止めはいくつあるのかを確認するため、平成28年5月6日(金)、ディスカバー千里のメンバーらで車止め調査を行いました。
住区内を歩いてどこに、どの種類の車止めがあるのかを確認していきます。歩行者専用道路の進入口だけでなく、公園内に設置されたものもわかりました。
調査をしながら、幾何学型の車止めは歩行者専用道路に高低差があることを示しているのではないか? 幾何学型の車止めは動物を抽象化したものではないか? などの話をしていました。

ディスカバー千里では引き続き、車止めについて調べていきたいと考えています。また、車止めについての思い出も集めていますので、ぜひ思い出をお寄せください。

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