『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

自分たちで公共の場所を作りかえること@千里ニュータウン

ディスカバー千里(千里ニュータウン研究・情報センター)のコーディネートによる最近のプロジェクト、「八中の中庭を蘇らせよう!」をご紹介させていただきます。

中学校の教員・生徒、地域住民、そして、専門家の協働により、八中(豊中市立第八中学校)で長い間使われていなかった中庭をmベンチのペンキ塗り替え、植樹などによって蘇らせる興味深いプロジェクトです。
ディスカバー千里のメンバーの方より、プロジェクトの進行状況について次のような話を伺いました。


プロジェクトは、八中の先生からディスカバー千里に、中庭をきれいにしたいという話があったのがきっかけでスタート。ディスカバー千里は、豊中市立北丘小学校の50周年記念の一環として行われたプール外壁のペンキ塗り替えに協力したという実績があります。
ディスカバー千里からは、単に中庭を綺麗にして終わりにするのではなく、中庭を綺麗にする作業を、住民が地域に関わる機会にすることを提案。

2017年3月9日(木)より実際の作業がスタート。八中の地元である新千里東町・北町の住民、プール外壁のペンキ塗り替えにも協力していただいた塗魂ペインターズ(魂で未来を塗る施工店集団)をはじめとする専門家、そして、建築・都市計画、ペンキ塗り、植物について専門家が集まるディスカバー千里のメンバーらの協働により、着実にプロジェクトが進められているとのこと。新千里東町の近隣センターで運営するコミュニティ・カフェ「ひがしまち街角広場」でも募金箱を設置し、プロジェクトへの協力が行われているようです。

大人たちの手により清掃されたベンチには、仕上げとして八中美術部の生徒により絵が描かれる予定です。


豊中市立第八中学校で進められている「八中の中庭を蘇らせよう!」プロジェクトが完了したというお知らせをいただきました。
ディスカバー千里がコーディネートし、学校の教員・生徒、地域住民、そして、専門家の協働により、八中(豊中市立第八中学校)で長い間使われていなかった中庭をベンチのペンキ塗り替え、植樹などによって蘇らせようとする興味深いプロジェクトです。
「八中の中庭を蘇らせよう!」プロジェクトで注目すべきは以下の3つだと考えています。

  • 中学校を現場としていること
  • 地域の住民と(地域外の)専門家との協働により行われたこと
  • 一過性のイベントに終わるのではなく、使われていなかった空間を蘇らせるというように、具体的な空間に手を加えたこと

中学校を現場としていること

近隣住区論に基づいて計画された千里ニュータウンでは「1つの住区に1つの小学校、2つの住区に1つの中学校」が基本とされているように、学校は住区において大きな位置づけをもっています。その学校を現場としたプロジェクトであることは、近隣住区論で重視されてきた学校が、少子高齢化の進展によって子どもの人数が減少した現在においてもなお、今もなお地域活動の拠点になり得ることを示すものだと言えます。

地域の住民と(地域外の)専門家との協働により行われたこと

現在、豊中市では地域自治協議会を設立しようとする動きが進められています。これは住民自治の仕組みの確立を目指したものです。もちろん、地域のことは住民が主体となって決めていくのは基本。けれども、ついつい忘れてしまいがちなのは、地域は住民だけで成立しているのではないということ。例えば、住区の核になる学校に勤める先生方、近隣センターで商店を営む人々は必ずしも住民とは限りませんが、先生方や商店を営む人々の存在なしには地域の暮らしは成立しません。
今回のプロジェクトに、地域外からペンキ塗装、植栽などの専門家の協力があったことは、地域の住民と(地域外の)専門家との協働により新たな価値を生み出せることを示したと同時に、地域を開く試みにもなったと考えています。

一過性のイベントに終わるのではなく、使われていなかった空間を蘇らせるというように、具体的な空間に手を加えたこと

計画された住宅地(ベッドタウン)であるが故に、住民自身が手を加えることのできる公共空間をほとんど持たない千里ニュータウンにおいては、住民活動が一過性のイベントで終わるのではなく、現実に空間を作りかえるところまでいくのは至難の業。こうした状況において、今回のプロジェクトは規模は小さいかもしれませんが、具体的な空間を蘇らせる活動であったことは、オールドタウンと呼ばれることもある千里を豊かに住みこなしていくためのヒントを投げかけていると思います。

(更新:2017年4月3日)