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みま〜も(おおた高齢者見守りネットワーク):地域で支援が必要な人を見守り・支え合うためのネットワークを築いていく

高齢者の地域での暮らしというと、医療・介護の問題だと考えてしまいがちですが、当然のことながら高齢者や医療・介護とだけ関わって暮らしているわけではありません。友人・知人と出会ったり、飲食したり、買い物したり、趣味のサークルや自治会に参加したり、病院や図書館などの施設に行ったり。あるいは、そのために歩いたり、電車やバスに乗ったり。このような多様なことの総体が地域での暮らしであり、医療・介護はその中の(もちろん重要ですが)一部だということ。だから、高齢者の暮らしを、医療・介護から解放して、まち(まちづくり)の視点で考える必要がある。
先日、東京都大田区で活動する「みま〜も」(おおた高齢者見守りネットワーク)についての話を伺う機会があり、改めてこのことを考えさせられました。


「みま〜も」は2008年4月の発足以来、「いくつになっても安心して暮らし続けるまちづくり」を目的とする活動を通して、

  • 高齢者が元気なうちから医療や介護の専門職、地元の民間企業と日常的に出会えること
  • 医療や介護の専門職、地元の民間企業が、高齢者と元気なうちから日常的に出会えること

の実現が目指されています。

「みま〜も」の特徴の1つは、助成金ではなく、企業・事業所からの協賛という仕組みであること。「みま〜も」の目的に賛同する企業・事業所は、「みま〜も」にお金を出し、人も出し、そして、汗もかくのだと話されていました。
協賛している企業・事業所は必ずしも医療・介護の分野に限らず、現在、94のうち34が医療・介護以外の様々な得意分野を持つ民間企業ということです。

もう1つの特徴は、100名の地域の住民(高齢者)が「みま〜もサポーター」という応援団として、活動に参加、協力していること。
「みま〜もサポーター」は、年会費2,000円を支払い「みま〜も」に参加、協力します。なぜ、年会費を払って活動に協力するのか? 「みま〜も」から依頼されて協力するというのでは、やらされ感が湧いてきてしまう。自らが手を挙げ、申し込みをして、年会費を支払うというプロセスは、主体的に「みま〜も」に関わってもらうための仕組みとして大切にしているということでした。
「みま〜もサポーター」として活動に参加、協力した人は、時間に応じて地元商店街(ウィロード山王)の商品券を受け取ることができます。商店街の空き店舗を活用した拠点「みま〜もステーション」と合わせて、「みま〜も」は商店街に人・お金の循環を生み出しており、現在、商店街には空き店舗がなくなったという話でした。このことからも、「みま〜も」が医療・介護に限定されない、まち(まちづくり)を見据えて活動であることが伺えます。また、「Win-Winの関係」という表現を使われていましたが、協賛する企業・事業所にとってのメリットも考えられていることも伺えます。


「みま〜も」という興味深い活動は、「医療・介護の専門職が、支援を必要としている人に、適切な時期につながることができない」という、地域包括支援センターのスタッフらの問題意識から生み出されたものです。
ここで大切になるのが支援が必要な人を見守り・支え合うための2つのネットワークという考え方。「みま〜も」では2つのネットワークが考えられています。

1つ目は「対応のネットワーク」。相談・通報によってつながった人々に対応するためのネットワークで、医療・介護の専門職、専門機関、地域包括支援センター、行政機関、警察、消防などによって構成されています。
国が地域包括ケアを描いたことで、現在、医療・介護の専門職の間ではネットワークづくりが盛んに進められているが、医療・介護の専門職によるネットワーク(医療介護連携)は「対応のネットワーク」である。けれども、いくら「対応のネットワーク」を強固に作っても、それだけでは十分に機能しない。なぜならば、そもそも「対応のネットワーク」につながることのできない多くの人がいて、これからもそのような人は増えていくから。

そこで「みま〜も」が考えるもう1つのネットワークが「気づきのネットワーク」で、これは支援を必要としているというサインや異変に気づくネットワーク。「気づきのネットワーク」の構成員は多様で、支援を必要としている人に接客という形で日常的に関わる郵便・新聞・配食の配達員などの人々、支援を必要としている人が利用したり参加したりするという形で日常的に関わる薬局、金融機関、商店街、老人クラブなどの人々、友人関係や近所づきあいという形で日常的に関わる地域住民など。
実は「気づきのネットワーク」の内部では、支援を必要としているというサインや異変は気づかれている。けれども、家族でも親族でもない者が、それを「対応のネットワーク」につなげてもいいのだろうかという躊躇が蔓延している。だから、支援を必要としている人が「対応のネットワーク」につながるのは、ギリギリの状態になってしまうのだと。

重要なのは、2つのネットワークが有機的に循環することで、「みま〜も」はそれが目指されています。そのための現時点での課題は、介護・医療の専門職が「対応のネットワーク」の中に閉じこもるのではなく、「気づきのネットワーク」にどう関わっていけるかを考えることだという話でした。
もちろんそれは、介護・医療の専門職が一方的に支援をするのではなく、地域の人々が主体となれることを広げていくことが大切だと。

「みま〜も」の主な活動

「みま〜も」の活動は多岐に渡りますが、主に次のような活動が行われています。

地域づくりセミナー(2008年5月〜)

「みま〜も」の前身である「大田北高齢者見守りネットワークをつくる会」の頃から毎月第3土曜に開かれているもの。地域の専門職や企業の人に講師になってもらうという地域密着型で行われているセミナーで、テーマは「フットケアで転ばん生活」、「夏に負けない食事の工夫」、「いざという時の隣の人と助け合う術」、「いつまでも元気に過ごす運動術」など。参加者は100人を越える。

SOSみま~もキーホルダー(2009年8月〜)

緊急搬送時、徘徊時の身元確認のため、個人番号と、個人番号を登録した地域包括支援センターの連絡先が書かれたキーホルダー。2012年4月から「大田区高齢者見守りキーホルダー事業」として、大田区の事業となり、現在、大田区に住む65歳以上の4人に1人にあたる4万人がこのキーホルダを持っている。さらに、高齢者見守りキーホルダーの事業は、全国の自治体にも広がっている。

みま〜もステーション(2011年4月〜)

商店街の空き店舗を活用した無料休憩所「アキナイ山王亭」とその裏にある新井宿第一児童公園を拠点とするサロン事業として始められた。「地域づくりセミナー」の参加者が毎回100人を超えたが、住民はそこにお客さんとして参加しているだけであった。どうすれば、主体的に関わってもらえるのかという問題意識から始められたもの。「みま〜もステーション」では「ガーデン」、「手話ダンス」、「公園体操」、「みま〜も手芸部」、「ポールdeウォーク」、「みまもり食堂」、「パソコン教室」など年間420の講座が開かれている。毎日、「みま〜もステーション」に行けば、何か楽しいことが行われていると認知されるようになっている。

おおもり語らいの駅(2017年5月〜)

床屋だった店舗を改修して開かれたコミュニティ・カフェ。地域医療の中核となる牧田総合病院が、相互力を基盤として全世代対象・対応型地域包括ケアを具現化していくモデルとして生まれたもので、「みま〜も」との協力によって運営されている。牧田総合病院に勤める看護師、介護福祉士、社会福祉士、管理栄養士、薬剤師などが日替わりでスタッフとなり、カフェ、食堂の運営、各種講座、健康チェックの実施、情報掲示板、図書コーナーの設置などが行われている。

「みま〜も」はまち(まちづくり)を見据えた活動。何歳になっても行きたい場所があること。そこは気軽に訪れることのできる場所、行きたいと思える場所、誰かが自分を待っていてくれる、必要としていてくれる場所。持病があっても、1人で外出できなくなったとしても、その人なりの社会参加ができる場所。大きな箱物を1つ作るよりも、地域にそのような場所がたくさんあることが重要だと話されていました。


参考