『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

ネパールのマタティルタ村でIbashoプロジェクトに関わる高齢者

2018年1月、ネパールのマタティルタ(Matatirtha)村を訪問しました。ワシントンDCの非営利法人・Ibashoによるプロジェクトが行われている村です。

マタティルタでは、生計・暮らしのプロジェクト(Livelihood Projects)として農園での野菜作り、コンポスト、イヤリング作りが進められています。
写真の高齢の男性は、イヤリング作りに参加している方。針金を三角形に折り曲げたイヤリングを作るため、木片に釘を打ち付けた自作の道具を作っておられました。ただ、この道具でも綺麗に針金を三角形に折るのが難しいということで、今回の訪問に動向された建築家の方と一緒に、針金を三角形に折り曲げる方法を考えておられました。

前回の訪問時にフレームを作った掲示板も完成し、村のメインの道路沿いに設置されました。掲示板のフレームは、電動ドリルの使い方の説明を行いながら、建築家の方と村の方が一緒になって作ったもの。掲示板作りに中心になって関わったのは2人の男性ですが、このうち1人は元大工をされていた高齢の男性です。
掲示板に掲載した地図は、前回の訪問時に開いた防災に関するワークショップ・地図作りで作った地図をベースに新たに作られたものです。

今回の訪問で気づかされたことは2つです。

1つは、人は何歳になっても新しいことを学ぶ存在だということ。高齢者が役に立たない存在と見なされるのはなく、有用な存在として見なされる必要があるという時、往々にして高齢者の知識・技術を若い世代に伝えることの重要性が指摘されます。もちろんこれは重要なことですが、高齢者が若い世代に一方的に教えるだけでは不十分。人がかけがえのない個人として居られるということは、何歳になっても学べるのだという観点を忘れてはならないように思います。

もう1つは、身の回りの環境を改善することがもつ意味。上で紹介した通り、マタティルタでは、生計・暮らしのプロジェクト(Livelihood Projects)として農園での野菜作り、コンポスト、イヤリング作りが進められており、収穫した野菜で作ったピクルス、イヤリングなどは販売が始められています。これらは、収入を得ることができる重要な活動。それに対して、掲示板作りそれ自体では収入を得ることにはつながりませんが、村を目に見えるかたちで変化させると同時に、元大工の男性のようにプロジェクトに多様な人が参加するきっかけになる。これは、長い目で見れば村の環境を良くすることにつながると考えています。このような環境改善の活動としては、高齢者住宅(Matatirtha Oldage Home)や女性グループの建物など人々が集まる建物の家具・クッションを作ったり、村のゴミ拾いをしたりすることなどがあり、こうした活動も上手くプロジェクトに組み合わせていくことができればと思います。