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ラウンドテーブル方式(佐竹台方式):地域住民全員が団地建替えの当事者となれる仕組み

南千里にあるOPH千里佐竹台は、ラウンドテーブル方式(佐竹台方式)により建替えが行われた団地です。ラウンドテーブル方式とは、団地の住民だけでなく、佐竹台の住区全体の住民が団地の建替えを考える先駆的な仕組みです。

元々、この敷地には790戸からなる府公社千里佐竹台団地がありました。1964年に入居が始まった府公社千里佐竹台団地は、大阪府住宅供給公社が千里ニュータウンで最初に建てた団地。

2001年、府公社千里佐竹台団地の建替えが発表。これに対して、隣接する住宅の住民から反対の声があがりました。山本茂氏の『ニュータウン再生:住環境マネジメントの課題と展望』(学芸出版社 2009年)では、府公社千里佐竹台団地が建替えをどのように進めたかが紹介されています。

千里ニュータウン佐竹台では、まず公社佐竹台団地(790戸)の建替え計画が2001年に発表された。居住者に大きな反対はなかったが、隣接する分譲集合住宅の居住者等から「高層化によって景観が悪化する」などの理由による反対があり、計画は行き詰まった。佐竹台団地の居住者であり、佐竹台地区の連合自治会長でもあった谷川一二氏は、隣接する分譲集合住宅の自治会と話し合いを続ける中から、分譲集合住宅側にも歩道が欲しいとの要望があることを掴み、この内容を含む両自治会の連名による要望書を公社と吹田市に提出した。その結果、公社の敷地をセットバックさせて歩道を確保するなどの回答が公社から得られた。これによって建替え計画が進むことになり、2007年2月に第1期の建替えが完了した(写真8・9)。
佐竹台団地の建替えでは、約1/2の敷地(再生地)に民間分譲マンションと、地域で必要とされる施設が整備されることになっていた。佐竹台連合自治会が中心になり、住区の住民、公社および市の職員の三者からなる再生地の活用に関する意見交換の場(ラウンドテーブルと呼ばれている)が数回開催された。そして、ここでの意見をもとに、子育て支援施設の設置が公社に認められ、再生地の事業コンペの計画条件に盛り込まれた。
※参考:山本茂『ニュータウン再生:住環境マネジメントの課題と展望』学芸出版社 2009年

こうした経緯を得て、府公社千里佐竹台団地は、OPH千里佐竹台として建て替わりました。OPH千里佐竹台、204戸は2007年3月に完成、OPH千里佐竹台II、356戸は2008年12月に完成。

ラウンドテーブル方式という先駆的な仕組みにより建替えられたOPH千里佐竹台では、上で紹介されている敷地のセットバックによる歩道の確保の他にも、敷地内を開放し周辺住民も通り抜けできる歩道とされた、歩道沿いには団地自治会による共同花壇がもうけられた、団地集会所にコミュニティ・カフェ「佐竹台サロン」が開かれたなど、佐竹台の人々が反映された団地となっています。

隣接する府営千里佐竹台住宅の建替えにおいても連合自治会が主導するラウンドテーブル方式が採用されました。建て替えでは府営千里佐竹台住宅の敷地の一部が民間に売却されていますが、売却された敷地に建設された分譲マンションには、佐竹台地域交流室「おひさまルーム」がもうけられることになり、子育て支援の拠点として開放されています。

このように佐竹台では、団地の住民だけでなく、住区全体の住民が、行政などと意見交換しながら団地の建替えを考える、つまり、住区全体(地域全体)が団地の建替えの当事者になれるラウンドテーブル方式という先駆的な仕組みが採用されました。けれども、この先駆的な方式は佐竹台以降の団地の建替えでは採用されていないのが現状です。