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復興の進展に伴う交通事故の増加について

岩手県沿岸部は、内陸部に比べて死亡事故率が高いという結果になっているとのこと。『岩手日報』には次のような記事が掲載されています。

「県警によると、沿岸5署管内の14〜17年の死亡事故率は4.7〜5.5%。08〜13年の1.9〜3.7%を大きく上回る。18年は6月末時点で8.0%とかなり高い状況。これに対し、内陸署と高速隊管内は08年以降、1.4〜2.6%とほぼ横ばいで推移する。
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県警は復興事業の本格化に伴う交通量増加を高い死亡事故率の一因と分析。特に大船渡、陸前高田の両市中心部には17年、大型商業施設が開業したことで車の流れが変わった。」
*「本県沿岸の安全〝黄信号〟 内陸より高い死亡事故率」・『岩手日報』2018年9月20日

記事に書かれているように「復興事業の本格化に伴う交通量増加を高い死亡事故率の一因と分析」とされているようです。
加えて、大船渡市・陸前高田市の中心部ではかさ上げがに伴い、通る度に道が変わっていることも原因かもしれません。

写真は大船渡市中心部にある看板。イオンタウン釜石まで42kmと書かれています。42km先のショッピングモールに行くことは都市に住んでいると想像できないかもしれませんが、これくらいの距離もショッピングモールの商圏になるのが地方。

これの裏返しとして、地方では自家用車がないと非常に暮らしにくいことを意味します。東日本大震災前からこうした状況だったわけですが、東日本大震災からの復興で生まれた街も自家用車の利用を前提として作られている。
死亡事故率が高まっていることは問題ですが、自家用車の運転ができない人の足の確保をどうするかも大きな問題です。

警察庁交通局「平成28年上半期における交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況について」(2016年9月15日)に掲載されている人口10万人当たりの自動車乗車中の死亡者数に関する統計を見ると、2006年、2016年いずれも死亡者数が多い年代は2つの山になっています。
1つは20〜24歳。この理由は運転免許を取得したばかりの人が多いことだと思われます。そしてもう1つは75歳以上。
この結果からは、75歳が自家用車の運転をやめる1つの目安になるかもしれません。

それでは75歳以上の人の割合はどのくらいなのか。大船渡市では75歳以上の人が敬老会の対象とされています。大船渡市末崎町の現在の人口は約4,100人。それに対して、今年の敬老会の対象者は946人。つまり、人口の約4分の1が75歳以上ということになります。

これほど多くの割合の人の足をどう確保していくか。これから向き合っていく必要のある大きな課題です。