『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

セールスフォース・トランジット・センター@サンフランシスコに新しく生まれた屋上広場

2018年8月12日、サンフランシスコのダウンタウンに新たな建築・広場がオープンしました。セールスフォース・トランジット・センター(Salesforce Transit Center)です*1)。最近はここを訪れる人が多く、観光名所にもなっていると知り合いから聞いて訪問しました。
トランジット・センターは長辺440m、短辺50mと非常に大きな面積を持つ建築で、設計はペリ・クラーク・ペリ・アーキテクツ(PCPA: Pelli Clarke Pelli Architects )*2)。数ブロックに渡る建物の1階は車道が通り抜けており、2~3階分は雲が覆うようなデザインになっています。

セールスフォース・タワー(Salesforce Tower)とミレニアム・タワー(Millennium Tower San Francisco)という2つの高層ビルの間、Fremont StとMission Stの交差点南側が広場になっており、ここがメインの入口。まだ完成していませんでしたが、広場にはロープウェイのようなものがあり、いずれこれを使って3階に上がれるようになると思われます。

広場から中に入ると吹き抜けの大きな空間。一部、天井がガラスになっています。タッチ式の大きなパネルがあり、サンフランシスコ市内の地図、トランジット・センターの案内を見ることも。

2階はバスターミナルになっており、バス停が並んでいます。

3階が「セールスフォース・パーク」(Salesforce Park)として、一般に無料で開放されている屋上広場で、2.2ha(0.22㎢)の大きさ。遊歩道が細長いエリアを巡っており、芝生の広場、テーブルが置かれた広場、子どもの遊び場、トイレなどのコーナーが並んでいます。読書スペースもあり、「リーディング・ルーム」(Reading Room)と書かれた本棚の本は借りることができます。
遊歩道にもベンチ。周囲のいくつかの建物とは、このレベルで連結されており、行き来できるようになっていました。

散歩したり、話をしたり、食事をしたり、読書したり、ノートパソコンを開いたりと、様々なかたちで過ごしている人がいました。様々な緑が植えられており、また、眺望もよく、非常に気持ちの良い空間です。

興味深いのは、屋上広場では様々なクラスが開かれていること。訪れた時には、芝生の広場でタイチが開かれていました。参加登録は特に不要なようで、通りかかった人も飛び入りで参加。講師の人に合わせて、30人ほどが身体を動かしていました。この他、編み物、ライティング(Wrting)のクラスが行われたり、音楽の演奏会が行われたりしています。

トランジット・センター1階の南東端も広場になっており、フードトラック・レーンとして食事を購入できる場所になっています。テーブルで食事をする人もいました。
ただし、オープンしたばかりということで、1階はまだ立入禁止になっているエリアもありました。

バスターミナルとは、単にバスの乗り降りをする場所ではなく、多くの人が集まる場所だと考えることができます。しかも、立地も良く、単一の建築では実現できない大きな規模がある。セールスフォース・トランジット・センターはこうした特徴を組み合わせることによって、都市に豊かな公共の広場を実現していると感じました。こうした広場が持てるところに、サンフランシスコという都市の豊かさを垣間見たような気がします。


  • *1)セールスフォース・ドットコム(salesforce.com)はサンフランシスコに本社を置く、顧客関係管理(CRM)ソリューションを中心としたクラウドコンピューティング・サービスの提供企業で、1999年3月に設立(Wikipedia「セールスフォース・ドットコム」のページより)。
  • *2)Wikipedia「Transbay Transit Center」のページより。