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テック企業が生み出す「都市から郊外への通勤」@サンフランシスコ

2018年9〜10月にサンフランシスコを訪問した時、サンフランシスコでは「都市から郊外への通勤」という動きが生まれていると伺いました。通常、通勤とは郊外から都市へという方向で行われますが、それとは逆方向の流れが生まれているとのこと。

サンフランシスコは、サンフランシスコ湾に面するベイエリア北部に位置します。ベイエリア南部のシリコンバレーにはGoogle(マウンテンビュー/Mountain View)、Apple(クパチーノ/Cupertino)、Facebook(メンローパーク/Menlo Park)を始めとする世界的なテック企業があります。
これらのテック企業のあるベイエリア南部は郊外住宅地で、若い社員は何もない郊外住宅地ではなくサンフランシスコのような都市に住みたいと考える人がいる。そのような人は、サンフランシスコに住んで、ベイエリア南部に通勤する、言わば「都市から郊外への通勤」というライフスタイルを選ぶようになってきたということです。
「都市から郊外への通勤」をサポートするために、テック企業はそれぞれ「テック・バス」(Tech Bus)という通勤用シャトルバスを運行。最初に「テック・バス」を運行したのはGoogleで、その後、Apple、Facebookなども運行するようになったという話でした。

「テック・バス」は窓が遮光ガラスになっている大型のバスで、朝夕を中心に、サンフランシスコでは頻繁に見かけます。

大多数の人はまだ従来のように郊外から都市に通勤しているようですが、テック企業は「都市から郊外への通勤」という逆方向の流れを生み出している。
ただし、こうした流れはジェントリフィケーションをもたらしているとのこと*1)。「テック・バス」が停車する地域では地価が上昇するという話を伺いましたが、テック企業の社員が住み始めたことでサンフランシスコの地価は非常に高騰。街が綺麗になり、お洒落な店舗が増えた反面、低所得者の住宅が奪われるという負の側面ももたらしています。ホームレスの人も増えているという話も伺いました。


  • *1)ジェントリフィケーション(Gentrification)とは、「都市において比較的貧困な層が多く住む中下層地域(インナーシティなど都心付近の住宅地区)に、再開発や新産業の発展などの理由で比較的豊かな人々が流入し、地域の経済・社会・住民の構成が変化する都市再編現象」のことで、「これにより、貧困地域の家賃・地価の相場が上がり、それまで暮らしていた人々が、立ち退きなどによって住居を失ったり、それまでの地域コミュニティが失われたりすることが問題となる。」(*Wikipedia「ジェントリフィケーション」のページより)