『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

柔軟な公共交通システムとしてのBRT大船渡線

岩手県大船渡市の盛駅と、宮城県気仙沼市の気仙沼駅を結んでいたJR大船渡線は、東日本大震災で大きな被害を受けました。JR大船渡線は鉄路での復旧が断念され、BRT(Bus Rapid Transit:バス高速輸送システム)による運行が始まりました。
復興の進展に伴い道路や居住エリアがどんどん変化していく被災地において、BRTがもつ柔軟性が大きな役割を担っていると言えます。

1つは駅の新設や移設が容易であること。
写真はBRT大船渡線の最新の路線図ですが、今年3月14日には陸前今泉駅、大船渡丸森駅、地ノ森駅、田茂山駅の4つの駅が新設されました。駅といっても実質的には「バス停」であり、鉄道駅に比べると新設や移設が容易だというメリットがあります。

もう1つは、運行する車両がバスであるため、専用道も一般道も走行できること。
BRT大船渡線の一部の区間では、かつてのJR大船渡線の線路がBRT専用道とされています。そのため、交通渋滞の影響を受けずに走行することが可能です。一方、JR大船渡線の線路が被災してしまった区間は一般道を走行しています。それゆえ、特に津波の大きな被害を受けた陸前高田市では道路や居住エリアの変化に対応することが可能となっています。

このような柔軟性をもつBRTは、今後ますます高齢化が進み、自家用車が運転できない人が多くなってくる地域においても重要な役割を担うことになると考えています。