※ワシントンDCの新型コロナウイルス感染症への対応はこちら、検査体制の状況はこちらで紹介しています。
アメリカの首都ワシントンDC(人口は約70万人)では2020年3月7日に初めての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が見つかりました。
2020年3月30日に発令された外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)は、2020年5月29日に解除され、フェーズ1が開始。2020年6月22日からフェーズ2が始まりました。しかし、感染の再拡大を受け、2020年11月23日にはフェーズ2における規制を強化する措置が発表されました*1)。
ワシントンDCの2019年時点の人口は約70万人。1日の感染者数は、外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた2020年3月30日~2020年5月29日の期間には300人を超えた日もありましたが、その後減少していました。ところが、2020年11月になると急増し、2020年12月末には500人近い日も見られるようになっています。その後は減少し、2021年2月末には100人を下回る日も見られるようになっています。
一方、1日の死亡者数は、出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は20人近い日もありましたが、その後は減少しています。ただし、2020年11月中旬以降はやや増加し、2021年1月には10人を超える日も見られるようになりました。
ワシントンDCでは検査体制も徐々に拡充されてきました。新型コロナウイルス感染症の拡大の仕方が異なるため単純な比較はできませんが、ワシントンDCの検査体制は、今でも検査を受けるのが難しい日本とは大きく異なっています。
*1)ワシントンDCにおける新型コロナウイルス感染症への対応はこちらを参照。
目次
検査体制
ワシントンDCではドライブスルー、及び、消防署を含めたウォークアップ(徒歩)の検査場がもうけられています。当初は予約が必要でしたが、その後、検査場によっては予約が不要とされています。検査体制は徐々に拡充され、新型コロナウイルス感染症の症状がある住民、新型コロナウイルスに暴露した人は、医師の診断書が不要で、無料の検査を受けることが可能な状態となっています。
「DCの3歳以上の住民で、新型コロナウイルス感染症の症状(発熱、咳、喉の痛み、息切れや呼吸困難、うっ血、体の痛み、悪寒、鼻水)がある人、または、新型コロナウイルスへの暴露がわかった人は新型コロナウイルス感染症の検査を受ける必要があります。ウォーク・イン(徒歩)の検査場では、医師の診断書は必要ありません。結果を待つ間、コミュニティを守るために自宅に待機してください。
列に並ぶ時間を節約する
来場前に登録して、列に並ぶ時間を節約してください。
DCのウォークアップ(徒歩)の検査場では、医師の診断書や予約は必要ありません。しかし、列に並ぶ時間を節約するために、まず「coronavirus.dc.gov/register」にアクセスし、スマートフォン、タブレット、コンピューターからプロファイルを作成してください。」
※DC政府の「District of Columbia COVID-19 Testing Sites」のページに記載の内容を翻訳。
「〔2020年〕11月23日(月)から、健康保険に加入している人には、公共検査場(public site)で検査を受ける際に、保険証の提示をお願いすることになりました。住民は引き続き無料で検査を受けることができ、誰にも検査の自己負担金が請求されることはありません。保険に加入していない人は、引き続き無料で検査を受けることができます。検査を断られたり、料金を請求されたりすることはありません。」
※DC政府の「District of Columbia COVID-19 Testing Sites」のページに記載の内容を翻訳。
検査数は、2020年11月末には1日に1万件を超えるまでに増加しています。ワシントンDCの人口約70万人に対して、2021年2月末時点の延べ検査数は約123万件と人口を超えており、日本に比べると人口あたりの検査数の多さがお分かりいただけると思います。
陽性率は外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は大きかったものの、その後小さくなっていました。しかし、2020年11月になるとやや大きな値となっています。
検査体制の拡充の流れ
- 2020年4月23日から、University of the District of Columbia Community College(UDC-CC)のBertie Backus Campusに新たな検査場を開設。ウォークアップ(徒歩)およびドライブスルーが可能。検査には予約が必要なため、事前にホットラインに電話すること(2020年4月22日の記者会見)。
- 検査基準・優先グループを拡大し、新型コロナウイルス感染症に感染した経歴を持ち、かつ、リスクが高いグループに属している無症状の一部の個人に検査の優先順位を付けることを許可する(2020年4月22日の記者会見)。
- 検査の優先基準を拡大し、陽性が確認された患者と接触歴のある無症状の重要インフラ労働者を含めることを発表。これには、食料品店の従業員、基幹的な政府職員、その他DCにおいて継続して職場に出勤している労働者が含まれる(2020年4月28日の記者会見)。
- 今週(2020年5月5日)からハワード大学病院(Howard University Hospital)に新たな検査場を開設。新たな検査場を開設。検査には電話予約が必要(2020年5月4日の記者会見)。
- 新型コロナウイルス感染症への曝露率調査のため、抗体検査を実施する。調査は医療従事者、第一線従事者、エッセンシャルワーカー、集合施設に住む個人などを含む、曝露のリスクが高い個人に焦点をあてて実施される(2020年5月11日の記者会見)。
- 2020年6月1日から、新たなウォークアップ(徒歩)の検査場(Judiciary Square)を開設。検査は無料で事前予約不要(2020年5月29日の記者会見)。
- 新たに市内の消防署にウォークアップ(徒歩)の検査場を開設。検査は無料(2020年6月5日の記者会見)
- 検査を受ける必要がある人は全員受けるようにすること。ウォークアップ検査場は無料かつ予約不要で検査を受けることが可能。検査が必要な人は、[1]新型コロナウイルス感染症の症状がある人、[2]陽性患者と濃厚接触がある人(接触から3~5日後に受検すること)、[3]フェーズ1にて再開された活動または憲法修正第一条の活動(抗議活動等)に参加した人で発症があるか、陽性患者と接触した可能性があり心配な人(3~5日後)(2020年6月10日の記者会見)。
- 6月15日から、消防署における検査、及び、子ども(6才以上)を対象とした検査場が拡大。また、ネイビー・ヤードのカナルパークにおいて、試験的な抗体検査(無料)が開始(2020年6月15日の記者会見)。
- 7月14日から抗体検査場を1つ追加して、計3会場で行う。全て予約が必要(2020年7月13日の記者会見)。
※在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
このようにワシントンDCでは症状があったり、新型コロナウイルスに暴露した可能性があったりと、少しでも不安があれば、医師を経由することなく検査を受けることができる状態になっています。
ワシントンDCの検査場
DC政府の「District of Columbia COVID-19 Testing Sites」のページには、記事執筆時点(2020年12月2日)で次の検査場が掲載されています。
- ①無料の公共検査場(Free Public Testing Sites):8ヶ所
- ②検査を行なっているDCの消防署(Testing at DC Firehouses)とGeico Garage@Nationals Park:9ヶ所
- ③他の提供者による検査場:18ヶ所
- ④エッセンシャルワーカーに対する無料のポップアップ検査場:1ヶ所
①無料の公共検査場(Free Public Testing Sites)
- Anacostia
・ウォークアップ(徒歩):月・水・金曜の8時30分~13時
・ドライブスルー:月・水・金曜の8時30時~13時- UDC-CC Bertie Backus Campus
・ウォークアップ(徒歩):火・木曜の8時30分~13時
・ドライブスルー:火・木曜の8時30分~13時- Judiciary Square
・ウォークアップ(徒歩):月~金曜の8時30分~13時- Deanwood Aquatic Center*
・ウォークアップ(徒歩):3月2日(火曜)の10時〜16時- Emery Heights Community Center*
・ウォークアップ(徒歩):3月3日(水曜)の12時~16時- Ridge Road Community Center*
・ウォークアップ(徒歩):3月4日(木曜)の12時~16時- Fort Stanton Rec Center*
・ウォークアップ(徒歩):3月5日(金曜)の12時~16時- Hillcrest Recreation Center*
・ウォークアップ(徒歩):3月6日(土曜)の12時~16時
いずれの検査場も予約は不要となっています。Anacostia、UDC-CC Bertie Backus Campus、Judiciary Squareは継続的に開設されている検査場。一方、*をつけている5ヵ所は非営利法人COREとのパートナーシップによって開設されている検査場で、日時を限定して開設されています。
検査を行なっているDCの消防署(Testing at DC Firehouses)とGeico Garage @ Nationals Park
- Geico Garage@Nationals Park
・ウォークアップ(徒歩):火〜金曜の14時30分~19時30分- FEMS Engine 4
・ウォークアップ(徒歩):月・水・金の14時30分~19時30分- FEMS Engine 11
・ウォークアップ(徒歩):月・水・の14時30分~19時30分- FEMS Engine 24
・ウォークアップ(徒歩):月・水・の14時30分~19時30分- FEMS Engine 31
・ウォークアップ(徒歩):月・水・の14時30分~19時30分- FEMS Engine 8
・ウォークアップ(徒歩):火・木曜の14時30分~19時30分、土曜の12時~16時- FEMS Engine 10
・ウォークアップ(徒歩):火・木曜の14時30分~19時30分、土曜の12時~16時- FEMS Engine 30
・ウォークアップ(徒歩):火・木曜の14時30分~19時30分、土曜の12時~16時- FEMS Engine 33
・ウォークアップ(徒歩):火・木曜の14時30分~19時30分、土曜の12時~16時
消防署での検査は2020年6月上旬から始まりました。いずれの検査場も予約は不要です。
③他の提供者による検査場:16ヶ所
- Community of Hope
- GW University Medical System ◇
- All Care Family Medicine & Urgent Care ◇
- Family and Medical Counseling Service
- Mary’s Center ◇
- Unity Health Care ◇
- Whitman-Walker Health
- Medstar Health ◆
- Sibley Memorial Hospital
- Howard University Hospital
- Bread for the City
- Elaine Ellis Center of Health
- Walgreens (1401 Rhode Island Ave., NE)
- District Urgent Care
- District Urgent Care (4903 Georgia Avenue, NW)
- Farragut Medical and Travel Care
□Additional Member Testing Sites
- One Medical ◆
- Kaiser Permanente ◆
ウェブサイトには、いずれの供給者も予約先の電話番号、または、ウェブサイトが掲載されています。
◇をつけた4ヶ所は2020年4月13日時点で公共検査場(Public Testing Sites)として、◆をつけた3ヶ所は2020年4月13日時点でメンバー限定の検査場(Member Specific Testing Sites)として既に開設されるなど、早い段階で開設されています*2)。
④エッセンシャルワーカーに対する無料のポップアップ検査場
DC保健局(DC Halth)、ダウンタウン(the Downwotn)、Golden Triangle BIDsがエッセンシャルワーカーへの無料の検査を提供するため、I Street NW(ブラック・ライヴズ・マター・プラザの交差点近く)でポップアップの検査場(仮設の検査場)を開設しています。
対象となるエッセンシャルワーカーとして、ウェブサイトには次のような職種が掲載されています。
- ホテルのスタッフ
- レストランの従業員
- 建築技術者
- 環境サービススタッフ
- 管理スタッフ(Janitorial staff)
- セキュリティ・スタッフ
- 在宅で日常業務を行うことができない個人
DC政府の「District of Columbia COVID-19 Testing Sites」のページには、次のように自身の医療供給者(health care provider)を通して検査を受けることが奨励されています。
「DCのウォークアップやドライブスルーを含め、DCには多くの無料検査場がありますが、自身の医療供給者(health care provider)を通して検査を受けることを奨励します。なぜなら、検査結果が戻ってきた時には、患者は既にヘルスケア(health care)につながっているからです。しかし、新型コロナウイルス感染症の検査を必要とする人がいて、その人の医療供給者(health care provider)が検査を提供できない場合は、DCのウォークアップかドライブスルーのいずれかの検査場に来場するべきです。」
※DC政府の「District of Columbia COVID-19 Testing Sites」のページに記載の内容を翻訳。
DC政府の「District of Columbia COVID-19 Testing Sites」のページには、検査場の他に、Ready Responders、Pixel by LabCorp、Safeway Pharmacyの3つの供給者は、自宅での検査(検査キットの配達)にも対応していることが掲載されています。
- 2)ワシントンDC市長による2020年4月13日の会見資料より。