※メリーランド州の新型コロナウイルス感染症への対応はこちら、検査体制の状況はこちらで紹介しています。
メリーランド州の2019年時点の人口は約600万人。アメリカ東海岸のメリーランド州(人口約600万人)では2020年3月5日に初めての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が見つかりました。
2020年3月30日に発令された外出禁止令(自宅待機命令:Stay-at-Home Order)は、約1ヶ月半が経過した2020年5月15日に解除され、自宅待機に関する勧告(Safer-at-Home Public Health Advisory)に移行。復興プラン『メリーランド・ストロング:復興のためのロードマップ』(Maryland Strong: Roadmap to Recovery)に示されたステージ1が開始されました。そして、2020年6月5日からステージ2が、2020年9月4日からステージ3が開始されました。しかし、2020年11月になって再び感染が拡大してきたことを受けて、新たな措置が発表されています*1)。
メリーランド州の2019年時点の人口は約600万人。1日の感染者数は、外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた2020年3月30日~2020年5月15日の期間は1,800人に近かった日もありますが、その後減少。2020年7月下旬にやや増加し1,000人を超える日もありましたが、その後はまた減少しました。ところが、2020年11月になると急増し、2020年12月に入ると3,000人を超える日も見られるようになりました。その後は減少し、2021年2月末には1,000人を下回るようになっています。
一方、1日の死亡者数は外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は多く約170人という日もありましたが、その後減少しました。2020年11月に入ると増加がみられましたが、2021年2月末には20人を下回る日も見られるようになりました。
メリーランド州では検査体制も徐々に拡充されてきました。新型コロナウイルス感染症の拡大の仕方が異なるため単純な比較はできませんが、メリーランド州の検査体制は、今でも検査を受けるのが難しい日本とは大きく異なっています。
*1)メリーランド州における新型コロナウイルス感染症への対応はこちらを参照。
検査体制
メリーランド州では2020年3月17日という早い段階で、州内の全ての車両排気ガス検査場(VEIP=Vehicle Emissions Inspection Program)を活用して、ドライブスルー方式の検査場を設置することが発表されています。
当初、検査のためには医師の検査指示書(order)と予約が必要とされていましたが、2020年5月22日からは複数の検査場で医師の検査指示書や予約なしでの検査が可能となり、これにより新型コロナウイルス感染症に暴露した可能性がある人でも検査を受けることができるようになっています。
2020年5月22日からは薬局・コンビニエンスストアのチェーンであるCVSでも医師の検査指示書が不要のドライブスルー検査を受けることができるようになっています。
1日の検査数は増加しており、2020年12月には1日に6万件を超える日も見られるようになりました。メリーランド州の人口約600万人に対して、2021年2月末時点の延べ検査数は約790万件と人口を上回っており、日本に比べると人口あたりの検査数の多さがお分かりいただけると思います。
陽性率は外出禁止令(自宅待機命令)が発令されていた期間は大きかったものの、その後は2~3%ほどを推移しています。しかし、2020年11月に入ると陽性率が5%を超えたことから新たな措置も発表され、2021年2月に入ると低下しつつあります。
検査体制の拡充の流れ
- 州内全ての車両排気ガス検査場(VEIP)を閉鎖し、ドライブスルー方式の検査センターの設置を発表(2020年3月17日)。
- オーウィングス・ミルズ (Owings Mills)、プリンス・フレデリック (Prince Frederick)の車両排気ガス検査場(VEIP)に、新たなドライブスルー検査場を開設することを発表。これにより州内の同種の検査場は7か所となる(2020年4月27日)。
- 州西部ヘイガーズタウン(Hagerstown)の車両排気ガス検査場(VEIP)に新しいドライブスルー検査場を開設することを発表(2020年5月4日)。
- ウェストミンスターのキャロル郡農業センター(Carroll County Agriculture Center)にドライブスルー検査場を新設することを発表。これにより州内の同種の検査場は9か所になる(2020年5月13日)。
- プリンスジョージズ郡クリントン(Clinton)とハイアッツビル(Hyattsville)の車両排気ガス検査場(VEIP)に、新たな検査場を開設することを発表(2020年5月19日)。
- 今後、新型コロナウイルスに暴露した可能性があるが、症状が出ておらず、医師からの検査指示書がない人でも、州内の4カ所の検査場で予約無しのドライブスルー検査を受けることが可能になることが発表される(2020年5月22日~)。検査料は保険でカバーされる(2020年5月19日)。
- CVS17店舗(ドライブスルー窓口)で、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)が定める要件及び年齢に関するガイドラインを満たす人を対象に、ドライブスルー検査の受付が開始。検査希望者は事前にCVSのウェブサイトで予約が必要。医師からの検査指示書は不要(2020年5月22日)。
- プリンスジョージズ郡アッパー・マルボロ(Upper Malboro)にあるテーマパーク「シックス・フラッグス・アメリカ(Six Flags America)」に事前予約や医師の診断なしで受検できる新たなドライブスルー検査場を設置することを発表。既に発表されているプリンスジョージズ郡クリントン車両排気ガス検査場のドライブスルー検査場も5月28日から稼働予定であり、州内のドライブスルー検査場はこれで11カ所になる(2020年5月27日)。
- ドライブスルー検査を行う州内のCVSが30店舗に拡大(2020年5月28日)。
※在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」より。ただし、表現を改めている部分がある。
検査場
メリーランド州の「新型コロナウイルス感染症の検査」(COVID-19 Testing in Maryland)のページには、主要な検査場の一覧が掲載されています。
一覧には全ての検査場が掲載されているわけではないと但し書きが付けられていますが、現時点(2020年2月23日更新の情報)で274ヶ所の検査場が掲載。最近でも検査場の数は徐々に増加しています。
検査場の設置主体は州、地方保健局(Local Health Department)、プライベートに分かれており、最も多いのがプライベート。プライベートのうち62ヵ所が薬局・コンビニエンスストアのチェーンであるCVSとなっています。
州が開く検査場としては、車両排気ガス検査場(VEIP)を活用したドライブスルー検査場、プリンスジョージズ郡アッパー・マルボロ(Upper Malboro)にあるテーマパーク「シックス・フラッグス・アメリカ」(Six Flags America)のドライブスルー検査場などがありますが、車両排気ガス検査場(VEIP)を活用したドライブスルー検査場は2020年10月29日更新の情報には閉鎖のため掲載されていません。また、「シックス・フラッグス・アメリカ」のドライブスルー検査場も2021年2月23日更新の情報には閉鎖のため掲載されていません。このように、州が設置する検査場は少しずつ閉鎖されています。
予約の有無と医師の指示書の有無によって整理すると、現時点(2020年2月23日更新の情報)では予約は必要だが、医師の指示書は不要の検査場が159ヶ所と最も多く、CVSがここに含まれます。予約も医師の指示書も不要の検査場は90ヶ所と次に多くなっており、以前は、プリンスジョージズ郡アッパー・マルボロ(Upper Malboro)にあるテーマパーク「シックス・フラッグス・アメリカ」(Six Flags America)のドライブスルー検査場がここに含まれていました。
検査の種類
メリーランド州の「新型コロナウイルス感染症の検査」(COVID-19 Testing in Maryland)のページには、検査を受けることができる最も一般的なタイプの検査として、次の3つが掲載されています(*ただし、2021年3月1日の記事執筆時点ではこの情報は掲載されていない)。これは日本で行われている検査と同じです。
■PCR検査/分子増幅検査(PCR or Molecular Amplification Diagnostic)
- 最も一般的な検査。
- 現在感染しているかを確認する。
- 個々人を高精度で検査するのに最適な方法で、感染爆発(outbreak)発生時のみ推奨される。
- 鼻腔・咽頭拭い液(ほとんどの検査)、唾液(少数の検査)。
- 結果は通常、1~2日で判明。検査は検査期間で行われ、輸送や処理に時間がかかるため。しかし、15~45分以内に結果が判明する現場での検査(ポイントオブケア(POC)の検査)もある。
■抗原迅速検査(Rapid Point-of-Care(Antigen Diagnostic))
- アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)か緊急使用許可(Emergency Use Authorization:EUA)を受けた、あるいは、臨床検査室改善修正法(CLIA法)認定の検査室によって独自に検証された抗原迅速検査のみ受験可能。
- 現在感染しているかを確認する。ただし、PCR検査より精度が低い。
- 高齢者施設や寮のような集合的な環境にいる人など、特に症状のある人を迅速に検査するのに最適な方法。
- 鼻腔拭い液。
- 15~20分で結果が判明。現場に設置された装置(ポイントオブケア(POC)装置)で処理され、一般的に「迅速」検査と呼ばれている。
■抗体検査(Serology(Antibody))
- 過去の感染を検査する。
- 過去の感染を確認するもので、将来の感染に対する免疫力を確認する検査ではない。
- フィンガー・スティック(指からの採血)などによる採血。
- 1~3日で結果が判明。