アメリカでは2020年12月から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始められています。
2020年12月11日、アメリカのファイザー(Pfizer)とドイツのビオンテック(BioNTech)が共同開発したワクチンが食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から緊急使用の許可を得て、2020年12月14日から接種が始められました(※「アメリカでワクチン接種開始、工場から病院までの道のり 新型コロナウイルス」 ・『BBC News』2020年12月15日)。
この後、モデルナ(Moderna)製のワクチンも緊急認可。さらに、アストラゼネカ(AstraZeneca)製のワクチンが治験中とされています。
目次
ワクチン接種のフェーズ
アメリカの首都ワシントンDC(人口約70万人)では、2020年12月14日の週に6,825本のファイザー製のワクチンを受け取り、ワクチン接種が始められていますが、ワクチン不足のため次のような8つの段階が設けられ、優先順位の高い人々から順番にワクチン接種が行われています*1)。
なお、以下でいう「基幹職員」(Essential employees)とは、リモートワーク/テレワークでは業務を行うことができず、公衆衛生上の緊急事態が発生している間にも職場に出勤する必要がある人のことを表します*2)。
フェーズ1A
■罹患・死亡の防止
- 長期ケア施設の住民(Long Term Care Residents)
■社会機能の保全
- 医療従事者(獣医師を含む)(Healthcare Personnel(including veterinary medicine))
- 消防・救急医療従事者(Fire & Emergency Medical Personnel)
- 最前線の公衆衛生労働者(Frontline Public Health Workers)
フェーズ1Bティア1
■罹患・死亡の防止
- 65歳以上のDC住民(DC Residents age 65 years and older)
集合施設の住民(中間ケア施設、地域居住施設、グループホーム、ホームレス・シェルター)(Congregate Settings(intermediate care facilities, community residential facilities, group homes, homeless shelters)) - 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- 看守(Correctional Officers)
- 集合施設のスタッフ(Staff working in Congregate Settings)
- 新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を行うクリニックの運営を支援する非医療従事者(Non-healthcare personnel supporting operations of COVID-19 vaccination clinics)
- 以上のフェーズ該当者は継続
フェーズ1Bティア2
■罹患・死亡の防止
- 矯正施設・拘置所(Correctional Facilities and Detention Centers)
- 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- 法の執行・治安(Law Enforcement/Public Safety)
- K12(初等中等教育)施設の全スタッフ(All staff working in K-12 educational facilities)
- 保育施設の全スタッフ(All staff working in child care facilities)
- 食品雑貨店の全スタッフ(All staff working in grocery store)
- 以上のフェーズ該当者は継続
フェーズ1Bティア3
■罹患・死亡の防止
- 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- 裁判所のスタッフや法律サービスを提供する個人(Staff working in Courts and Individuals Providing Legal Services)
- 健康、福祉、社会サービスのアウトリーチプログラムに従事する個人(Individuals working in health, human services, and/or social services outreach programs)
- 公共交通機関の現場従業員(Frontline employees of public (mass) transit)
- 製造業に従事する個人(Individuals employed in manufacturing)
- 食品の包装・流通に携わる個人(Individuals working in food packaging and distribution)
- 米国郵政公社の従業員(Employees of US Postal Service)
- 以上のフェーズ該当者は継続
フェーズ1Cティア1
■罹患・死亡の防止
- 14〜64歳のDC住民で、新型コロナウイルス感染症の合併症のリスクが高い慢性疾患のある人、医療提供者によって定義された慢性疾患のある人(DC Residents age 16-64 years and older with a chronic medical condition with increased risk of complications for COVID-19 and/or a chronic medical condition as defined by their health care provider)
- 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- フードサービスのスタッフ(Staff working in food service)
地方自治体の基幹職員(Essential employees in local government agencies) - 公益企業の基幹職員(Essential employees of public utilities)
- 非政府の健康、ヒューマン、社会サービスの組織/機関の基幹職員(Essential employees in non-governmental health, human, and social services organizations/agencies)
- 商業施設や住宅不動産のメンテナンスや環境サービスに従事する個人(Individuals working in commercial and residential property maintenance and environmental services)
- 以上のフェーズ該当者は継続
フェーズ1Cティア2
■罹患・死亡の防止
- 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- 公共交通機関以外の輸送サービスに従事している個人(ハイヤー、ライドシェアなど)(Individuals working in non-public transit transportation services(i.e. for hire vehicles, ride share))
- 物流、配送、宅配に従事する個人(Individuals working in logistics/delivery/courier services)
- メディア、マスコミの基幹職員(Essential employees working in media and mass communications)
フェーズ1Cティア3
■罹患・死亡の防止
- 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- 高等教育機関(カレッジ、大学、専門学校など)の全ての基幹職員(All essential employees of institutions of higher education(i.e. colleges, universities, trade schools))
- 建設業に従事する個人(Individuals working in construction)
- ITに従事する全ての基幹職員(All essential employees working in information technology)
- 連邦政府機関の基幹職員(Essential employees in federal government agencies)
- 商業施設や住宅不動産に携わる個人(Individuals working in commercial and residential property management)
フェーズ2
■罹患・死亡の防止
- 以上のフェーズ該当者は継続
■社会機能の保全
- 以上のフェーズに含まれていない16歳以上の全てのDC住民
- 以上のフェーズ該当者は継続
ワクチン接種のスケジュール
ワシントンDCでは以上のようにワクチン接種のフェーズが分けられており、記事執筆時点(2021年1月25日)では、フェーズ1Bティア1となっています。
2021年3月15日発表
2021年3月15日には、次のようなスケジュールが発表されました*3)。
- 2021年3月15日〜:フェーズ1Bティア3、フェーズ1Cティア1
- 2021年3月29日(予定)〜:フェーズ1Cティア2
- 2021年4月12日(予定)〜:フェーズ1Cティア3
- 2021年5月1日(予定)〜:フェーズ2
2021年4月5日発表
2021年4月5日には次のようなスケジュールの前倒しが発表されました*4)。
- 2021年4月12日(予定)〜:フェーズ1Cティア3
- 2021年4月19日(予定)〜:フェーズ2
2021年4月9日発表
さらに、2021年4月9日には次のようなスケジュールの前倒しが発表されました*5)。
このスケジュールの前倒しにより、2021年4月12日以降には16歳以上の全てのDC住民がワクチン接種の対象とされることになります。
注
- 1)DC政府の「Vaccination Program Phases with Tieres」January 11, 2021より。
- 2)DC政府の「Vaccination Program Phases with Tieres」January 11, 2021では次のように説明されている。「Essential employees are unable to execute their job functions remotely/via telework and are required to report for duty in-person during the public health emergency.」
- 3)「CORONAVIRUS Situational Updated」March 15, 2021
- 4)2021年4月6日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」
- 5)2021年4月10日配信の在アメリカ合衆国日本国大使館「領事メール」
(更新:2021年4月11日)