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千里ニュータウン居住者の就業・就学の状況:2020年国勢調査より

近年、千里ニュータウンでは集合住宅の大規模な再開発が行われてきました。これによって千里ニュータウンとして開発された12住区の人口が2020年に10万人を超えるなど、居住者の大きな移動が生まれています。この記事では、居住者がどこで働き、どこに通学しているのかという就業・就学の状況をみていきたいと思います*1)。

※2020年国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計した結果をもとに作成。

15歳以上の就業者数

千里ニュータウンとして開発された12住区の就業者数は、約2,000人~4,000人で、人口に対する割合は約35%~40%となっています。千里ニュータウンとして開発されなかった上新田は、人口に対する就業者の割合が12住区よりやや大きくなっています。
性別による違いをみると、人口に対する就業者の割合は、男性が約45%~約50%、女性が約30%~40%というように、男性が女性より約10%~15%大きくなっています。これは、千里ニュータウンとして開発された住区に限らず、吹田市全域、豊中市全域にもあてはまります。

※2020年国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計した結果をもとに作成。

就業地

千里ニュータウンとして開発された12住区の就業者が、どこで働いているのかをみると、約6%が自宅で働いていることがわかります。この割合は、上新田、吹田市全域、豊中市全域とほぼ同じ割合です。
12住区の就業者のうち「自宅外の自市区町村で従業」、つまり、居住している市内に通勤している人は約25%。12住区の就業者は、吹田市と豊中市の全域の就業者に比べると、居住している市内に通勤している人の割合がやや小さくなっています。ただし、千里ニュータウンでも初期に開発され、南東に位置する佐竹台、高野台では居住している市内(吹田市内)に通勤している人の割合が大きくなっています。
12住区の就業者のうち「県内他市町村で従業」、つまり、大阪府内に通勤している人は約60%であり、吹田市全域、豊中市全域の就業者の割合に比べるとやや大きな割合となっています。
なお、従業地については上新田も、千里ニュータウンとして開発された12住区と同じ割合になっています。
性別による違いをみると、「自宅外の自市区町村で従業」、つまり、居住している市内に通勤している人の割合が、女性は男性のほぼ倍であること、逆に、「県内他市町村で従業」、つまり、大阪府内に通勤している人の割合は男性の方が大きいことという大きな違いがみられます。特に佐竹台、高野台の女性就業者は、半数弱が同じ吹田市内に通勤していることもわかります。なお、自宅で働いている人の割合は性別による大きな違いがみられません。

※2020年国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計した結果をもとに作成。

15歳以上の就学者数

千里ニュータウンとして開発された12住区の就学者数は、約200人~600人で、人口に対する割合は約3%~6%となっています*2)。人口に対する就学者の割合は、吹田市全域が5.1%であるのに対して吹田市域8住区が4.7%、豊中市域全域が4.5%であるのに対して豊中市域4住区は4.2%。住区による違いがあるものの、全体的にみれば、千里ニュータウンとして開発された住区の方がやや人口に対する就学者の割合が小さくなっています。
性別による違いをみると、人口に対する就学者の割合は、男性が約3%~7%、女性が約3%~5%と、やや男性の方が女性より大きな割合になっています。これも、千里ニュータウンとして開発された住区に限らず、吹田市全域、豊中市全域にもあてはまります。

※2020年国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計した結果をもとに作成。

就学地

千里ニュータウンとして開発された12住区の就学者が、どこに通学しているのかをみると*3)、約30%が「自宅外の同市区町村へ通学」、つまり、居住している市内に通学、約50%が「県内他市町村へ通学」、つまり、大阪府内に通学、約20%が「他県へ通学」していることがわかります。上新田の就学者の通学については、12住区の就学者と大きな違いはみられません。
住区による違いをみると、吹田市域の住区の就学者の方が、豊中市域の住区の就学者よりも、居住している市内に通学している割合が大きいという傾向を見出すことができます。
性別による違いについては、女性の方が男性より「他県へ通学」している人の割合が大きいことがわかります。

※2020年国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを集計した結果をもとに作成。


国勢調査の結果から、千里ニュータウンの居住者の就業と就学の状況をみてきました。この結果は次のように整理することができます。(※以下に記載しているのは結果に関連するメモである)。

■就業について

  • 千里ニュータウンとして開発された12住区では、人口に対する就業者の割合は約35%~40%。上新田では、人口に対する就業者の割合が約44.5%と12住区よりやや大きい。
  • 人口に対する就業者の割合は、男性が女性より約10%~15%大きい。
  • 12住区の就業者の約6%が自宅で働いている。性別による違いはみられない。
  • 12住区の就業者は、居住している市内に通勤している人の割合が、吹田市全域・豊中市全域に比べるとやや小さい。ただし、千里ニュータウンでも初期に開発され、南東に位置する佐竹台、高野台では吹田市内に通勤している人の割合が大きい。※この結果から、千里ニュータウンの南西部では、千里ニュータウン外の周辺地域との関わり方が他の住区と異なっている可能性を考えることができる。
  • 12住区の就業者は、大阪府内に通勤している人の割合が、吹田市全域・豊中市全域に比べるとやや大きい。※この結果から、千里ニュータウンはまち開きから60年が経過してもベッドタウンとしての性格を持ち続けていると考えることができる。
  • 上新田の就業者と、12住区の就業者の就業地には大きな違いはみられない。※現在の上新田は、約400年の歴史をもつ上新田集落の中心部であり、千里ニュータウンとしては開発されなかった。しかし、千里ニュータウン開発後に建設された集合住宅の居住者の割合が大きいため、居住者の働き方は、千里ニュータウンとして開発された住区と大きな違いがみられないと考えることができる。
  • 男性は大阪府内に、女性は居住している市内に通勤している人の割合が大きい。特に佐竹台、高野台の女性就業者の半数弱が吹田市内に通勤している。※女性は男性より、自宅の近くで働くという一般的な傾向が、千里ニュータウンにもみられるということである。

■就学について

  • 千里ニュータウンとして開発された12住区では、人口に対する就学者の割合は約3%~6%。この割合は、吹田市全域、豊中市全域の割合よりやや小さい。※高齢化率の違いがこの結果に影響している可能性がある。
  • 人口に対する就学者の割合は、男性の方が女性よりやや大きい。※男性の方が女性よりも就学期間が長い、つまり、高学歴であることが、この結果に現れていると考えることができる。
  • 12住区の就学者の約30%が居住している市内に、約50%が大阪府内に、約20%が他県へ通学している。他県に「通学」している就学者の割合は、他県に「通勤」している就業者の割合より大きいことになる。
  • 上新田と12住区では、就学者の通学に大きな違いはみられない。
  • 吹田市域の住区の方が、豊中市域の住区より、居住している市内に通学している就学者の割合が大きい。
  • 女性の方が男性より、他県へ通学している人の割合が大きい。

なお、自宅で働く人が約6%という結果は、新型コロナウイルス感染症が広がった年である2020年の国勢調査時点の結果です。その後、新型コロナウイルス感染症をきっかけとして働き方が変わった人がいる可能性があり、この点については次回、2025年の国勢調査の結果が注目されます。


■注

  • 1)この記事は、2020年国勢調査の「小地域集計」「27:大阪府」のデータを独自に集計して得たデータに基づくものである。なお、国勢調査では就業者、就学者が15歳以上の居住者を対象として調査されている。
  • 2)国勢調査で調査されているのが15歳以上の就学者数であるため、この記事における就学者数とは、おおよそ高校生以上と見なすことができる。また、この記事で扱っているのは人口に対する就学者の割合であり、学校の進学率でない。
  • 3)国勢調査の結果には「自宅で従業」という項目がもうけられているが、0人である。