『わたしの居場所、このまちの。:制度の外側と内側から見る第三の場所』(水曜社, 2021年)のご案内

べったりでもなく、よそよそしくもなく@親と子の談話室・とぽす

先日、東京都江戸川区にある喫茶店、「親と子の談話室・とぽす」に行きました。
顔を見ると、「久し振り、最近どうしてるのかなぁと思ってた」と声をかけてくださり、それだけでホッとした気持ちになります。

「親と子の談話室・とぽす」が開かれたのは、もう20年も前のこと。「思春期の子どもたちが、親でも学校の先生でもない、利害関係のない大人たちと出会えるような場所にしたい」。こんな思いを抱いた女性、Sさんによって開かれた場所す。
それから20年。現在、「親と子の談話室・とぽす」では絵手紙の教室、クリスマス会をなど色々な活動が行われています。精神の病を抱える人たちが集まったり、彼らの暮らしを支えるための活動が行われたりもしています。このように多彩な活動が行われていますが、「親と子の談話室・とぽす」はあくまでも喫茶店として運営され続けています。

「公園とか子どもの城という名前が付けられた場所には、子ども以外の人は入りにくいじゃない。でも、喫茶店なら誰だって気軽に入れるかなと思った。」

「私は専門家にはなりたくないんですよ。専門家とか、専門家じゃないとかに関係なく、ここに来ている人たちが自由に話し合えるような場所にしたい。喫茶店っていうのはそういう場所でしょ。」

喫茶店として運営されていることの背景には、Sさんのこのような思いがあります。


久し振りに「親と子の談話室・とぽす」を訪れてみて感じたのは、非常に静かな場所であること。隣の席に座っている人たちの話し声が聞こえてくるので、決して無音というわけではないのですが、肌で静かさを感じると言えばいいのでしょうか。静かな場所で、久し振りにゆっくりと本も読めました。

「親と子の談話室・とぽす」では空間のしつらえに次のような工夫がされています。

「お店に本を置いておけば、「ここはゆっくりと本を読んでいてもいい場所なんだよ」っていうことがお客さんにも伝わるじゃない。だから、本を置くことにしたんです。」

こうしたSさんの思いを受けて、店内には様々なジャンル、様々な年代のたくさんの本が置かれています。

「「親と子の談話室・とぽす」には色んな本や物が置かれてるけど、あるべきものが、あるべきところにある感じがする」。このような話をされるお客さんもいるとのこと。

「親と子の談話室・とぽす」が目指すのは、1人で訪れても居心地の悪い思いをすることなく、ゆっくりしてられるような場所。Sさんはこんなふうに話されています。

「お互いにそれぞれが自分のところに座ってて、誰からも見張られ感がなく、ゆっくりしてられる。だけど、「何か困ったことがあってね」って言った時には側にいてくれる。そういう空間って必要だなと思って。」

べったりでもなく、よそよそしくもなく…
「親と子の談話室・とぽす」は具体的な場を開き、このような関係を築いていこうとされているのかなと思います。べったりでもなく、よそよそしくもなくという中間的な関係が、地域での暮らしを豊かなものにしてくれるのではないかと思います。

*この日は、結局遅くまで長居してしまい、晩ご飯までご馳走になってしまいました(ありがとうございました)。

(更新:2018年10月25日)