「親と子の談話室・とぽす」から学んだこと

先日(2018年5月24日(木))、都営地下鉄新宿線・船堀駅前のタワーホール船堀で開催されていた「「とぽす」とその仲間展」(5月23〜5月26日まで開催)を訪問しました。江戸川区のコミュニティ・カフェ「親と子の談話室・とぽす」(以下、「とぽす」)が主催する展示会です。

「とぽす」はSさん夫妻により1987年に開かれたコミュニティ・カフェ(まちの居場所)で、15年ほど前に調査のために訪れたのがきっかけ。その後はお茶を飲みに行ったり、食事に行ったりと個人的にもお付き合いをさせていただいています。「とぽす」は気仙沼で支援活動をされている方との関わりもあり、Sさん夫妻は大船渡の「居場所ハウス」まで何度か足を伸ばしてくださったこともあります。

「とぽす」はオープン以来、個人経営のお店として運営されてきました。当初の目的は、校則が厳しかった時代の思春期の子どもたちに居場所を提供することでしたが、その後、不登校の子ども、心の病を抱える人、中高年の主婦など、多様な人々にとっての居場所となり続けてきました。

「とぽす」からは次のように様々なことを教えていただきました。

プライベートとパブリックは必ずしも対立するものではない
個人経営のお店が、パブリックな場所としての役割を担い得ること。

制度化される「前」の段階において、人々が求めるものを救いあげるという重要な役割がある
「とぽす」は、「○○○の人々」に居場所が必要だという意識が社会で広く共有される以前の段階において、そのような人々にとっての居場所を提供してきた場所である(フリースクールが普及する前の段階において、不登校の子どもたちにとっての居場所に、作業所などが普及する前の段階において、心の病を抱える人々にとっての居場所になるというようなかたちで)。

場所のビジョンが明確であることと、訪れた人への柔軟な対応は両立し得る
「とぽす」では、どのような場所にしたいかという当初のビジョンが明確にされているが、ビジョンが明確であるがゆえに(「渦巻き」の中心が明確であるがゆえに)、訪れた人に対してぶれずに、柔軟に対応することができる。その結果、運営を通して事後的に様々なものが生み出されてきた。

「ここは喫茶店なので人との出会いがその流れをつくっていっているんですよ。人との出会いがつくっていってるので、「ちょっと待って」とは絶対私は言えない。「そういう要求ならそれもやりましょうね」っていうかたちで、だんだん渦巻きが広くなっちゃうって言うかな。もちろん、中心は子どもっていうことは常に頭にあるんですけど。・・・・・・。だから人がここを動かしていって、変容させていって。しかも悪く変容させていくんじゃなくて、いいように変えていってくれてると思ってます」(Sさんの話)

赤の他人として孤立するのでも、プログラムへの参加でもない関わり方
訪れた人が赤の他人として孤立して過ごすのでもなく、また、みなが特定のプログラムに参加するのではなく、居合わせることが目指されている。

「例えば家族なんてそうでしょ。何かあった時に、「ヘルプ」って言った時にはぱっと飛び出せるっていうか。だけどもいつもいつも「大丈夫、大丈夫、大丈夫?」って聞いてたら、それこそあれよね。お互いにそれぞれが自分のところに座ってて、誰からも見張られ感がなく、ゆっくりしてられるっていう。だけども、「何か困った時があったよね」って言った時には側にいてくれるっていう、そういう空間って必要だなぁと思ってね」(Sさんの話)

孤立しないでいられる空間。だけど他人から介入されないで、安心していられる空間。そっちにぽつんと1人で座っていても、みんながいるから安心だ。だけど、こっちにいるみんなは自分を侵害しないよっていう場所。その条件がひとつでしたね」(Sさんの話)

物理的な配慮により、心地よく居られることをサポート
本を置いておけばゆったり過ごしてもらえる、訪れた人が好きな場所を選べるように様々なテーブルを置く、通りの桜を見渡せる大きな窓など、その場所に居られるための様々な配慮がなされている。

「喫茶店で自分の本開いて読んでる時、「いつまでこの人読んでるの?」なんて思われちゃうと嫌だなって思うじゃない。だけど、ここに本があれば、「ここの本を読んでもいいんだよ」って言えば、自分の本でも読んでいいのかなって思う発想になるじゃない」(Sさんの話)


「「とぽす」とその仲間展」には絵手紙、顔彩画、水彩画、アクリル画、写真、陶芸、立体作品など186の作品が出展。出展者は、画家でもある「とぽす」のSさん、「とぽす」で毎週水・木に開催されている絵手紙教室(講師はSさん)の参加者、Sさんが絵手紙を教えに行っている教室の参加者、「とぽす」で出会った人(中にはアーティストとして活動している人も)、そして、気仙沼の方など、「とぽす」に関わりのある人々。子どもから高齢者まで年代も多様。
この展示会からは、「とぽす」が30年近くの運営を築いてきた関係の広がり、多様さが伺えました。

  • 参考:「親と子の談話室・とぽす」については、『「まちの居場所」の継承にむけて』(一般財団法人長寿社会開発センター・国際長寿センター 2017年3月)の第3章もご覧ください。